第6話 絆と楔。
カニ生活6日目――――――――
〈状態〉
〈名前〉 蟹江静香
HP 30/30
MP 14/14
筋力 11
頑強 7
素早さ 10
器用さ 7
知能 9
幸運 7
〈
〈攻撃系
〈装備〉草と獣の鎧(防御力+1)
――――――――――――――――
「うぉおん! 喜びがなーい!」
『ついに精神も限界に来ていましたか』
「デスゲームに参加させられて、無事にいられる訳もなく――」
『では本日は、喜びを探しに行きましょう。ここ最近の探索の甲斐もあって、この周辺で食べられそうな果実などを発見していたのです』
「よし、行こう! 危険も顧みず、喜びを探しに行こう!」
『この弱肉強食デスゲームは、呼び寄せた命に地獄の苦しみを与えることを前提に、構成されているので、この呪いが有効であるうちは、自暴自棄を起こしたり出来ないんです。しっかりと感情をコントロールして、このゲームを勝ちましょう』
「大人である私ですらこんな状況では、生徒たちは本当に無事なのか心配になる」
【トピックス】――――――――
戦って勝つと、相手の持っている道具や、体の一部をアイテムとして獲得することが出来る。それは、素材になったりと様々な用途がある。手に入れたアイテムなどは、【インベントリ】という収納空間に補完される。
――――――――――――――――
熱帯雨林――
【マスク判定】 天候はあいにくの雨である。足元は頼りないが、雨音が気配を消してくれる為、一概に不幸とは言えない。
探索判定【2】【6】
予定通り、天の声が狙いを付けていた地点に到着した。周辺にはベリーが自生しており、とても甘酸っぱい香りがする。
採取判定【2】【6】 美味しそうな木苺が見つかった。
「早速食べよう。むしゃり」
『
【1】【5】【3】
『――幸運が2増加しました』
「もう1個食べたい」
【自動収得】 【マスク判定】成功。
『
【2】【2】【3】
『――知能が2増加しました。木苺による上昇が限界値になりました』
「2回以上はダメなのか……」
『次の地点に移動しましょう』
「はい」
探索判定【6】【4】 滞りなく、目的地へと到着した。
「これは何だい、オペレーターちゃん」
『これは地面に作られた蜜蜂の巣です。これなら木に昇る必要が無いので、あなたでも手に入れることが可能かと……』
「現在の装甲で、蜂の攻撃を無効化出来るなら突っ込めばいいけど、そうじゃないなら死にに行く様なものではなかろうか?」
『レベルも上がりましたし、試しに、攻撃してみては?』
「おし! 挑戦だ! 全ては喜びの為に!」
疲弊しきっていた蟹江静香は、多少やけくそ気味に、意気揚々と蜜蜂の巣へと向かうと、大量の蜂が攻撃を仕掛けて来た。しかし、生物的に何倍も強いカニは、ぽこぽこ接触するだけで蜜蜂を撃退した。
「これではまるで無敵状態みたいだ」
『対峙する相手と、圧倒的に戦闘力の差がある場合、こうなるのです。これを【短縮戦闘】と呼びます』
【短縮戦闘】――説明。
こちらの戦力が圧倒的に高い際、戦闘が省略されるシステム。レベル差がある為、経験値やアイテムなどは手に入らない事が多い。
――――――――説明終了。
そのうち、全ての蜂が地に落ち、【大きな蜜蜂の巣】を入手した。
『
【6】【1】【2】
『――食材が身体に適合しませんでした』
「適合しない事もあるの⁉」
『その様ですね。この蜂蜜と巣は、作成に使用するなりしましょう』
蜂蜜はとても美味しかったが、
『インベントリがいっぱいの様ですので、今日はこの辺で帰還しましょう』
「そうね。空いた時間で作成もしたいし、案内して頂戴」
帰還判定【マスク判定】――成功。
【トピックス】――――――――
――――――――――――――――
大木の洞――
大きな蜜蜂の巣を持ち帰った為、洞の内部は圧迫されたいた。
「しばらく食べ物に困らないのが嬉しい。腐らないというのも最高」
『今日は息抜き出来ましたかね?』
「そうね。珍しく敵にも遭遇しなかったし、感謝してるわ」
『よかったです。では、この蜜蜂の巣を使用して、作成でも行いましょう』
「何かアイディアは……無いわね。閲覧の神々も、何も反応がないみたいだし……。そうね、蜂蜜には抗菌作用と解毒効果があるって話だし、何か状態異常回復になる様なものを作りましょうか」
『それが良いでしょう。今後、毒を使用する敵も現れるやもしれませんし』
蜂蜜、苔、水を適量使用し、薬の調合を試みるが、まず下準備として、乳鉢を作成した。石同士を丁寧に削り合わせ、形成してゆく……。
作成判定【5】【6】 かなりの出来である。
【乳鉢と乳棒】――説明。
基本的な薬品作りの道具。材料を合わせて混ぜ合わせるだけの簡単な薬が作れる。思ったほどの効果は期待できない。材料には限りがあるので、心して取り組もう。
――――――――説明終了。
「よし、完成! したのはいいけど、薬の開発は明日以降になりそうね」
『道具の作成にかなりの時間を費やしましたからね。
カニ生活7日目――――――――
この日は前日に引き続き、回復薬及び解毒薬の調合に取り掛かっていた。
作成判定【2】【3】 粗末な出来である。
開花判定【マスク判定】【マスク判定】
『【粗末な回復薬】が完成しました』
【粗末な回復薬】――説明。
清潔な苔と蜂蜜で生成した、その名の通り粗末な回復薬。HPを5回復し、内臓機能を高め、弱い毒の効果を打ち消してくれる。強い毒には効果がない。
――――――――説明終了。
『どうやら今の作成で、項目内に【製薬】が追加されましたね。おめでとうございます。これで、アイテムを口にした際、薬に活用できるかの判断が可能となります』
「おぉ、これは便利。
『いえ、本来はこの様な事はありません。しかし、蟹江さんは人間の記憶を保有した状態で、カニの身体に生まれ変わっています。いわゆる、知識チート状態ですね。なので、
「
『今の所、上限があるという情報はありません。魔人が作り出した世界なので一概には言えないのですが、世界にもテンプレートと言うものがありまして……。機会があればそれも解説致します』
「適当にぽんぽこ取ったら欄が圧迫されて、肝心な
〈状態〉
〈名前〉 蟹江静香
HP 30/30
MP 14/14
筋力 11
頑強 7
素早さ 10
器用さ 7
知能 11
幸運 9
〈
〈攻撃系
〈装備〉草と獣の鎧(防御力+1)
――――――――――――――――
「確かに製薬が追加されてる……。なんだか
『そうですね。UIの仕様が変更できるか、考えておきましょう』
「今のうちに【草と獣の鎧】も【芋虫の粘液】で強化しておきたいな」
『いいですね。最終防御力の強化は、戦闘に大きなアドバンテージを生むでしょう』
「均等に液体を塗る……となれば、刷毛が必要だ。こんな鋏じゃあ、話にならないだろうし……。そうだ、使い道の無かった、鳥の羽を加工しよう。材料は草の縄と、削った木材。接着剤に芋虫の粘液と蜂蜜、水を混ぜたものを使おう」
作成判定【4】【5】 なかなかの出来である。
『【刷毛】が完成しました』
【刷毛】――説明。
塗料を均一に塗る為の道具。装備の加工などで使用する。
――――――――説明終了。
「作成するだけで、すぐに時間が無くなってしまうね……。これは後々の戦いに影響してきたりとかしそうでこわいよ。この世界がゲームという話なら、尚更」
『生存率を優先するか、レベル上げを優先するか、計画性が問われますね』
「以前、死ぬ戻りによるデスペナルティについて話をしたけど、部位の欠損以外にデメリットはあったりするの?」
『主に【精神の摩耗】でしょうか。生物は本来、何回も死んだりしないのが普通ですよね? それなのに、生き返ってしまう。そうなると、命の仕組みに対する矛盾が起こり、脳に負荷がかかって、心を病んでしまったりする可能性は大いにあります。この際、自暴自棄にはならないのですが、それでも精神に負傷は残ります。何回で精神に限界が来るのか、それは個人差があるので一概には言えません。蟹江さんの場合、【絆の楔】となってくれた人物が、かなり力のある存在なので、殆どノーダメージで済んでいます。奇跡ですね』
「【絆の楔】は生徒全員にもあるんでしょう? 私が特別なら、それにも個人差があるの?」
『魂を世界に縛る【絆の楔】の力は、その人に関係する霊体に影響を受けます。背後霊や先祖の霊などですね。霊体の位が高ければ高い程、対象者の魂は保護されます。蟹江さんの場合、笑っちゃうくらい強い英霊に保護されているので、多少死んだところで、精神自体は無事で居られるでしょう』
「英霊ね……ウチのご先祖に、そんな霊験あらたかな存在居たかな……? いや、いくら魂が保護されて、精神が無事って言ってもさ、あの噛み砕かれて、踏みつぶされて死ぬ痛みはもう味わいたくないよ。無理だって。痛すぎるもん」
『魂と精神が無事なら、いわゆる【ゾンビアタック】でレベル上げ放題とか、やると思っていました』
「人間の心はそんなに強くないよ。天の声システムってのは、人の心が無いのか」
『そこにないならないですね』
「なんでユーモアの心だけはあるんだよ」
作成判定【4】【6】 改心の出来である。
『【草と獣の鎧】に、芋虫の混合液を塗装しました。これにより、最終防御力が上昇し、水と熱に耐性を付与されました』
【草と獣の鎧+1】――説明。
混合液を塗装した草と獣の鎧。特殊な虫のタンパク質と蜂蜜の成分が混ざり、硬化処理が施されている。装備する事で、最終防御力が+2上昇する。雨などの水に強く、熱にも多少の耐性が備わっているが、炎などには弱いので注意が必要となる。
――――――――説明終了。
「これで生存率が上がれば儲けものなんだけど、こう見たら結構カッコいいかもしれない……。これは延々とバージョンアップを重ねてしまうかも……!」
『蟹江さんは生前から何かのゲームを?』
「生前言うな! そうね、学生時代は乙女ゲーのRPGをやり込んだり、大人になってからは空いた、時間でソシャゲとかしてたけど、それくらいかなぁ」
『そうなのですね。私達オペレーションシステムは、ゲームを知識として知っているだけで、プレイ自体はしたことがなく、それ故に、経験で物を語る事が出来ないのです。なので、画期的なアイディアを導き出したりすることが出来ません』
「なんか、以前もそれらしいこと言ってたな」
『なので、蟹江さんの冒険を実際この目で見て経験を積み、見事ゲームクリアまで導けるように、戦いの中で成長したいと思います』
「ホント、なんでユーモアのセンスと語彙だけ詰め込んでるんだ、このシステム」
【ルール】――――――――
外部からの干渉を禁止する。これが破られた場合、処置が施される。
――――――――――――――――
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