第7話 新たな漂着者
毒キノコで苦しむわたくしを介抱してくれたのは、わたくしの暮らしていたギリス王国と長年戦争をしていたアイル王国の元傭兵、ミロスだった。
「人狼族……ミロスは、亜人なんですの?」
「そういうことだな」
亜人。
この世界に存在する生き物は、わたくしたち人間と、リス子やクラーケンのような魔物、そしてミロスのような亜人がいる。
大昔には『魔人』という種族もいたらしいけど、人間との争いによって滅びたとわたくしは習った。
「人狼族、初めてお会いしましたわ……あっ、わたくし名乗っておりませんでしたよね、失礼いたしました。わたくしはアーシア。アーシア・フォレガンドロス……」
「おっと、自己紹介どうも。だが積もる話はお前さんが元気になってから改めてしようじゃないか」
「あっ……」
ミロスがわたくしを葉っぱのベッドに寝かせる。背中からもふもふの感触が無くなって、ちょっと残念。
「その症状、何か変な物を食べたか? 魚かキノコ、後は毒草の球根あたりか」
「おそらく、毒キノコを……」
「キノコか。どんなやつだったか覚えているか?」
「木箱の中に、まだいくつか残りがありますの……」
近くでガサガサと音がする。おそらく、ミロスが食料の入った木箱を漁っているのだろう。
「これか……っと、こりゃあキジマテングタケの仲間だな。一応焼けば普通に食える種類なんだが……」
「……そのまま、食べましたわ」
「だろうな」
視界がぼやけてミロスの姿は見えないが、心底呆れているに違いない。
うう、恥ずかしいですわ……
「だがまあ、コイツの毒ならおそらく何とかなる。これはそこの森で採ってきたのか?」
「そうですの……細長い木の根元にたくさん生えてましたわ」
「そうか。それじゃあ、ちょっくら行ってくるか」
「ど、どこに行くんですの……?」
「お前さんの治療薬を採りに行ってくるのさ」
―― ――
「さあ出来た。ここに口をつけて、ゆっくり飲むんだ」
「こくこく、こく……っ!? に、苦いですわ~……!」
「良薬は口に苦し、だ。吐き戻すんじゃないぞ」
「うう……」
森から戻ってきたミロスにとても苦い謎の液体を飲まされる。
「こ、これはなんですの?」
「お前さんが食ったキノコは細長い木の根元に生えていたと言っていただろ。これはその木の葉を絞ったものだ。水で薄めてあるから多少はマシになっている」
「なってないですわ……!」
ミロスの話によると、わたくしが飲まされた葉っぱのしぼり汁にはキジマテングタケの毒を中和する成分が含まれているらしい。
「これで半日ほどゆっくり休んでいれば、日暮れ前にはある程度回復するだろうよ」
「でも、もうお水があまり……」
おそらく、今日明後日くらいで飲み水が尽きるだろう。
しかも今はミロスの分も必要だ。このままでは二人とも脱水で動けなくなってしまう。
できれば今日中に何とかしておきたかったのだけれど……
「水はまあ、心配するな。俺がどうにかする」
「本当ですの……?」
「任せておけ、俺は元傭兵だからな」
「ふふ、よく分からない理由、ですの……」
わたくしは何故かミロスの適当な返答に安心感を覚え、再び眠りについた。
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