第3話 ずぶ濡れの戦い。

 カニ生活3日目――――――――


能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 ソフトシェルクラブ(鋏1・脚1喪失)

〈名前〉 蟹江静香


HP  13/13

MP   2


筋力  4

頑強  1

素早さ 3

器用さ 1

知能  1

幸運  3


技能スキル〉 捕食


――――――――――――――――


 目が覚めると、蟹江静香のHPは完全に回復していた。しかし、鋏と脚は相変わらず喪失の状態にある。


「昨日は食べている最中に襲われたから、問答無用で攻撃を受けてしまった訳なんだけど、周囲を警戒していれば、あのような事は防げるのではなかろうか?」


『まったくもってその通りですね。システムがゲームである以上、避けられない現象と言うものは存在しますが、こちらが理論で責めれば、この世界における脅威に対策が可能と思われます』


「天の声さんは、周囲の警戒とかしてくれたりしないんですかね?」


『そこまで便利に出来てませんね。外に出ている間、私は周辺の環境マップを作る事に専念していますし、手に入る情報も、あなたの視点を基準に手に入るものばかりです。オペレーションシステムと言っても、万能ではないのです』


「こう、周囲を警戒していれば、技能スキルで気配察知とは、環境マップとか、手に入ったりしないんですかね?」


能力値ステータスにも影響を受けると思いますが、訓練次第で技能スキルが開花するという事例はあるみたいですね。絶対の保証はありませんが』


「鋏と脚を捥がれている以上、更なる部位の喪失は回避したいところ……。この世界がゲームであるならば……何か攻略の糸口が掴めないものか……!」


 蟹江静香は、拠点に生えている苔を食べながら作戦を考えている。


苔判定【マスク判定】により、HP3増加しました。


「おぉ、今のところの最大値‼ これは幸先がよい‼ 現在値16かぁ」


『昨日も序盤はかなり順調でしたので、油断なさらない様に』


「気を引き締めていかないと……。そうだなぁ、もしかしてこの苔を、背中に装備したら、カムフラージュ率が高まるとかないかな?」


『試しにやってみましょう』


 蟹江静香は、周辺に生えている苔を自分の身体へと移植した。片方の鋏が無いので、半分しか貼り付けることが出来なかったが、身体に苔を移植する事が出来た。


『苔を装備した事で、隠密の効果が追加されました』


【拠点の苔】――説明。


 拠点に生えている清潔な苔、HPの増加が可能となる上に、装備する事で環境に身体を馴染ませ、姿を隠しやすくする効果がある。が、微々たるものであるという事に留意していただきたい。


――――――――説明終了。


「この理論が成立するとしたら、葉っぱなんかでも、姿を隠せるようになるのではないだろうか? 試しにやってみよう」


 拠点に落ちている葉っぱを身体に乗せたが、効果は表れなかった。


『どうやら、同じ箇所に二重の装備は出来ない様ですね』


「じゃあ、鋏で加工して、脚に巻いてみよう」


【葉の脚装備】――説明。


 葉っぱを加工して作った装備、最終防御力に+1の補正が掛かるが、一度攻撃を受けたら壊れる。ないよりまし。というレベルの装備。油断大敵、備えあれば憂いなし。


――――――――説明終了。


「この考え、行けるかも知れない。私の知識で装備を作って武装すれば、多少戦闘の足しになるかも!」


『それにはやはり、もう片方の鋏と能力値ステータス器用さがひつようになるかもしれませんね』


 天の声が言う通り、片方の鋏で作った葉っぱの装備は、見た目がボロボロでありとても頼りない。


「まだ、出来ることはあるかもしれない。周りの環境を利用してこそ、戦略シミュレーションゲームの醍醐味。拠点には他に何があるんだろう」


 あたり周辺を見渡してみるも、水源、苔、葉っぱ、石、土、泥程度の物しか発見出来なかった。


「泥、石あたりは加工すれば何かしらの道具を生み出せるかもしれない。貴重な資源だから確保しておこう。拠点で出来ることはもうなさそうだし、満を持して外に出よう。もうちゃんと戦えるまでは、ヒット&アウェイで頑張るしかない」


 覚悟を決めて、外に出る。




【マスク判定】


 運命は時として厳しい。雨が降っている。

しかも強い。この状況を好機と取るかは考え方次第だろう。

まだ、振り始めたばかりなので、川が出来たりはしてないが、これが何日も続けば、環境も大きく変化する事だろう。


 探索判定【1】【3】


 更に、運命は時として厳しい。

この雨の中、一番合いたくない強敵との遭遇であった。


【マスク判定】【マスク判定】【マスク判定】


 敵の正体は、雨に濡れて飛べなくなっている中型の鳥であった。この雨を好機と取るかは、本人次第である。


「考え方によってはチャンスかもしれない‼」


『戦闘の前に、逃走するかどうかの選択ができますが、どうしますか?』


「今回は戦う! 飛べない鳥なんて、全然速度出ないでしょ!」


『わかりました。戦闘に入ります』


 イニシアティブ判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


『こちらの先制攻撃です! 一気に攻めましょう!』


「OK!」


 達成率判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


 敵の回避判定 なし。HPで受ける。


 ダメージ判定【3】


 中型の鳥に対し、かなりのダメージを叩き出した。


「手応えあり!」


敵の攻撃。達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


「HPで受ける!」


敵のダメージ判定【マスク判定】


 蟹江静香はダメージを受けた。葉っぱの装備が犠牲となり、負傷を抑えた。葉っぱの装備は粉々に砕けた。


「生きてる! このまま行く!」


 達成率判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


敵の回避なし! ダメージ判定【6】


 蟹渾身の噛みつきが炸裂した! 中型の鳥は倒れた!


「うぉぉおぉぉおぉお‼ 勝てた‼ 初勝利‼」


『おめでとうございます‼ 天気と相手に恵まれましたね‼』


中型の鳥を討伐した!


――――――――戦闘終了。


報酬―――――――― 

 経験値+100

 中型鳥の羽

――――――――入手。


 戦闘終了と同時にファンファーレが鳴り響く。


『おめでとうございます! レベルを獲得しました!』


「やったあぁあ‼」


『自動判定により能力値ステータスが上昇します』


能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 ソフトシェルクラブ小型 LV1

〈名前〉 蟹江静香


HP  24/24

MP   7/7


筋力  7

頑強  3

素早さ 5

器用さ 4

知能  4

幸運  5


技能スキル〉 捕食


――――――――――――――――


「うおおお! 能力値ステータス伸びてる!」


『レベルアップした事で、喪失が改善され、全回復しましたね』


「やったー! 鋏と脚が返ってきた~!そして、一皮むけたおかげか、一回り大きくなってる~! 嬉し~!」


『このまま鳥の肉を食べましょう!』


「食べまーす!」


技能スキル捕食の効果により、鳥の肉を摂取。蟹江静香の――』


【2】【3】【3】


『――知能が2増加しました』


「これで知能が6になった! 最初期の6倍賢い!」


『発言が全然賢くありませんね、探索を続けますか?』


「続けます! 体力回復したし!」


 探索判定【2】【6】


 激しい雨が降る中、死体を発見した。


【マスク判定】【マスク判定】


 発見した死体は、ウジとハエが湧いたモンスターであった。姿形が既に大きく変貌しており、何のモンスターなのかは判別できないが、亜人の様にも見える。


「ここに来て、見慣れない動物の死体を発見したけど、これは何かな」


『これはモンスター、おそらくはリザードマンですね。この地に多く生息している種族です』


「食べても大丈夫なものなのかな?」


『どうぞ、がぶっと行ってください』


「食べる時は周囲を警戒して……! もぐもぐ!」


技能スキル捕食の効果により、リザードマン?の肉を摂取。蟹江静香の――』


【2】【3】【3】


『――知能が2増加しました』


「また知能か~! 上がるだけ良いんだけど、直接ダメージに繋がらないから微妙だなぁ~!」


『知能の数値は魔術や技能スキル攻撃のダメージに関係している様です。早く手に入るといいですね。ついでにウジも食べましょう』


「はーい」


 ウジを食する事で手に入れられる能力値ステータスの数値を越えています。これ以上食べても能力値ステータスは増加しません。


『おや、もう頭打ちになってしまったようですね』


「これってウジを食べる事で手に入る力の限界を超えたって事?」


『その通りです。既にレベルも取得し、能力値ステータスも上がったので、適応しきってしまったのでしょうね。お腹の足しにはなるので、空腹の際には食べる事を推奨いたします』


「なるべく食べたくないな……」


『探索を続けますか?』


「はい!」




 探索判定【2】【5】


 激しい雨の中、突如として何者かが現れた――


【マスク判定】【マスク判定】【マスク判定】


 ずぶ濡れとなった中型の獣が現れた。鋭い爪と牙を持つ彼らは、雨の中であっても、強い眼光を放ち、小型の蟹に対しても威圧を掛けてくる。


『戦闘を行いますか?』


「します!」




 イニシアティブ判定【マスク判定】【マスク判定】失敗。


『やはり獣の方が一枚上手の様です。気を付けてください!』


「よーし! 来い! 」


敵の達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


「HPで受ける!」


敵のダメージ判定【マスク判定】


 獣の噛みつき攻撃、蟹江静香は軽傷を負った。


「思ったほどではなかった!」


達成判定【6】【6】Critical!


『おっと、ここでクリティカルが出てしまいましたね? 解説します! クリティカルを引き当てた場合、ダメージボーナスが発生します! そのままドカンと決めちゃってください!』


ダメージ判定【5】【4】【マスク判定】【マスク判定】


 蟹の噛みつきが炸裂した。獣は相当なダメージを受けている。最後の力を振り絞り、獣が反撃する。


敵の達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。


「HPで受ける!」


敵のダメージ判定【マスク判定】【マスク判定】


 蟹江静香に少しの損傷を与えた。


達成判定【6】【4】成功。


ダメージ判定【1】


蟹の噛みつきが命中した。ずぶ濡れの獣を討伐した。


――――――――戦闘終了。


報酬―――――――― 

 経験値+100

 獣のたてがみ

――――――――入手。


技能スキル捕食の効果により、獣の肉を摂取。蟹江静香の――』


【4】【4】【2】


『――素早さが1増加しました』


「上り幅が少ない‼」


『人の欲望と言うものはそこがありませんね。勝てただけでも良しとするべきでしょう。2連勝とは驚くべき結果です。クリティカルも炸裂した事ですし、今日の探索は大成功と言ったところでしょ』


「よし、帰ろう。かなり疲れた」


帰還判定【マスク判定】――成功。


 初勝利を収めた蟹江静香は、拠点である【大木の洞】へと帰還した。


 大木の洞――


「今回は初勝利を収めたという事で、苔と水で宴だぁ!」


『本当におめでとうございます。これ程の活躍されるとは、思ってもみませんでした。恐らく運命の神も喜んでいる事でしょう』


「あぁ、早い所宝珠を手に入れて現世に帰りたい……!」


『そうですね。巻き込まれた生徒さん達の事も探さないといけませんし』







「……は? 今なんて?」


『えぇ、ですから、強制召喚の際に巻き込まれた生徒さん達を探して保護しなければなりませんね、と』


「嘘でしょ⁉ こんなクソゲー環境で、生徒の保護までしなきゃならんの⁉ っていうか巻き込まれたの私だけじゃなかった⁉」


『はい、30人、全員巻き込まれて、何かしらの動物になっている事でしょう』


「う、うわああああああ‼ キツイ‼ 難易度が爆上がりしたぁ‼」







能力値ステータス――――――――――

〈状態〉 ソフトシェルクラブ小型 LV1

〈名前〉 蟹江静香


HP  18/24

MP   7/7


筋力  7

頑強  3

素早さ 6

器用さ 4

知能  8

幸運  5


技能スキル〉 捕食


――――――――――――――――



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