第4話 閲覧の神々。

 カニ生活4日目――――――――


 閲覧の神々による恩恵で、蟹江静香に

【判定分】の能力値ステータス強化が齎された。


【マスク判定】 筋力+2


能力値ステータス――――――――――

〈状態〉SSCソフトシェルクラブ小型 LV1

〈名前〉 蟹江静香


HP  24/24

MP   7/7


筋力  9

頑強  3

素早さ 6

器用さ 4

知能  8

幸運  5


技能スキル〉 捕食


――――――――――――――――


「つまり私は30人の生徒の魂を回収して、宝玉を起動させれば、現世に帰ることが出来るという事ね?」


『そうなりますね。てっきり、召喚される際に気付いていたものだと思っていました。給食中の教室内であの騒ぎが起きた訳ですから……』


「全員【絆の楔】によって魂を縛られているから、死んで魂が消失したりする事はないのね?」


『そうなりますね。彼らも同じ様に死に戻る事で、安全地帯を手に入れている筈ですので、生き残っている事と思われます』


「こんなクソゲーで生き残れる生徒たちが居るとは、とても思えないけど、現代の子供たちの方がゲーム慣れてたりするんだろうか……」


『どうでしょうね。一応全員にオペレーターが付いているので、早々死ぬことは無いとは思いますけど、一昔前のバランス無視した作品よりは、この世界はマシだと思えるので、かなり気合が入っている生徒さんなら、もう無双しているかもしれませんよ?』


「私が生徒と遭遇した場合、判別可能なの?」


『問題ありません。オペレーター同士で気付く筈です』


「じゃあもう、遭遇した時に考えればいいか。今は自分がどう生き残るか考えないと始まらないし……」


 蟹江静香は、手持ちのアイテムを利用して、装備が作れないかと模索していた。現在手元にあるのは【鳥の羽】と【獣のたてがみ】である。両方の鋏が戻った事で、ある程度の作業も可能となり、【作成】が可能となっていた。


『何度か作成を行えば、技能スキルとして覚醒するかもしれません。材料を消費する際は、お気を付けください』


「じゃあ、その辺にあるもので何か作って、技能スキルを開花させてから装備造りに専念した方がいいのかも……」


 その辺の草などを使って、道具を作成してみる。


 作成判定【4】【6】 それなりの出来である。


 草を編み込んで、縄を作ってみた。それ程の強度は望めないが、身体に引っかけたりすることが出来る。意外にも上手に作成が出来た所為か、技能スキルに【作成】の項目が追加されていた。


【作成】――説明。


 技能スキルの一種であり、材料から道具や装備を作り出す事が可能となる。器用さと知能に左右され、技能スキルのレベルと、熟練度によって、完成度に差が生まれる。1度の作成で探索1回分の時間が消費される。


――――――――説明終了。


『縄を作成したことで、正式に技能スキルを獲得しました。おめでとうございます』


「縄を複数連結させていって、防具を作ってみるのも良さそう」


『そうですね。私の予想ですと、草の鎧が作れそうです』


「やってみよう」


 蟹江静香は、その日を費やして、草の縄を作成し、そこから鎧を作る事に決めた。一度作ったものに関しては、作業速度が上昇する仕様らしく、予想よりも短い時間で、草の鎧は完成した。


 作成判定【4】【4】 上出来である。


【草と獣の鎧】――説明。


 草とたてがみを交互に編み込んで、耐久力を強化した、カニ専用の小型鎧。最終防御力が+1されるが、以前の葉っぱ装備とは異なり、1回の攻撃で壊れたりはしない。当然の様に火に弱く、獣の油効果で、雨や水に抵抗がある。


――――――――説明終了。


「鳥の羽も活用したかったけど、色が滅茶苦茶目立つから隠密出来なくなるし、迷彩効果薄れるから、他の所に使いたかったんだけど、全く装備に転用できるアイディアが浮かんでこない……」


『こういう時、【閲覧の神々】ならどういうアイディアを出すのでしょうかね』


「その【閲覧の神々】ってどんな神様ですか?」


『我々とは異なる摂理に生きる神達です。どこかで我々の活動を見守ってくれている存在ですね。コメントなんかくれると、大変ありがたいです』


「その神々は何を理由に私の地獄体験を見てるんですかね」


『愉悦……?』


「終わってるヤツの発想ですよ! 女性教師が訳も分からず蟹にされて、モンスターたちに虐殺されて死に戻りするファンタジーな作品なんて、誰が見るんですか⁉」


『う~ん、現状は誰にも見られてない可能性がありますねぇ』


「それはそれで悲しいな」


『現状、ひとりの神が、我々の活躍を閲覧してくれていて、お気に入り登録してくれていますね』


「私の現状を見ている神々の皆様、早くこの物語を終焉に迎えたいので、早々に恩恵をお願いいたします」


『まぁ、運命の神は、遊び感覚でサイコロを振っているので、楽しみながら苦しんでいますね。大きな目標として、宝玉による英霊の召喚があるんですけど、最悪、蟹江静香さんが、最強生物としてこの世界に君臨し、魔人を倒しても目標はクリアされるので、一応憶えておいてください』


「ラスボスを自分の手で⁉ 相手はどれぐらい強いんですか⁉」


『10000倍くらいですかね』


「事実上不可能じゃん!」


――――――――その日は装備の作成で1日が終わった。


 カニ生活5日目――――――――


能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 SSCソフトシェルクラブ小型 LV1

〈名前〉 蟹江静香


HP  24/24

MP   7/7


筋力  9

頑強  3

素早さ 6

器用さ 4

知能  8

幸運  5


技能スキル〉 捕食 作成


〈装備〉草と獣の鎧(防御力+1)


――――――――――――――――


 装備も出来上がった事で、探索に出掛けるかと思いきや、蟹江静香は新しい攻撃手段の模索をしていた。現状、噛みつき以外の攻撃手段がなく、いざという時に対応出来なくなるというのを防ぎたい思いがあった。


「やはり、蟹の攻撃と言えば、鋏攻撃……。しかし、切れ味や握力、どの系統として技能スキル開花をすれば良いだろうか……」


 鋏が使用可能となれば、距離が伸びる為、戦闘を有利に進めることも望める。新しい攻撃手段は彼女の希望となる存在なのだ。


「ダブルグラップル……? からの噛みつき……。だとコンボ技になってしまう。鋏単体で成立させなければ……。そういえば以前、救済ガチャのラインナップに、技能スキル【鋏】っていうのがあったような……。万力拘束系の技だったら、継続ダメージとか狙えるし、逃走を妨害する事も可能になるかも……」


 数少ないゲーム経験をフル動員し、ゲームというルールの中で、己に有意な可能性を見出していく。


『最初に出した人形で、技の練習をしてみるのはどうですかね? 身体を動かした方が、実感も湧いてくると思いますし』


「やってみる」


 攻撃技能スキル訓練判定【6】【4】 充実した訓練が出来た。


 技能スキル開花判定【2】 技能スキル【千切る】開花


 技能スキル【千切る】――説明。


 鋏で拘束した相手の部位を切断する技能スキル

基本ダメージに+2D6のダメージを与え、更に【部位破壊判定】を行い、成功すれば、対象の一部分を切断する事が可能となる。


 【部位破壊】追加効果――説明。


対象の四肢や尻尾、顔、頭などに負傷を与え、攻撃や防御を封じる。1度で破壊する事はなかなか出来ないが、重ねて使う事で、対象の防御力を低下させたり、破壊の確率が上昇する。


――――――――説明終了。


 「これは優秀な攻撃方法だな……。問題は外の敵に通用するかどうかだけど、試してみるしか方法はないよね……」


 蟹江静香は憶えた技能スキルを携えて、そのまま探索へと出た。既に行動を訓練に使用しているので、本日の残り探索回数は2回となる。


【マスク判定】 曇っている。日当たりが悪い。視界も狭い。


 探索判定【5】【3】


 昨日の雨でぬかるんでいる地面を進むと、死体を発見した。


【マスク判定】【マスク判定】 モンスターの死体を発見した。

 そのモンスターは蛇の様な見た目をしているが、明らかに腕が生えていて、純粋な爬虫類出ない事が一目で判断できた。



技能スキル捕食の効果により、モンスター肉を摂取。蟹江静香の――』



【5】【5】【6】


『――頑強が3増加しました』


 探索判定【5】【2】 新たな敵に遭遇した!


【マスク判定】【マスク判定】【マスク判定】


 目の前に大きな虫が出現した!


『戦いますか?』


「はい」


イニシアティブ判定【マスク判定】【マスク判定】失敗。


『相手の方が素早いです!』


「先行取られちゃったかー」


敵の攻撃。達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


「HPで受ける!」


敵のダメージ判定【マスク判定】 成功。


 巨大な虫の体当たりが繰り出されてた。蟹江静香は大ダメージを負った。


「草と獣の鎧を装備してこの威力……! 虫とは本当に相性が悪い!」


達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


敵の回避なし!【ダメージ判定】【2】【5】

【部位破壊判定】【マスク判定】成功。追加ダメージ【2】相手の筋力が2低下。


 ダメージの交換を行い、互いに満身創痍となっている。


敵の攻撃。達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


「HPで受ける!」


敵のダメージ判定【マスク判定】 成功。


相手の筋力が低下しているおかげで、ダメージは最小限に防げた。それでも、あと一撃でも喰らえば、死体が完成してしまう。


達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


敵の回避なし!【ダメージ判定】【4】【5】


 蟹江静香の千切るが炸裂! 巨大な虫を討伐した!


――――――――戦闘終了。



報酬―――――――― 

 経験値+200

 芋虫の粘液

――――――――入手。


 戦闘終了と同時にファンファーレが鳴り響く。


『おめでとうございます! レベル上昇しました!』


「よぉぉおぉっし‼」


『自動判定により能力値ステータスが上昇します』



能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 SSCソフトシェルクラブ小型 LV2

〈名前〉 蟹江静香


HP  30/30

MP  14/14


筋力  11

頑強   7

素早さ  9

器用さ  7

知能   9

幸運   7


技能スキル〉 捕食 作成

〈攻撃系技能スキル〉 千切る

〈装備〉草と獣の鎧(防御力+1)

――――――――――――――――



技能スキル捕食の効果により、虫の肉を摂取。蟹江静香の――』


【4】【2】【2】


『――素早さが1増加しました』


「上り幅が最低値!」


『贅沢は言えませんよ。探索回数が限界なので帰りましょう。夜は危険です』


「はーい」


 帰還判定【マスク判定】――成功。




 大木の洞――


「正直、【千切る】が無かったら終わってた」


『本当に危なかったですね。HP6まで持ってかれていました。今回勝てたのは、部位破壊が成功したからでしょう』


「今の所、ガチンコで戦ってくれる相手ばかりだから成立したけど、これからは状況がもっと悪くなると思う。新しい技能スキルを確立しなきゃ……」


『オペレーションシステムからは画期的なアイディアは出たりしないので、期待なさらないで下さいね』


「もともと期待してない」


『傷つきますねぇ。本日の戦利品を確認しておきましょう』


「【芋虫の粘液】だね。そういえば、戦利品ってどうやって回収してるの?」


『インベントリという収納空間システムが確立されています。まぁ、ゲームみたいなものなので』


【芋虫の粘液】――説明。


 芋虫の粘液、口から吐き出された粘液であり、基本構成物質はタンパク質となっている。蜘蛛の糸の様に粘着質で熱に強い。作成や装備の修復をする際に、接着剤として使用する事も出来る。その際、最終防御力が+1上昇する。


――――――――説明終了。


「今日はもう遅いので修復なりなんなりは明日にしよう」


『お疲れ様でした。良い夢を』




能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 SSCソフトシェルクラブ小型 LV2

〈名前〉 蟹江静香


HP  30/30

MP  14/14


筋力  11

頑強   7

素早さ 10

器用さ  7

知能   9

幸運   7


技能スキル〉 捕食 作成

〈攻撃系技能スキル〉 千切る

〈装備〉草と獣の鎧(防御力+1)

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