第4話 ずぶ濡れの戦い。
カニ生活3日目――――――――
〈状態〉 ソフトシェルクラブ(鋏1・脚1喪失)
〈名前〉 蟹江静香
HP 13/13
MP 2
筋力 4
頑強 1
素早さ 3
器用さ 1
知能 1
幸運 3
〈
――――――――――――――――
目が覚めると、蟹江静香のHPは完全に回復していた。しかし、鋏と脚は相変わらず喪失の状態にある。
「昨日は食べている最中に襲われたから、問答無用で攻撃を受けてしまった訳なんだけど、周囲を警戒していれば、あのような事は防げるのではなかろうか?」
『まったくもってその通りですね。システムがゲームである以上、避けられない現象と云うものは存在しますが、こちらが理論で責めれば、この世界における脅威に対策が可能かと思われます』
「天の声さんは、周囲の警戒とかしてくれたりしないんですかね?」
『そこまで便利に出来てませんね。外に出ている間、私は周辺の環境マップを作る事に専念していますし、手に入る情報も、あなたの視点を基準に手に入るものばかりです。オペレーションシステムと言っても、万能ではないのです』
「こう、周囲を警戒していれば、
『
「鋏と脚を捥がれている以上、更なる部位の喪失は回避したいところ……。この世界がゲームであるならば……何か攻略の糸口が掴めないものか……!」
蟹江静香は、拠点に生えている苔を食べながら作戦を考えている。
苔判定【マスク判定】により、HP3増加しました。
「おぉ、今のところの最大値‼ これは幸先がよい‼ 現在値16かぁ」
『昨日も序盤はかなり順調でしたので、油断なさらない様に』
「気を引き締めていかないと……。そうだなぁ、もしかしてこの苔を、背中に装備したら、カムフラージュ率が高まるとかないかな?」
『試しにやってみましょう』
蟹江静香は、周辺に生えている苔を自分の身体へと移植した。片方の鋏が無いので、半分しか貼り付けることが出来なかったが、身体に苔を移植する事が出来た。
『苔を装備した事で、隠密の効果が追加されました』
【拠点の苔】――説明。
拠点に生えている清潔な苔、HPの増加が可能となる上に、装備する事で環境に身体を馴染ませ、姿を隠しやすくする効果がある。が、微々たるものであるという事に留意していただきたい。
――――――――説明終了。
「この理論が成立するとしたら、葉っぱなんかでも、姿を隠せるようになるのではないだろうか? 試しにやってみよう」
拠点に落ちている葉っぱを身体に乗せたが、効果は表れなかった。
『どうやら、同じ箇所に二重の装備は出来ない様ですね』
「じゃあ、鋏で加工して、脚に巻いてみよう」
【葉の脚装備】――説明。
葉っぱを加工して作った装備、最終防御力に+1の補正が掛かるが、一度攻撃を受けたら壊れる。ないよりまし。というレベルの装備。油断大敵、備えあれば憂いなし。
――――――――説明終了。
「この考え、行けるかも知れない。私の知識で装備を作って武装すれば、多少戦闘の足しになるかも!」
『それにはやはり、もう片方の鋏と、
天の声が言う通り、片方の鋏で作った葉っぱの装備は、見た目がボロボロであり、とても頼りない。
「まだ、出来ることはあるかもしれない。周りの環境を利用してこそ、戦略シミュレーションゲームの醍醐味。拠点には他に何があるんだろう」
あたり周辺を見渡してみるも、水源、苔、葉っぱ、石、土、泥程度の物しか発見出来なかった。心なしか、空間が広くなっている様な感覚がある。
「泥、石あたりは加工すれば、何かしらの道具を生み出せるかもしれない。貴重な資源だから確保しておこう。拠点で出来ることはもうなさそうだし、満を持して外に出よう。もうちゃんと戦えるまでは、ヒット&アウェイで頑張るしかない」
蟹江静香は、覚悟を決めて、外に出る。
【トピックス】――――――――
この世界の摂理には、見えない判定がある。気候の変化や、外敵の行動、攻撃の精度や、食糧確保の可能性。様々な要素が隠されている。それは【マスク判定】と呼ばれるものであるが、中にはレベルや経験に応じて、可視化出来るモノも存在する。自分ではどうしようもない、【流れ】という存在があるのなら、それに逆らわず身を任せてみるのも、ひとつの方法かもしれない。
――――――――――――――――
――熱帯雨林
【マスク判定】
運命は時として厳しい。雨が降っている。
しかも強い。この状況を好機と取るかは、考え方次第だろう。まだ、降り始めたばかりなので、その辺に川が出来たりはしてないが、これが何日も続けば、環境も大きく変化する事だろう。
探索判定【1】【3】
更に、運命は時として厳しい。
この雨の中、一番合いたくない強敵との遭遇であった。
【マスク判定】【マスク判定】【マスク判定】
敵の正体は、雨に濡れて飛べなくなっている、中型の鳥であった。この雨を好機と取るかは、雨の中にいる本人次第である。
「考え方によってはチャンスかもしれない‼」
『戦闘の前に、逃走するかどうかの選択ができますが、どうしますか?』
「今回は戦う! 飛べない鳥なんて、全然速度出ないでしょ!」
『わかりました。戦闘に入ります』
イニシアティブ判定【マスク判定】【マスク判定】成功。
『こちらの先制攻撃です! 一気に攻めましょう!』
「OK!」
達成率判定【マスク判定】【マスク判定】成功。
敵の回避判定 なし。HPで受ける。
ダメージ判定【3】
中型の鳥に対し、かなりのダメージを叩き出した。
「手応えあり!」
敵の攻撃。達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。
「回避はせずに、HPで受ける!」
敵のダメージ判定【マスク判定】
蟹江静香はダメージを受けた。葉っぱの装備が犠牲となり、負傷を抑えた。葉っぱの装備は、その場で粉々に砕けた。
「生きてる! このまま行く!」
達成率判定【マスク判定】【マスク判定】成功。
敵の回避なし! ダメージ判定【6】
蟹江静香、渾身の噛みつきが炸裂した! これにより、中型の鳥は倒れた!
「うぉぉおぉぉおぉお‼ 勝てた‼ 初勝利‼」
『おめでとうございます‼ 天気と相手に恵まれましたね‼』
中型の鳥を討伐した!
――――――――戦闘終了。
報酬――――――――
経験値+100
中型鳥の羽
――――――――入手。
戦闘終了と同時にファンファーレが鳴り響く。その場で急速の脱皮が行われ、一回り大きさが増しており、喪失した箇所が再生している。
『おめでとうございます! レベルを獲得しました!』
「やったあぁあ‼」
『自動判定により
〈状態〉 ソフトシェルクラブ小型 LV1
〈名前〉 蟹江静香
HP 24/24
MP 7/7
筋力 7
頑強 3
素早さ 5
器用さ 4
知能 4
幸運 5
〈
――――――――――――――――
「うおおお!
『レベルアップした事で、喪失が改善され、全回復しましたね』
「やったー! 鋏と脚が返ってきた~! そして、一皮むけたおかげか、一回り大きくなってる~! 嬉し~!」
『それでは、このまま鳥の肉を食べましょう!』
「食べまーす!」
『
【2】【3】【3】
『――知能が2増加しました』
「これで知能が6になった! 最初期の6倍賢い!」
『発言が全然賢くありませんね、探索を続けますか?』
「続けます! 体力回復したし!」
【トピックス】――――――――
戦闘における判定は、様々な種類が存在している。【イニシアティブ判定】とは、攻撃をする順番を決める判定である、素早さの
――――――――――――――――
探索判定【2】【6】
激しい雨が降る中、死体を発見した。
【マスク判定】【マスク判定】
発見した死体は、ウジとハエが湧いたモンスターであった。姿形が既に大きく変貌しており、何のモンスターなのかは判別できないが、亜人の様にも見える。
「ここに来て、見慣れない動物の死体を発見したけど、これは何かな」
『これはモンスター、手元にある資料によりますと、おそらくはリザードマンという種族ですね。この様な水辺の地に、多く生息している様です』
「食べても大丈夫なものなのかな?」
『どうぞ、がぶっと行ってください』
「食べる時は周囲を警戒して……! もぐもぐ!」
『
【2】【3】【3】
『――知能が2増加しました』
「また知能か~! 上がるだけ良いんだけど、現状、直接ダメージに繋がらないから微妙だなぁ~!」
『知能の数値は魔術や
「はーい」
ウジを食する事で手に入れられる
『おや、もう頭打ちになってしまったようですね』
「これってそのまま、ウジを食べる事で手に入る力の限界を超えたって事?」
『その通りです。既にレベルも取得し、
「カニの身ではあるが、ビジュアル的にはなるべく食べたくないな……」
『探索を続けますか?』
「はい!」
【トピックス】――――――――
【ダメージ判定】とは、攻撃した手段が、どれほど相手に効果があったのかを決める判定である。
――――――――――――――――
探索判定【2】【5】
激しい雨の中、突如として何者かが現れた――
【マスク判定】【マスク判定】【マスク判定】
ずぶ濡れとなった中型の獣が現れた。鋭い爪と牙を持つ彼らは、雨の中であっても、強い眼光を放ち、小型の蟹に対しても威圧を掛けてくる。
『戦闘を行いますか?』
「します!」
イニシアティブ判定【マスク判定】【マスク判定】失敗。
『やはり獣の方が一枚上手の様です。気を付けてください!』
「よーし! 来い! 」
敵の達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。
「HPで受ける!」
敵のダメージ判定【マスク判定】
獣の噛みつき攻撃、蟹江静香は軽傷を負った。
「思ったほどではなかった!」
達成判定【6】【6】Critical! 蟹江静香の体感時間がゆっくりになる。
『おっと、ここでクリティカルが出てしまいましたね? 解説します! 達成判定において、クリティカルを引き当てた場合、攻撃は確実に命中し、更には、ダメージボーナスが発生します! そのままドカンと決めちゃってください!』
ダメージ判定【5】【4】【マスク判定】【マスク判定】
蟹の噛みつきが炸裂した。獣は相当なダメージを受けている。瀕死の重傷といったところではあるが、最後の力を振り絞り、獣が反撃する。
敵の達成判定【マスク判定】【マスク判定】成功。
「HPで受ける!」
敵のダメージ判定【マスク判定】【マスク判定】
蟹江静香に少しの損傷を与えた。
達成判定【6】【4】成功。
ダメージ判定【1】
蟹の噛みつきが命中した。ずぶ濡れの獣を討伐した。
――――――――戦闘終了。
報酬――――――――
経験値+100
獣のたてがみ
――――――――入手。
『
【4】【4】【2】
『――素早さが1増加しました』
「上り幅が少ない‼」
『人の欲望というものは底がありませんね。勝てただけでも良しとするべきでしょう。2連勝とは驚くべき結果です。クリティカルも炸裂した事ですし、今日の探索は大成功とと言って差し支えありません』
「よし、帰ろう。かなり疲れた」
帰還判定【マスク判定】――成功。
初勝利を収めた蟹江静香は、拠点である【大木の洞】へと帰還した。
【トピックス】――――――――
このトピックス表示はいかがですか? 本編では説明しきれない部分を紹介していく空間を設けてみたのですが……。不評でしたら今後、頻度を調整したいと思います。テレビゲームのロード画面だと思って、読み飛ばして頂いても結構です。最後まで読んで下さった方々には感謝いたします。
――――――――――――――――
大木の洞――
「今回は初勝利を収めたという事で、苔と水で宴だぁ!」
『本当におめでとうございます。これ程の活躍されるとは、思ってもみませんでした。恐らく運命の神も喜んでいる事でしょう』
「あぁ、早い所宝珠を手に入れて現世に帰りたい……!」
『そうですね。巻き込まれた生徒さん達の事も、探さないといけませんし』
「……は? 今なんて?」
『えぇ、ですから、強制召喚の際に巻き込まれた生徒さん達を探して、保護しなければなりませんね、と』
「嘘でしょ⁉ こんなクソゲー環境で、生徒の保護までしなきゃならんの⁉ っていうか、巻き込まれたの私だけじゃなかった⁉」
『はい、30人、全員巻き込まれて、何かしらの動物になっている事でしょう』
「う、うわああああああ‼ キツイ‼ 難易度が爆上がりしたぁ‼」
〈状態〉 ソフトシェルクラブ小型 LV1
〈名前〉 蟹江静香
HP 18/24
MP 7/7
筋力 7
頑強 3
素早さ 6
器用さ 4
知能 8
幸運 5
〈
――――――――――――――――
【ルール】――――――――
1日の行動回数には制限がある。
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