第9話 金森式奈。
カニ生活9日目――――――――
〈状態〉
〈名前〉 蟹江静香
HP 36/36
MP 22/22
筋力 13
頑強 13+2
素早さ 15
器用さ 9
知能 13
幸運 12
〈
〈攻撃系
〈基本系
〈装備〉草と獣の鎧+1(防御力+2)
――――――――――――――――
蟹江静香は、妖精の情報を頼りに、生徒の探索に乗り出し、その結果、白蛇と姿を変えた女子生徒、【
ふたりはこれまでの流れと情報を交換し、整理し互いの認識を擦り合わせた。
『成る程ね。蟹江ちゃん先生は、私たち生徒を保護する事が、能力的に可能って事なんだね』
『方法は分からないけど、魂を回収する事が出来るって話らしいよ』
『って事は、アタシはもう隠居して、先生に助けて貰えばいいのかな?』
『いいえ、金森さん。このデスゲーム、行動できる仲間の数が多ければ多い程有利なの。行動回数にはそれぞれ制限があるし、戦いのも装備を揃えるのも、話をするのも時間が掛かり続ける。これはそれぞれの得意分野において役割分担を果たし、効率よくゲームを進めていく方が、早く元の世界に戻る事が可能だわ』
『先生、滅茶苦茶語るじゃん……! 確かに……。元の世界に戻れるなら協力した方が早いか……。戦って簡単に勝てる様な世界じゃないみたいだしねぇ』
『金森さんは、この数日間どうやって過ごしてきたの? 動物を食べたりした?』
『アタシは戦うの得意じゃないから、死体見つけたり、卵食べたりしてたよ。おかげで全然強くなれないの! もう笑うしかなくてさ!』
『スタートダッシュガチャはどうだった?』
『確か……
【マスク判定】
『
【早足】――説明。
一時的に素早さを3倍にする
――――――――説明終了。
〈状態〉 白蛇 小型
〈名前〉 金森式奈
HP 10/10
MP 2/2
筋力 1
頑強 1
素早さ 1+3
器用さ 1
知能 1
幸運 1
〈
〈加護〉 白蛇様の寵愛
――――――――――――――――
その
『しばらく念話で動物に嫌がらせしてたけど、それもMPの関係で続けられないし、レベルも上がらないし、オペレーターはヒントもくれないし、終わってるよね。速度なんて何にも役に立たない』
『確かに、こればかりは本当にどうしようもない状況かも……』
蟹江静香の場合、スタートダッシュガチャで
『だけど、よく生きていてくれた。本当に良かった。中学生で9日もサバイバル出来るなんて金森さんはすごいよ』
『先生、アタシこんな
『大丈夫よ金森さん。先生これでも強いですから、任せてください! オペレーター! パーティを組んた場合、経験値の配分はどうなる⁉』
『やってみない事には分かりかねます。未だ戦闘による経験が無いので未知数です』
『先生のオペレーター。割と喋るみたいだね……。アタシのオペレーターはちっともしゃべらなくて……』
『オペレーターシステムが、一部欠落している様ですね……。こ、これは……!』
『どうしたのオペレーター』
『金森さんに施された、魂の保護が強過ぎます……! おそらくは、 絆の楔による仕様なのでしょうが、彼女の魂を守る事だけに特化していて……。オペレーターに備わっている筈の、他のシステムが殆ど欠落しています。これでは、詳しいゲームの説明も覚束なかったことでしょう……』
『つまり、金森さんはオペレーターが壊れていて、このゲームのルールをよく理解しないまま、9日も続けていたという事か……。それは明らかに不利でしょ……』
『このままでは金森さんが不憫ですので、魂の保護をそのままに、私がおふたりのオペレーターとして、統括作業を行います。蟹江先生、彼女にシステム介入の同意をもらってください』
『金森さん、あなたのオペレーターを、私のと統括して、バージョンアップするから、許可して』
『はーい、許可しまーす』
『金森式奈の許可により、オペレーションシステムを統括、最適化を行います。これにより、おふたりは念話を使用しなくとも、システムを通して、普通に会話する事が可能となります。MPの節約になりますのでご活用ください』
「おっ! やったー! 流石オペレーションシステム!」
「はぁー! よかったぁ! 念話するの大変だったんだよねぇ! MP減りまくるし! これで先生と思いっきり話せるじゃん! もう最高じゃん!」
「これ以降も、生徒と合流出来たら、この処理をしよう。全員人外で会話が出来ないとか、全然話が進まないからね」
「先生、他の子たちも見つけたの?」
「それらしい子が居たんだけど、念話したら逃げ出しちゃって……。ものすごく大きくて、強そうな巨大モンスターで、ムキムキのイタチみたいな……」
「それアタシも見た! あのやべー奴! 強そうな動物をぎゃーっと倒して食べてた! めちゃめちゃ怖かった! あれ仲間なん⁉ 超頼もしいじゃん!」
「今の所目標としては、その子を仲間にして、何とか戦力を整えたいのと……。金森さんが1人で戦えるくらいまでレベルを上げたいかな……」
「ホントそれ! 戦わないと強くなれないとか、ゲームとしてどうなん⁉ 工夫とかやりようもないじゃんねぇ!」
「システム的に穴があるよねぇ……。サバイバルデスゲームだから、戦わないと何も始まらないんだろうけど……」
『それはやはり、このゲームが人間に地獄を見せる事を前提として、作られているからでしょうかね。魔人はかなり人間に憎しみを持ってる様ですから』
「えぇ⁉ オペレーターってこんな喋るん⁉ アタシのと全然違うじゃん!」
「絆と楔の関係もあるし……。でも、金森さんの変化した先が白蛇って、どういう事なんだろう。私の場合、【弱食の因果】っていう呪いを受けて、人生で一番食べるのがヘタクソだったのが、その、……カニだったらしく……」
「多分、ウチの神社が白蛇様を祀っているからじゃないかな。アタシ直系だし、一応巫女だかんね。 呪いとかは全然抵抗あるんだよね」
「あー! そう言われたらそうだった。家庭訪問した時驚いたもん。有名な神社でお祭りとか初詣とか行ってたし、金森さんの黒ギャル巫女さん、可愛かったもんねぇ」
「へへー! やっぱりぃ⁉ 気に入ってるんだよねー!」
『それならば、絆と楔が強くなるのも明白です。金森さんを守っている霊体が、世界を跨いで、今も彼女を守っている様ですね……。もしかしたら、死ぬ時の痛みや恐怖も和らいでいるかもしれません』
「確かに……。死んだときはちょっと痛かったけど、病む程でもなかったかな。ちょいちょいしんどいくらいで……」
「とりあえず、話はこれくらいにして、連携組んで獲物を狩ろう! 経験値さえ手に入れば、あとは装備とかでなんとかしよう」
「拠点はどうするの先生? ここに住む?」
「そうですね。しばらくはそうなるかもしれません。私の拠点に帰るにしても、1日は歩き通さないとならないし、その間に、金森さんが襲われる可能性も高いですからね」
「うへー! こんなHPで歩き回るのは嫌だよぉー!」
「ってなわけでレベルを上げましょう。とりあえず1回勝てばレベルが上がる筈!」
そして、ふたりは意気揚々と拠点の外に出た。
【トピックス】――――――――
魔人の目的は人間を苦しめることにある。
――――――――――――――――
――熱帯雨林
「先生、バカみたいに大きな鳥が出てきたら警戒して、アイツ、アタシをマジで殺しにかかってるからさ」
「OK! 任せといて!」
本日の天気は快晴。雲一つない空であるが、木々が生い茂っているこの環境では、然程意味を成さない。
探索判定【3】【4】 新たな敵に遭遇した!
【マスク判定】 相手は1体の様であり、種類や大きさを特定すると
【マスク判定】 小さくて強そうな虫が辺りを警戒していた。
【マスク判定】 しかし、相手はまだこちらに気付いていない。
「先生、不意打ちのチャンスですよ!」
一定の知能に達していた蟹江静香は、一筋の可能性を見出した。
「……なんかあの虫、警戒心が強過ぎない? もしかして生徒かも」
『念話で話しかけますか?』
「いや、ここは頭を使おう。こちらが知的生命体であると解かれば、向こうもこちらを人間であると認識するはず……」
「おぉ! 先生頭良い! それには何をしたらいいの⁉」
「くねくねダンスです。 しかもふたりでやれば、効果も倍増。こんなへんてこな踊りを自然界のカニとヘビがやる訳ないですから、絶対気付きますよ!」
「じゃあ! やってみよー!」
ドンドコドンドコ! ドンドコドンドコ!
『⁉』
蟹江静香は木の枝を叩き鳴らし、金森式奈はその場でくねくねと踊り出した。このふたりは発声器官を所有していないので、時折、奇抜な音が漏れる。
【マスク判定】 成功
このふたりが、知的生命体である事は明白であった。余程の間抜けでもない限り、見極める事は難しくない。小さな虫は、小刻みに震えながら接近し、それはやがて、オペレーター同士が接続出来る距離にまで近づいた。
『やはりあなたでしたか、オペレーターシステム093。互いの情報を統合し、意識を繋げます。しばらくお待ちください』
しばしの沈黙の後、小さな虫が言葉を放った。
「た、多分なんだけど、蟹江先生と金森さんだよね? 会えてよかった……ふふっ」
ふたりの余興が余程気に入ったのか、虫の彼は思い出し笑いをしている。
「あ、その口調は、【
「キムラッキじゃん! 良く生きてたねぇ!」
「こ、この手のゲームは得意なんだ。死に戻りもあるし、コツさえつかめばなんとかなるよ……」
「よかったぁ! 2人目だぁ! 明久君、私達と合流しよう!」
「の、望むところです。このゲームの攻略は人数の優位性。人手が多ければ多い程、ゲームクリアが見えてくることでしょう。ふふっ、それにしても……!」
「あー! 先生! コイツ、さっきの踊りこの事、笑ってますよ!」
「まぁ、笑うよね。 カニとヘビのチャカポコした踊りはさ……」
『このまま探索を続けますか?』
「金森さんのレベル上げという目的があるから、明久君の強さも見たいし、3人でこのまま探索をしよう。絶対に数の有利があるしね」
【トピックス】――――――――
神界機構の立ち位置は、光の巨人に近い。宇宙に秩序を齎す存在である。命の存在が余りにも大きい為、物事に直接手を付けることが出来ない。
――――――――――――――――
探索判定【4】【4】 腐敗した死体を発見した。それは時間が経過している所為か、ウジやハエがたかっている。
「敵には遭遇出来なかったけど、食べ物があって良かった」
「そ、そうですね。ウジ虫にはタンパク質が豊富に含まれていますから」
「もう9日もヘビやってるけど、今だ慣れないわぁ……」
「さぁ、食べよう」
食事にありついた。お腹がいっぱいになった。
『
【2】【2】【1】
『――知能が1増加しました』
「よし、上がるだけマシだ」
「せ、先生! その
「そうだよ、スタートダッシュガチャの恩恵」
「ぼ、僕もあのラインナップを見た時、欲しいと思っていたんです。なにせ、そのスキルは成長限界が訪れるまで、食べるだけで
「そういう明久くんは、何を貰ったの?」
「ス、
「ちょ! 世の中不公平過ぎるんですけどぉ!」
「まぁ、まぁ、とりあえず、大岩の拠点に戻ろう。ここは危ないからね」
帰還判定【マスク判定】――成功。
【トピックス】――――――――
本来、人間の脳や記憶領域に対し、他の動物の脳は小さい。故に機能しないものと思われがちだが、この世界においては絆の楔がそれを可能としている。クラウドと無線通信を用いた技術にとても近い。
――――――――――――――――
――大岩の洞穴
「こ、これが僕の
〈状態〉 尖り虫 小型 LV2
〈名前〉 木村明久
HP 24/24
MP 12/12
筋力 14
頑強 14
素早さ 14
器用さ 15
知能 16
幸運 14
〈
〈攻撃系
――――――――――――――――
「すごいね明久君……。これなら序盤の勢いに乗れば、相当強いはず」
「じょ、序盤は頼もしいですけど、このパターンだと後半が辛くなるのが目に見えていたので、僕は今後、補助をメインに能力を伸ばそうと思います」
「というと?」
「す、既に僕の進化候補には、器用系と知能系の2種類があります。この先、生産職が必要そうなら器用系、魔法が覚えられるなら知能特化系に進化します」
「成る程、この世界で装備と魔法は大きなアドバンテージになる。そういう事だね」
「さ、流石は蟹江先生。よくこのゲームを理解していらっしゃる!」
「つまり、キムラッキはこれだけ強いのに裏方に回るって事なの? 勿体なくない?」
「い、いえ、僕は所詮スタートダッシュガチャで満遍なく強くなっただけの存在。敵に突っ込むだけの勇気はありません。戦略を立てて戦う方が性に合っているのです」
「そんなもんなのかなぁ……。アタシはなんにもできないから分からないけど」
「よ、よろしければ、
「……見て笑わないでよね?」
〈状態〉 白蛇 小型
〈名前〉 金森式奈
HP 10/10
MP 2/2
筋力 1
頑強 1
素早さ 1+3
器用さ 1
知能 1
幸運 1
〈
〈加護〉 白蛇様の寵愛
――――――――――――――――
「こ、これは……序盤の坂を越えられない
「なんでキムラッキが泣きそうになってんの⁉ 泣きたいのはアタシなんですけどぉ⁉」
「し、しかし、スタートダッシュガチャで手に入れたこの【早足】は、後半になればなる程化ける、すごい
「そうね。私と明久君がサポートして、金森さんを特化のアタッカーにすれば、コンビネーションが完成する。そうなれば、戦闘も有利に働くと思うわ」
「先生がそういうなら、頑張ってみるけどさぁ……」
「今日はこれくらいにして、明日は私の拠点に向かいましょう。妖精から攻撃や補助の魔法について聞けることがあるかもしれない」
「よ、妖精ですか⁉ いよいよもって、ファンタジーゲームの様な世界観ですね」
「じゃあ、アタシは、インベントリになるべくアイテム入れて準備するね」
「私も手伝います。アイテム生成に使えるものがあるかもしれませんし」
こうして合流した3人は、明日、大木の洞を目指す事になった。
〈状態〉
〈名前〉 蟹江静香
HP 36/36
MP 22/22
筋力 13
頑強 13+2
素早さ 15
器用さ 9
知能 14
幸運 12
〈
〈攻撃系
〈基本系
〈装備〉草と獣の鎧+1(防御力+2)
――――――――――――――――
【ルール】――――――――
デスペナルティの補足。2回目以降の死。恐怖の誘発、幻覚、または発作の発生。
――――――――――――――――
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