第6話 招かれる客。

 カニ生活7日目――――――――



能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 SSCソフトシェルクラブ小型 LV2

〈名前〉 蟹江静香


HP  30/30

MP  14/14


筋力  11

頑強   7

素早さ 10

器用さ  7

知能  11

幸運   9


技能スキル〉 捕食 作成 製薬

〈攻撃系技能スキル〉 千切る

〈装備〉草と獣の鎧+1(防御力+2)

――――――――――――――――


 蟹江静香は、改良を加えた草と獣の鎧の具合を確かめる為、探索へと出かけた。


――熱帯雨林


【マスク判定】曇っている。


 探索判定【4】【1】 新たな敵に遭遇した!


 新たな敵を発見したが、いつもとは様子が違うようだ。


【マスク判定】【マスク判定】【マスク判定】


 小さい虫と、強そうな大きい鳥が対峙している。実力差があり過ぎて、これはもう食事の様なものだ。この状況を見て、蟹江静香は傍観を決めこんだ。


『漁夫の利を狙うのが妥当と言えるでしょう』


「その通り。あの虫が何をできるかは分からないけど、多少ダメージでも与えてくれたら、楽できるかもしれない。頑張れ虫……! 余りにも強い様なら逃げよう」


 イニシアティブ判定【マスク判定】【マスク判定】


 巨大な鳥の先制攻撃。成功判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


 ダメージ判定【マスク判定】【マスク判定】


 かなりのダメージが小さな虫に与えられた。


 小さな虫の攻撃。成功判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


 ダメージ判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


 なんと、小さな虫が巨大な鳥に対して、驚異的なダメージを与えた。まるで奇跡でも見ているかの様である。その華麗な体当たりは、鳥の急所目掛けて一直線。


 巨大な鳥の攻撃。成功判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


 ダメージ判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


 小さな虫は倒された。


「今こそ好機!」


不意打ち判定【マスク判定】失敗。


 蟹江静香は絶好のチャンスを逃してしまった。戦いの最中に乱入が行われたので、素早さによる先行の取り合いが起こる。


 イニシアティブ判定【マスク判定】【マスク判定】失敗。


素早さ勝負は巨大な鳥に軍配が上がった。


 巨大な鳥の先制攻撃。成功判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


「HPで受ける!」


 ダメージ判定【マスク判定】【マスク判定】


嘴攻撃。蟹江静香の体力が半分近く削られた。


「草と獣の鎧を強化してもこのダメージとか頭おかしいだろ!」


 蟹江静香の攻撃。成功判定【1】【2】成功。


「あぶねー!ここで大失敗したら終わりだよ‼」


 ダメージ判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


敵の回避なし!【ダメージ判定】【2】【5】

【部位破壊判定】【マスク判定】失敗。追加ダメージなし。


部位破壊は不発に終わったが、カニの鋏が万力の様な力で、巨大な鳥を捻り上げた。この攻撃によって、鳥は地に落ちた。致命的な一撃を受け、もうその翼は、羽ばたくことは無いだろう。巨大な鳥を討伐した!


――――――――戦闘終了。


「いやったああああああ! 勝てたぁあああああ!」


『マジレスするんですけど、あの虫が大ダメージ与えてなかったら、普通に負けてましたね。一番驚いているのは運命の神ですよ(殺す気でイベント用意してた)』


「本当にそのとおりだから文句も言えねぇ! 虫さんマジで感謝!」


報酬―――――――― 

 経験値+200

 大きな鳥の羽

――――――――入手。


『残念ながら、今回はレベルアップしませんでしたね』


「まぁ、仕方ないね。したばかりだし、強敵だったから個人的にはレベルアップしたかったけど、贅沢は言うまい。それよりも捕食タイムじゃーい! まずは虫さんから、いただきまーす!」


技能スキル捕食の効果により、虫の肉を摂取。蟹江静香の――』


【5】【6】【4】


『――頑強が4増加しました』


「初めて3以上増加した! やった! 続けて鳥さん! いただきまーす!」


技能スキル捕食の効果により、巨大な鳥の肉を摂取。蟹江静香の――』


【3】【1】【4】


『――適合しませんでした』


「なんでじゃああああああああ! めちゃくちゃ強そうな敵食べてんのに! なんでじゃあああああ!」


『気持ちはお察しします。戦闘後の高揚感に対して、この仕打ち。私もかなりショックです』


「うおおお……。一気に辛くなってきた、早く帰って蜂蜜舐めたい……」



 帰還判定【マスク判定】――成功。





 大木の洞――


「今回は探索を1回で切り上げたから、まだ時間的に余裕があるぞ」


能力値ステータスを確認しておきましょう』




能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 SSCソフトシェルクラブ小型 LV2

〈名前〉 蟹江静香


HP  16/30

MP  14/14


筋力  11

頑強  11 

素早さ 10

器用さ  7

知能  11

幸運   9


技能スキル〉 捕食 作成 製薬

〈攻撃系技能スキル〉 千切る

〈装備〉草と獣の鎧+1(防御力+2)

――――――――――――――――


「ちょっと待って、あの一撃で14も喰らってるの⁉」


『本当に強敵でした。虫の助けがなかったらと思うと』


「なんであんなに強いんだよ……。勘弁してくれよ。如何に技能スキル【千切る】が強力でも、あんなのに毎回狙われたらいつか死んじゃうよ……」


『蟹江さん、蜂蜜舐めましょう。気分も上がるでしょうから』


「ちゅるちゅる……。残り時間は特訓に費やそうかな……。技能スキルが増えて圧迫する様なら、【千切る】を強化出来ないかな……」


『練習用の人形がまだ使えますので、訓練にどうぞ』


「うぉおおぉ! デスクローになれ! デスクローになれ!」


『その、デスクローってなんですか?』


「相手のHPを一桁にして、麻痺させる技」


『それは流石に……』


 蟹江静香は、技能スキル【千切る】が強化できないか訓練を始めた。


 攻撃技能スキル訓練判定【2】【4】 そこそこの訓練が出来た。


技能スキル【千切る】の威力が固定値で+1追加された。


「これはどういう計算になるの? そもそも2D6もスルーしてたけど」


『【千切る】のダメージが、基本ダメージ+【2D6+1】になりましたね。つまりこれは、筋力+【6面ダイスを2個振った時の値】と固定値1の総数が相手に与えるダメージになる。ということですね』


「そうか、テレビゲームだと自動処理されてるから分からなかったけど、これで乱数を出していくんだ」


『この世界のルールが、ゲームに則って作られていますからね。この固定値を強くしていけば、運の要素を極力なくすことが出来ます』


「固定の攻撃力欲しい~! 毎回ドキドキしながら攻撃するのやだ~!」


『気持ちは分かるんですけど、それだと閲覧の神々も盛り上がりに欠けると……』


「どうせ私の生き死になんて誰も見てないでしょ」


『まぁ、閲覧も増えていませんし、恩恵も未だ1件ですからね』


「うぉー! 閲覧の神々! 私を助けてくれー!」




 蟹江静香が嘆いていると、大木の洞に思わぬ来訪者が現れる。


『わぁ、こんなところにカニさんが住んでる! ちょっとおじゃまするね~』


 見知らぬ小さな存在が、大木の洞にやってきた。その佇まいは、存在が危うく、半分透けているように見える。


『ふむ、どうやら妖精の様ですね。会話が出来るみたいです』


「妖精のいる世界観なんだ……。勝手に住み着かれたら困るんですけど……」


 蟹江静香の様子を察したのか、妖精は彼女に近づいて来た。


『なぁに、別にタダで場所を貸してくれとは言わないさ。今しがた、とても大きな生物に追われていてね。それが諦めるまで置いてほしいんだ。僕に出来る礼ならなんでもするよ? って言ってもカニ相手には通じないか! あはは!』


「妖精って魔法つかえる?」


『うわっ……! このカニ、人間の魂が入ってる……!』


「うわっとか言うなよ、傷つくだろ私の中の乙女が」


『言語形態が合わないみたいだね。念話を教えてあげるよ』


「やったぜ!」


 蟹江静香は技能スキル【念話】を手に入れた。


 【念話】――説明。


 対象者の脳内に直接言葉を送り込む魔法の一種。言語形態が合わなくても意思疎通が可能となる。両者が使えると、互いの負担が減るが、習得していない者に対して、一方的に送り付けると、相手の脳に負荷が掛かる為、推奨されない。話している間はMPを消費する。


――――――――説明終わり。


『念話ってこんな感じでいいのかな?』


『おぉ~! すぐに使いこなしてる! 頭いいカニだなぁ』


『お察しの通り、人間の魂と記憶を持っているので』


『へぇ~! 最近は動物に人間の魂と記憶を入れるのが流行ってるのかな』


『全然流行ってないよ。魔人に呪いを掛けられたんだ』


『じゃあ、この前見た蛇みたいな子も呪いだったのかなぁ』


『会ったの⁉ 魂が人間の動物に⁉ 私の大事な生徒かもしれない! 場所を教えて! 保護しないと!』


『じゃあ、僕をしばらくここにおいておくれよ』


『いいよ! 空いてるスペースを使って! で、その蛇の場所は⁉』


『ここから東にある大岩の陰に住んでたよ。そこでしばらく厄介になってたんだ。その子にも念話を教えてあげたんだよね』


『そうなの⁉ ありがとう! よかったー! まだ1人も見つかってなかったんだよ! よかった! 本当によかった!』


『なんか話しやすい子だったなぁ。あっ、この蜂蜜の隣に失礼するね。ちょっと食べてもいい?』


『たくさんあるからいいよ。食い尽くさない程度にね』


『わーい! これで妖精の薬が作れるぞー!』


 その後、蟹江静香は妖精との交流を重ねた。情報の交換を行い、妖精がかなり有用な相手であった。彼は魔法を使いこなし、薬学にも精通していた。蟹江静香は妖精を言葉巧みに勧誘し、しばらくの間、大木の洞を拠点に活動する事になった。

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