二章 理不尽を越えて
第18話 新たなる出発。
蟹江静香が特殊個体である【デスマスク】に進化した事で、戦力における状況は一転し、探索の計画は一部変更となった。
それにより、チームは3つに分かれ、それぞれの受け持つ地域の徹底的な探索が始まろうとしている。優先すべきなのは生徒の確保で間違いないのだが、攻略の速度を上げるために必要な【拠点探し】を行うのも目標のひとつとして計画された。
【トピックス】――――――――
蟹型モンスター
――――――――――――――――
――熱帯雨林
「今回からは明確に方角と探索物を設定したので、それを目標に探索を続けて行こう。そういう訳でオペレーターよろしく」
『かしこまりました、以前の様な、【食べられる対象を探索する目的】から、【生徒及び拠点の発見】を目的としてナビゲートを開始致します』
あらかじめ生徒たちには数日帰らない事もあるかもしれないとは通達してある。特に蟹江静香の能力を考慮すれば、いちいち拠点へ帰還する事がタイムロスへと繋がる。時間が限られている中で、有効に探索するためには、日を跨いだ行動も必要になるのだ。
※ナビゲート方法が変更されました。探索で遭遇するイベントのテーブルが変化し、今までとは異なるイベントが発生する可能性があります。
探索判定【3】 動物の死体を発見した。
『
【2】【2】【2】
『知能が3増加しました』
「なんだか、上り幅が大きかったような……?」
『おそらくは判定においていい目が出たのでしょう。この世界ではこういった乱数の恩恵を得られることが稀にあります。ツイていましたね』
「必要経験値が3倍になった事を考慮すれば、捕食はかなり有用だね。最初に引けてなかったらと思うと凄く背筋が寒くなるよ」
探索判定【3】 巨大な虫の死体を発見した。
【1】【5】【3】
『
『幸運が2増加しました』
その後しばらく歩き続け、新たな敵と遭遇した。
巨大な蜂と巨大なゴキブリがタッグを組んでいる。
それらは蟹江静香を見るなり、攻撃を仕掛けて来た。
判定するまでもなく、蟹江静香の方が明らかに格上であり、素早い。
蟹江静香、ゴキ、蜂の順番で行動が開始される。
「デスマスクの初戦だ!」
達成判定【6】【4】 成功! 腐食判定成功!
巨大蜂に対し、かなりのダメージを負わせ、腐食の効果で、相手の毒針を破壊した。これにより巨大蜂は攻撃方法を制限される。
巨大蜂は針を失い、噛みつきでの攻撃に切り替える、噛みつき攻撃はどうあがいても蟹江静香の装甲を貫くことが出来ない。
巨大ゴキブリの攻撃。達成判定【マスク判定】【マスク判定】
またしても装甲は貫けない。最早、格付けは完了したのだが、相手が逃げないため、時間が掛かった。2体の巨大な虫を討伐が完了した!
――――――――戦闘終了。
報酬――――――――
経験値+1600
巨大蜂の毒針
粘液筋肉
――――――――入手。
その後、2体の虫を捕食。
【5】【6】【4】 【6】【2】【3】
頑強が4、筋力が2増加した。
〈状態〉 デスマスク 中型 LV1
〈称号〉 親喰らい
〈名前〉
HP 152/152
MP 64/64
筋力 59
頑強 60+2
素早さ 62
器用さ 46+4
知能 46
幸運 49
〈
〈攻撃系
〈基本系
器用さ+LV2
英祖の力
〈装備〉魔獣の鎧(防御力+10。水耐性)
〈呪い〉必要経験 3倍
――――――――――――――――
必要経験値3倍の壁は厚く、収得した経験は多かったが、レベルの上昇は行われなかった。この日はこの戦いで日が暮れ、行動は終了となる。拠点ではない為、安心して眠ることが出来ず、体力の回復は半分となる。
【トピックス】――――――――
拠点以外で夜を明かす場合、HPとMPの回復は半分となる。
――――――――――――――――
カニ生活17日目――――――――
順調に北へと進んだことで、熱帯草原へと到着した。これも、デスマスクに進化した事で、生物としてかなりの速度を叩き出したことが功を奏したと言えるだろう。
倒した敵を捕食しながら探索を行っている為、食料の心配をしないで済むうえ、蟹江静香自身が蟹のモンスターである為、人間に必要な、手間や文化的な習慣を省略可能であるという事が、時間の節約に大きく貢献居ている。
この地帯は吉野家早霧が降り立った地域である為、彼女が使用していた拠点の場所はオペレーションマップに表示されている。休憩の際には利用可能であろう。
「ぐっすり寝た訳でもないけど、人間だった時からは考えられないくらい体力の回復が早い。生物としてモンスターというのは、強過ぎる種族なのかもしれない」
『この周辺のマップ更新をしておきますので、ご自由に探索なさってください。このままさらに北に向かいますと、熱帯平原地帯となります』
探索判定【1】【3】
しばらく歩いたのち、熱帯草原において初めての死体を観測したが、全て食い尽くされた後であった。ほんの少し残った肉片と、骨だけが残されている。
『オペレーターのログによりますと、この地では、吉野家早霧さんの様な、肉食獣が多く生息している様ですね。彼ら肉食獣は舌の突起で肉をこそぎ取り、最後まで食べ切るのが特徴となっています。骨では取り込んだ所で捕食の対象には――』
「ふふ、ここで元人間を侮ってもらっちゃ困るぜ。人間の先駆けとも言われる猿人類は、獣たちが残した骨から、骨髄を餌として進化したと言われている。骨髄にはコラーゲンなどの成分が多様に含まれており、もちろん栄養価も高い。乾燥しきっていなければ、水分の獲得も可能!」
蟹江静香は、残されていた骨を切断し、内部に残された骨髄を吸い上げた。
『
『知能が1増加しました』
「ん? いつもの感覚と全然違うな?」
『骨髄に含まれた成分で知能を獲得した。という事は、猿人類の進化の流れを考慮した結果であると思われます。つまり、蟹江先生の知識が、この世界に新たな概念を齎したという事ですね』
「この世界、もしかして文明レベルが低い……?」
『その様ですね。まだ詳しくは判別しかねますが、構造物の様なものも見当たりませんし、この地域が特別保護地区などの特殊環境でもない限り、その可能性はあり得ます』
「とにかく、水分も確保できたし、探索を再開しよう」
探索判定【1】【4】 新たな敵に遭遇した!
巨大な狼型のモンスターが、蜂を引き連れ、2体の大ネズミと争いをしている。少し様子を見て、乱入し、4体とも倒す作戦となった。
イニシアティブ判定により、モンスター、ネズミA、ネズミB、蜂の順番で行動が開始される。
モンスターの鋭い爪攻撃により、ネズミAは致命的なダメージを受けるが、闘志をむき出しにして反撃が繰り出される。その際、ネズミ達が【連撃】を発動させた。
ネズミ達は疾風のように走り出し、モンスターの脚に対して同時に噛みつき攻撃を繰り出した。そのコンビネーションに呆気を取られたのか、防御が遅れてしまい、大ダメージを許してしまう事となる。
蜂の毒針攻撃はネズミBへと刺さったが、ねずみBは刺突によるダメージを受けたが毒に対して抵抗があった様子である。
このような攻防が繰り出され、3ターン目で蟹江静香の乱入が行われる。
乱入判定【1】【1】 大失敗!
物陰から勢いよく登場をした蟹江静香であったが、踏み込んだ脚は盛大に滑り、大転倒。変に注目を集めてしまったため、1ターン無条件で殴られてしまう。
「うおーっ! なんでこんなに運が悪いんだー!」
『運命の揺り返しって本当に恐ろしいですね……』
一通り殴られたが、デスマスクの装甲と魔獣の鎧の効果でダメージは受けなかった。再びイニシアティブ判定により、行動順が更新される。
蟹江静香、モンスター、ネズミA、ネズミB、蜂の順番で行動が開始される。
「ここは、まず、対象が殺される前に、私が横取りしよう」
達成判定【6】【5】 成功! 腐食判定失敗!
ネズミAを真っ二つに切断した。この時点で格付けは済んだが、この場では誰も引かない。その後は消化試合となり、4体は鋏の錆となった。
――――――――戦闘終了。
報酬――――――――
経験値+3200
餓狼の
モンスターの肉
巨大蜂の毒針
ネズミの尻尾
――――――――入手。
「……レベルアップしないなぁ……まだ足りないのか……?」
『その様ですね』
「レベルアップまでに必要な残り経験値って参照できないの?」
『どうやらマスク情報の様です。更に言えば特殊個体であるため、経験値テーブルが通常の進化と異なるのでしょうね。焦らず行きましょう』
「しかし、これで自分の強さが多数に対しても通用する事が分かったんだけど、こうなると全体攻撃がほしくなるよね」
『魔法なども習得していませんし、MPも遊ばせておくのは勿体ないですね』
「今の所【ガチャパワー】が16個か……。ガチャパワーで引けるランクアップガチャって、それ以上のガチャは存在しないの?」
『今の所、存在しませんね。神界機構に要望を出しておきましょうか?』
「そんなことできるの⁉」
『要望を伝える事は可能です。認めらるかは別ですけど』
「出しといて! なるべく運に左右されず、確実に強い恩恵がほしい!」
『それもう、ガチャでもなんでもないですけど……』
「課金要素もないのに、無作為で運任せなんて極力したくないのよ。というか普通に命が掛かってるんだから慎重になるよ……」
ふたりが会話を終える頃には、辺りがすっかりと暗くなり、蟹江静香は急いで今日の寝床を探し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます