第12話 進化。


能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 SSCソフトシェルクラブ中型 LV4

〈名前〉 蟹江静香かにえ しずか


HP  42/42

MP  30/30


筋力  14

頑強  14+2

素早さ 19

器用さ 10+4

知能  17

幸運  21


技能スキル〉 捕食 作成 製薬 念話

〈攻撃系技能スキル〉 千切る+1

〈基本系技能スキル〉 頑強+LV1 

        器用さ+LV2

〈装備〉草と獣の鎧+1(防御力+2)

――――――――――――――――



 カニ生活12日目――――――――


 本日は、木村明久が1日掛けて進化を行うので、全員拠点で作業を行っていた。


「そ、それでは、進化してきます。条件としては、安全地帯で行うというのがあるので、大木の洞の端っこで行いますね」


『進化に必要な時間は24時間となります。進化の最中は全ての行動が制限されますので、ご留意ください』


 こうして木村明久は、昆虫の全能系進化、【オールセクト】へと進化を始めた。口から糸を吐き出し、繭を構築していくその姿はまさしく――


「先生、こういうのは、虫の変態っていうんだよね」


「そうですね。システムの上では進化なんですが、この場合は変態。という事になりますね」


「キムラッキ! 変態、頑張ってね!」


「間違っていないのに、すごく語弊がある様に聞こえるのは、何故なんだろう……」


 女子中学生の黒ギャルに、変態と呼ばれる行為を応援される。文面だけでとても気が狂いそうな状況ではあるが、これは純粋な強化による過程である。


「さて、私たちは己の事をやりましょう。金森さんはヒールを取得したのよね?」


 蟹江静香は、時間を無駄にしない様、鎧補修の作業を行いながら話を進めた。




「うん。ヒールは個別回復で使う魔法で、相手と接触していないと使えないみたい」


「それでは、戦いのスタイルとして、私の陰に隠れ、常に回復を意識するという形になりますね。ヒールは何回使える計算になりますか?」


能力値ステータス開示!」


能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 白蛇 小型 LV2

〈名前〉 金森式奈かなもり しきな


HP  30/30

MP  16/16


筋力   9

頑強  11

素早さ  8+3

器用さ  8

知能   7

幸運   9


技能スキル〉  早足 念話

〈補助系技能スキル〉 ヒール

〈加護〉 白蛇様の寵愛

――――――――――――――――


「ヒールの消費はMP5。だから、3回だね」


「サンダーボルトと同じく3回か、この分だと、金森さんにも訓練をしてもらって、別の攻撃系技能スキルを覚えてもらう必要があるかもね……」


「先生、アタシ現状、【噛みつき】しかないんだけど、覚えるとしたら何がいいかな?」


「このゲーム、一方的に殴るのが圧倒的に強いから、拘束系がいいかな。金森さん白蛇だし、その性質から考えたら【締めつける】が最適かもしれないね」


「大丈夫かな? 巻きついたのは良いとしても、身体千切られたりとかしたら終わりじゃない?」


「そんな、そこまで力に差のある相手に、締めつけしろとは言えないよ。そうか、筋力とかも考慮しないとならないのか……。ヘビの攻撃って基本的に噛みつくと締めつけるだよね。後は何かな……」


「瀕死の相手なら、【丸呑み】とかじゃない? アタシ卵でやったよ」


「そんなに小さい相手、居るかな……。確かに小さい虫くらいなら、行けそうな見た目してるけど……」


「先生とキムラッキが痛めつけて、アタシが呑み込む! そうすれば、経験値もアタシに集中して、レベルアップも簡単に出来るかもよ?」


「平均化される経験値も、なんとかしないとならないんだよね……。ある程度レベルが上がって、戦いが安定すれば、個別でレベル上げをしたりして効率化を図れるんだけど……。まだ先は長そうだね……。他の生徒たちがどうなってるのかも心配だし」


「ウチらのクラス、なんだかんだで頭おかしいから、大丈夫だって!」


「確かに、【崩壊していないのがおかしいレベルのクラス】とは言われるけど……」


 会話をしながら、鎧の素材が着々と完成してきた。前回作った【モンスターの体毛糸】と【モンスターの剛毛】【狼の剛毛】を使用した。【豪剛毛の素材】が完成した。


【豪剛毛の素材】――説明。


 【モンスターの体毛糸】と【モンスターの剛毛】【狼の剛毛】を重ね合わせた素材。鎧や、その他防具に装着させる事で、最終防御力を+8高めてくれる。モンスターと狼の毛を交互に編み合わせる事で、弾力を生み出し、斬撃や打撃、刺突にも対応する立派な防具となる。体毛が、寒さに対する耐性と、撥水効果を持っているが、その分、火には弱く、炎上しやすい。


――――――――説明終了。


「これを、草と獣の鎧に組み合わせて、混合接着剤と、縄で固定すると――」


『【魔獣の鎧】が完成しました』


【魔獣の鎧】――説明。


 モンスターの毛を基礎とし、様々な獣の素材で作られた鎧。水と物理属性に強く、火に弱い。重ねて作られているので、とても重たい。1人で着脱するのは難しい。補正を加えて、最終防御力が10、上昇する。速度が2低下する。


――――――――説明終了。


「早速装備しよう。うお……重い。金森さん手伝ってもらっていい? 鎧を私の上に乗せるだけでいいから……」


「おけまる~!」




能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 SSCソフトシェルクラブ中型 LV4

〈名前〉 蟹江静香


HP  42/42

MP  30/30


筋力  14

頑強  14+2

素早さ 19-2

器用さ 10+4

知能  17

幸運  21


技能スキル〉 捕食 作成 製薬 念話

〈攻撃系技能スキル〉 千切る+1

〈基本系技能スキル〉 頑強+LV1 

        器用さ+LV2

〈装備〉魔獣の鎧(防御力+10。水耐性)

――――――――――――――――


「素早さを犠牲にしても、最終防御力26は大きいなぁ」


「先生、アタシも装備欲しいんだけど、なんかない?」


「ど、何処に何を装備するの……? つるつるすべすべだけど……」


「ん~……牙とか? ネイルみたいに強化したら強そうじゃん?」


「多分それだと、口が塞がらなくなると思うよ」


 美しい白蛇の身体には、何物も寄せ付けない力があった。滑らかなその身体に適した装備は、いかに蟹江静香であったとしても、想像できなかったのである。


「装備の有り無しってかなり影響でるんじゃないの? これって装備できない種族、めっちゃ不利だよねぇ⁉」


「確かに、手足がある種族ならその分だけ、装備箇所が増えるかも知れないけど」


「えっ⁉ 先生まだ装備する箇所あるの⁉」


「脚と腕なら何かしら装備できそうだよ」


「じゃあもうガッチガチに装備で固めたらいいんじゃね? モンスターがアタシの攻撃無効化した時みたいにさ、攻撃弾き返せるくらい強くしたら?」


「多分だけど、素材も不足するし、素早さも下がるからあまり付けるのも良くないと思うな。時間もかかるし」


「はぁ~! 戦う、作る、魔法とやる事多いよね~! もっと人数増えたら違うのかな~!」


「それにはやっぱり、探索をして生徒を確保するのが一番の近道だろうね。まだ時間があるみたいだから、私達だけで外に出て見る?」


「そうだね。時間を無駄にしたくないし、ついでにご飯も何か探そう! 卵があればいいなー!」


「蛇だから木登り出来るんだね。それなら探索範囲も広がるかも!」


 こうして、ふたりは探索に出掛ける事となる。






――熱帯雨林


【マスク判定】 雨が降っている。カニには大したことは無いが、蛇にはこの雨は辛そうである。


「あー! マジ最悪なんですけど! 変温動物だから体温下がりまくり!」


「金森さん。私の鎧の下に隠れてください。それくらいのスペースはある筈です」


「マジごめん先生! そうさせてもらうわ! 雨は無理!」


 金森式奈は、蟹江静香の体と、鎧の間に滑り込む。サイズ差があるからこそ、この芸当は可能である。


「アタシのサイズが小さくて助かったー。巻きつけば、なんとか濡れずに済みそう」


「動きが制限されたりとかがないから、特に素早さが下がるとかはなさそうだね。戦闘になったらどうしようか?」


「このままでもアタシはヒール使えるから、これで行こうよ。アタシは楽だし」


「確かに、雨に濡れてHPが減る事も考慮すれば、このままの方がいいか……」




 探索判定【1】【2】 新たな敵に遭遇した!


 なんとそこには、とても強そうな見た目のモンスターが現れた。見た目はジャガーとパンサーの間の子であり、すっかり濡れネズミ状態になっている。心なしか、とてもしょんぼりしているように見える。


 一定の知能に達していた蟹江静香は、直感で生徒だと見破った。


「あんな人間臭い仕草のパンサーなんていない。生徒だ!」


「じゃああれ、先生ひとりでやってね。濡れちゃうし」


「ま、またやるの……?」


 ドンドコドンドコ! ドンドコドンドコ!


『⁉』


 鎧を着込んだカニが突如として物陰から現れ、ドンドコ踊り始めた。パンサーはこの異様な状態に硬直してしまったが、こちらが距離を詰めることなく待っていると解かると、即座に駆け出してきた。


『オペレーションシステム、適応しました。随分と反応が悪いですね。クリアリングしておきましょう』


「蟹江ちゃん先生! だよねぇ! 良かったぁあ~!」


「この声は、吉野家早霧よしのやさぎりさんですね!」


「流石先生~! 一発であたしだと判るなんて! ひとりで寂しかったよ~!」


 びしょ濡れのパンサーはカニに擦り寄るが、水に耐性がある蟹江静香には大した問題ではない。


「先生、こんなところで話してもしゃーないし、拠点に戻ろ!」


「そうね。吉野家さん、話す事はたくさんあるけど、とりあえず雨風を凌げる場所に避難しましょう。私の拠点がありますので、そこへ」


「は、はぁい!」


帰還判定【マスク判定】――成功。



 大木の洞――


「おじゃましまーすっ! ブルブル!」


 洞へと入るなり、パンサーである吉野家早霧は、自分の濡れた身体を振り切り、水気を切った。その所為で、辺りは水浸しである。


「ギャー! 吉野家ぁ! 水飛ばさないでよぉ!」


「ご、ごめん! 金森さん! もうこれが癖になっちゃって……」


「もう12日目だからね、無理もないよ」


「ひとりで熱帯平原から出発したんだけど、ずっと寂しかったんだ!」


 パンサーである彼女にしてみれば、この空間はかなり手狭なものではあるが、まだまが余裕があった。


『おや、また生徒さんを見つけたのかい? 良かったねえ』


 妖精が出迎えてくれたので、改めて全員で情報を共有し、この日は終了した。






【ルール】――――――――


 デスペナルティの補足。30回目以降の死。発狂の許可。


――――――――――――――――





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