第5話 危険な食材
「……くー、くー……Zzz」
ザザ~ン……ザブ~ン……
「お父様……それはわたくしのミートパイですわ……」
「チュウ」
「う、う~ん…ネズミのミートパイは要りませんわ……」
「チュウチュウ」
「ちゅう……はっ! 朝ですの!」
ゴンッ! バサバサバサッ!
「ったぁ~……! またやっちゃいましたの……天井が低すぎますわ」
勢いよく起き上がった瞬間、昨晩即席で作った木の枝と葉っぱの天井が崩壊する。
低い天井に慣れるか、もっとちゃんと作らないとダメね。
「チュウチュウ!」
「あらリス子じゃない。昨日は無事に家に帰れたのね」
起きたら足元に昨日見つけたリスの魔物、リス子がいた。
どうやら本当にわたくしに懐いてくれているみたい。
ぐ~……
「チュウ?」
「ど、どうやら朝食の時間のようですわね」
昨日採った木の実と野ブドウ、それから非常食用の干し肉を少しだけ。
「残りは保存が効くイモとタマネギ、それから塩が3欠片。お水が……ガロン瓶2本ほど」
どうにかして今日明日、明後日くらいまでに飲める水を確保しなければ。
「海水なら目の前にいくらでもあるのだけれど……」
わたくしは海水を飲める水にする方法を知らない。
多分、塩や不純物を取り除けば良いのだと思うけど、火もつけられないし、濾す方法も分からない。
「はあ……わたくしって、1人だとなんにも出来ないのね……」
家には紅茶を入れたり服を着替えさせてくれるメイドがいたし、美味しい料理を作ってくれるシェフもいた。
植物に詳しい庭師や、馬の世話をしてくれる御者も……フォレガンドロス家が没落してしまった今、使用人たちはどうなっているのだろう。
「できれば、わたくしよりも過酷な暮らしを送る羽目になっていないと良いのだけれど……」
とはいえ、今のわたくしに他人を心配する余裕など全くない。
まずは自分が生き延びることを考えましょう。
「それでは本日も元気に無人島生活、やっていきますわよ!」
「チュウ~!!」
―― ――
「はあ、はあ……ダメですわ、何も見つかりませんの」
昨日探索した森の辺りをもう少ししっかりと見て回っているのだけれど、やはり昨日拾った木の実とリス子に案内された大木の周りの野ブドウくらいしか安全に食べられそうなものが見つからない。後は毒々しい色のキノコや、渋くて食べられそうになかった植物の実くらい。
「浜辺のヤシの実が採れれば良いんですけど……」
砂浜には数本の背の高いヤシの木が生えていて、てっぺんの方には大きな実がなっているのを確認した。
しかし、あそこまで登るのは至難の業だ。試しに石を投げてみたけど全然届かなかった。
「チュウ……」
「あなたが落ち込むことは無いわリス子。ヤシの実よりあなたの命が大事ですの」
リス子がヤシの木に登って齧り落してくれようとしたのだけれど、頭上に大きな鳥の魔物が現れてリス子を襲おうとしていたので石を投げてなんとか追い払った。
ヤシの実がなっている所までリス子が登ってしまうとわたくしの投げる石も届かないので、リス子が鳥に捕まる前に止めさせた。
「こ、こうなったらやはりキノコを食べるしか……」
ちょうど近くの木の根元に黄色と赤のシマシマ模様の何とも言えない派手な色のキノコが生えている。
意外とこういうのは見た目が派手なだけで毒はない……気もする。
「……よし、採っていきましょう」
「チュ、チュウ……」
とりあえず手で触ってみてもかぶれたり痺れがきたりする様子はない。
このキノコは結構この辺りの木の根元にたくさん生えているので、普通に食べられればとても優秀な食料になる。
「ふう、とりあえず新たな食料確保ですわ!」
朝から結構歩いたし、一旦拠点に戻って休憩しよう。
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