第11話 人の心。
カニ生活11日目――――――――
爽やかな朝を迎え、いの一番に行ったのは、モンスターの肉を食べる事であった。
「あのモンスターすごく強かったし、食べたらすごい
『それでは解析を行い、アイテムの詳細を調べます』
【モンスターの大肉】――説明。
捕食をする事で、モンスターの肉、2個分の効果が望める。
――――――――説明終了。
「やはり、【捕食】がないと、始まらないアイテムなのか……」
「こ、このゲーム【捕食】の特性強くないですか?」
『弱肉強食がテーマのデスゲームですので、食べる事に関する
「ずるいよー! アタシも【捕食】欲しい!」
「せ、先生を食べたら【捕食】貰えませんかねぇ……」
「怖いこと言わないでよ! カニバリズムだよ!」
「は? なんで先生がリズムとるの?」
「か、金森さん。【カニバリズム】とは、人間が人間の肉を食べる行動、あるいは習慣の事です。それに、先生を食べるというのはあくまで冗談ですよ」
「それこそウケる! 先生今、全然カニじゃん!」
「うぎぎ……! 思いやりと、人の心がないのか……!」
「ま、まぁ、金森さんですから……」
「アハハッ! いや~! それほどでも~!」
「褒めてない褒めてない!」
『
【3】【6】
『――器用さ+レベル2
「いや、それにしても、モンスターの肉は明らかに美味過ぎるだろ……。これを今後の生きる糧にして頑張れるレベルだわ……」
〈状態〉
〈名前〉 蟹江静香
HP 42/42
MP 30/30
筋力 14
頑強 14+2
素早さ 19
器用さ 10+4
知能 17
幸運 21
〈
〈攻撃系
〈基本系
器用さ+LV2
〈装備〉草と獣の鎧+1(防御力+2)
――――――――――――――――
「ごちゃっとしてきたな……」
『少しずつ改善していきましょう』
蟹江静香が解析等を行っている中、ふたりの生徒は、妖精の力を借り、魔法が使える様にならないかと、相談を行っていた。その結果として、敵を倒した際に得られる、【ガチャパワー】を利用して、対象者の習得している魔法や簡易なスキル等を覚える事が出来るという。
試しに、妖精から魔法を教わろうとすると、彼が使える実用性の高い魔法は――【マスク判定】 ヒール、サンダーボルト、スリープの3つである。彼はこれらを使いこなし、この猛獣蔓延る熱帯雨林を抜けて来たのだという。
【ヒール】――説明。
広く知れ渡る一般的回復魔法。回復はヒールに始まりヒールに終わると言われる。回復判定の達成基本値が10で2D6+(レベル数値)分回復する。達成基本値が5上がる毎に、判定ダイスの数が1ずつ追加される。(15なら3D6、20なら4D6の様に増えてゆく)成功基本値の計算式は(知能+2D6)で算出する。
【サンダーボルト】
雷属性を持つ一般的攻撃魔法。相手に向かって真っすぐ飛ぶ性質があり、隣接していると複数に被害が及ぶ場合もある。達成基本値は10で、2D6+3のダメージを与える。基本値が5上がる毎に、判定ダイスの数が1ずつ追加され、追加ダメージが+3される。状態異常判定に成功すると、相手を麻痺させる事も可能である。抵抗力の無いもの、属性の相性が悪いものはいい的になり、餌食になりやすい。
【スリープ】
相手を昏睡状態にする魔法。相手が怒り状態などにある場合は効果がない。一定の確率で眠らせられるが、攻撃をすれば当然起き上がる。達成基本値は15と高く、そもそも魔法に精通していなければ扱うのが難しい。悪用は厳禁である。活用法としては、相手の先手を取り、行動不能にしてから、囲んで殴るのが定石だろう。戦闘中に寝るようなヤツに、この世界を生きる資格はない。
――――――――説明終了。
「な、成る程。ガチャをすれば、ランダムで魔法や
金森式奈が、念話を通して妖精と交渉をすると、ガチャパワー2個で魔法1個と交換という話だった。教える際に消費する分と、妖精に対する報酬分として、合計2つというレートという話だ。
木村明久は、しばらく考えた後、【サンダーボルト】を交換した。この【ガチャパワー】は受け渡しの方法が、交換によるものしかない為、【蟹江静香のガチャパワーを使って、金森式奈に魔法を覚えさせる】という様なことは出来なかった。
ヒールも同時に習得するか悩んだが、妖精はしばらくここを拠点に生活するので、焦らず、後の魔法取得に関しては、保留という事になった。
※魔法を習得した事で、達成判定に修正が加わりました。これまでの
「私のガチャパワーは……今の所8個か……。オペレーター、10回まとめてガチャすれば、スーパーレア確定とか、そういう要素はある?」
『【神界機構】のガチャですので、当然ございます。スタートダッシュガチャとは異なる系統のガチャとなりますので、ノーマルガチャとなります。ガチャパワー1つにつき、1回挑戦する事が可能です。または、10回分をランクアップさせて1回スーパーレアを確定で手に入れるガチャもあります』
「ガチャのラインナップ見せて!」
『了解しました。神界機構ガチャシステム。展開』
最初期に行ったガチャとは異なる画面が、空中に映し出される。【ノーマルガチャ】と呼ばれるものは、魔法、
「もしランクアップガチャで、
溜め撃つか、小出しにパワーアップを図るか、悩ましい選択を迫られている。明確なハズレは無いかもしれないが、しかし、素材アイテムなどを引いてしまうと、すぐには活用できず、折角の貴重なチャンスが無駄になる可能性は高い。
「とりあえず、あと2個のパワーを手に入れてから、本格的に考えるとするか」
『それもよろしいでしょう。神界機構はいつでもお待ちしております』
「ん? まてよ、相手から魔法や
『残念ながら、神界機構のガチャで手に入れた
「じゃあ、明久君から【サンダーボルト】を教えてもらうのは可能?」
『それは、可能となります。しかし、まだ魔法のレベルが低い為、他人に教える事は出来ませんね。最低でも3回は使用して、熟練度を上げて頂かないとなりません』
「やはり、そう簡単に物事はうまくいかないか……」
『先生はどうもルールの穴を探そうとする癖がありますね。人間としてはとても逞しいとは思うのですが……』
「命を懸けたゲームだからね。そりゃあやれることはなんでもやるよ」
「せ、先生。折角手に入れたので、サンダーボルトの威力を試しておきたいです」
「そうだね。すぐに出ようか。今から探索すれば2回は戦えるでしょ」
「よっし! アタシのレベルもガンガン上げてね! 頼んだぞキムラッキ!」
「お、おまかせください! 金森さんは僕が育てます!」
「あはは! なんか言い方が、なんかエロじゃん! 光源氏かよ!」
「そ、そんなことは決して! ただ純粋な想いです!」
こうして、サンダーボルトの威力を確かめるため、3人は熱帯雨林の探索に向かうのであった。
【トピックス】――――――――
魂は、肉体の引力に引き寄せられる。
――――――――――――――――
――熱帯雨林
【マスク判定】曇っている。日当たりは悪いが、問題はない。
探索判定【2】【1】 新たな敵に遭遇した!
3体が三つ巴の状態になっている。小さくとも覇気の強いカエル、鋭い牙を持つ大きい狼、脚の筋肉が大きく発達した中型のバッタと、バラエティに富んでいた。
「はいはい、傍観傍観。3ターン後に攻めましょう」
自動判定――。
1ターン目――――――――
狼、バッタ、カエルの順に攻撃が展開されてゆく。まずは巨大な狼の攻撃であるが、虫を目の敵にしている様である。狼の噛みつきが繰り出される。バッタは一撃で半分近くのHPを削られた。
バッタの攻撃、ターゲットは巨大な犬。発達した筋肉から鋭い蹴りが放たれるが、分厚い毛皮に覆われた狼に、それほど大きなダメージは入っていない。
カエルの攻撃、大きな足で鋭いキックを繰り出す。そのお手本のような蹴りは、狼を怯ませるのには十分な威力を放っていた。
2ターン目――――――――
今度はカエルに対して、狼の噛み付きが繰り出される。カエルのHPがたった一撃で半分消し飛んでしまった。余りにも強力な噛みつきである。
バッタの攻撃、目的は狼である。バッタの攻撃は虚しく空を切る。
カエルの攻撃、続けてキック。先程よりもキレが鋭い。狼の身体を九の字に曲げた。これには狼もかなり応えた。既に足元は覚束ない。
3ターン目――――――――
狼の攻撃は、より弱っているカエルへと向かう。渾身の噛みつきが炸裂した。最早カエルは息も絶え絶えと言った様子である。
バッタの攻撃、ここでカエルを倒しても、次は自分であると本能で察したバッタは、狼へと攻撃を繰り出す。会心の一撃が繰り出されるも、元々のフィジカルに差がある為、ギリギリ踏みとどまることが出来た。
【乱入判定】 失敗! 先制攻撃ならず。イニシアティブ判定により再計算。
「なんで乱入と不意打ち毎回失敗するの‼」
4ターン目――――――――
イニシアティブ判定【マスク判定】
狼、蟹江静香、カエル、木村明久、バッタ、金森式奈の順になる。陣形的に、金森式奈は、蟹江静香の後ろに位置しているので、攻撃をする場合は移動を行わなければならない。
狼の攻撃、目の前に現れた目障りな蟹を攻撃した。鋭い牙が甲羅へと突き刺さる。
蟹江静香の攻撃、【4】【6】成功。ダメージ判定 【4】【5】【4】【5】
鈍く光る鋏の攻撃は、狼を半分に切断した。狼を討伐した。
続けて、カエルの攻撃。蟹江静香にかなりのダメージが入った。既にHPは3割になっている。
木村明久の攻撃、達成判定【2】【2】成功。
ダメージ判定【4】【5】【5】【6】 サンダーボルト発動!
直撃したバッタは消し炭となった。
金森明菜はその場で身をかまえている。
5ターン目――――――――
蟹江静香の攻撃、達成判定【4】【6】成功。
ダメージ判定【2】【1】【6】【6】 千切る炸裂!
カエルは真っ二つに切断され、絶命した。
――――――――戦闘終了。
報酬――――――――
経験値+各400
狼の剛毛
――――――――入手。
戦闘終了と同時にファンファーレが鳴り響く。
〈状態〉 白蛇 小型 LV2
〈名前〉 金森式奈
HP 30/30
MP 16/16
筋力 9
頑強 11
素早さ 8+3
器用さ 8
知能 7
幸運 9
〈
〈加護〉 白蛇様の寵愛
――――――――――――――――
「アタシ、なんもしてないけど、レベルアップ!」
「そして、私はもぐもぐタイム!」
消し飛んでしまったバッタ以外、狼とカエルを食べる。
『
【3】【6】【5】
『――器用さが6増加しました』
『
【3】【4】【4】
『――器用さが2増加しました』
「ここに来て確率の収束が来ている……」
〈状態〉
〈名前〉 蟹江静香
HP 15/42
MP 30/30
筋力 14
頑強 14+2
素早さ 19
器用さ 18+4
知能 17
幸運 21
〈
〈攻撃系
〈基本系
器用さ+LV2
〈装備〉草と獣の鎧+1(防御力+2)
――――――――――――――――
「先生って、不意打ちの判定を打ち消して、
「そんなことないと思う。毎回不意打ちは失敗するけど……」
「と、とにかく、サンダーボルトの威力も分かったし、先生のHPの減りも厳しいですから、一旦拠点に帰りましょう」
帰還判定【マスク判定】【マスク判定】 帰還成功。
【トピックス】――――――――
進化すると肉体の性質が大きく変化する場合がある。しかし、問題はない。何事にも慣れというものが存在する。
――――――――――――――――
――大木の洞
「あと1回行動分の回数が残っているから各自、時間を使って。私は鎧の修理と改造を行うわ」
「そ、それならば、僕も手伝います。僕の糸を使えば、接着剤の代わりにもなりますので、活用してください」
「それはありがたいわ。粘液も数が心許なかったから……」
「じゃあ、アタシは妖精ちゃんから、ヒール交換してもらってくるねー!」
「これで戦力面に関しては、安定し始めたと言ってもいいかもしれないわね……。これからはレベルを上げて、生徒の探索範囲を、広げて行けたらいいんだけど……」
「こ、今回の様に、相手が3体居て、乱闘に持ち込めれば、経験値を簡単に手に入れられそうではあるんですが、経験値が均等分配法である限り、レベルアップは難しくなるかもしれません。どこかで根本的な改善が必要になってきます」
「そうね……」
木村明久は、この手のゲームをやり込んでいたゲーマーであったため、このゲームにおける、効率よい攻略法が着々と確立していくのを感じていた。しかし、現状では3人以上で戦闘を行う事は、非常に効率が悪く、レベル上げの妨げになっていた。
「1人で、複数の相手をまとめて倒すのが、ベストなのですが、それを実現できる手段が今のところ魔法にしかないんですよね……」
「サンダーボルトの威力、おかしかったよね? 消し炭になってたし」
「えぇ、それでお知らせなんですが、僕のMPだと3回しか打てません。1回につき、MPを6も使います」
「うわ……滅茶苦茶に管理が大変なタイプのゲームじゃん……」
戦闘が1回で終わるのならば、それでもいいだろう。しかし、このゲームは連戦が基本である上に、現状MPを回復する手段がない。魔法がいかに強力であろうとも、回数が
「本格的に、知能特化型に進化しようかどうか、迷ってます……」
「オールマイティ系進化はどうなの? 見てみた?」
「えぇ、一緒に確認してもらえますか?」
『木村明久さんの、進化先を表示します。木村明久さんは、全ての
【尖り虫各種進化先候補】――説明。
一次進化【全体型】【攻撃型】【頑強型】【素早さ型】【器用さ型】【知能型】【幸運型】とそれぞれあります。個別の進化先に、その系統に属した
――――――――中略。
つまり、特化させるという事は、長所と短所を両方抱える事となるのです。運に身を任せたくない方の場合、手堅く【全体型】への進化をお勧めいたします。
――――――――説明終了。
「ギャンブルはしない
【全体型進化・虫系統】――説明。
【オールセクト】6本の脚が、器用な手のように自由に稼働する、中型の昆虫となる。これ以上は体のサイズが大きくならない。全ての状態異常に耐性があるのが魅力だが、一方で炎や寒さに弱い。装甲と神経発達が特殊なため、電気を受け付けない性質を持っている。毒は持っていないが、糸を使い、巣を制作する事が可能である。基本的には何でもできる存在である。万能であり、決して器用貧乏とは呼ばせない。
――――――――説明終了。
「サンダーボルトのMP問題もありますし、折角全ての
「そうね。それでいきましょう」
その後、木村明久が吐いた糸を、蟹江静香がモンスターの体毛に編み込み、頑丈な素材を作った。鎧補強の材料とする為である。
【モンスターの体毛糸】――説明。
モンスターの体毛と、特殊なタンパク質の糸で編み込んだ頑丈な素材。これを鎧の補強に使う事で、最終防御力が+2される。更に、同じ系統で上位の、モンスターの剛毛も合わせて使う事で、更に防御力を3上昇させる事が可能となる。しかし、撥水性が良い反面、やはり炎には弱いので注意が必要。
――――――――説明終了。
こうして、着々とパーティの強化は図られて行くのであった。
【ルール】――――――――
デスペナルティの補足。10回目以降の死。感情の一部欠落。
――――――――――――――――
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