第4話 寝床を作ろう
「うーん、そろそろ日が暮れますわね……」
魔物島に着いて半日近くが経った。
見つけられた食料は、殻が硬い木の実が少しと、野ブドウがそこそこ。
一応、何種類かのキノコが生えているのを確認したけれど、食べられるかどうか判断できなかったので今は採らないでおいた。
「真っ暗になる前に、寝床をどうにかしませんと」
今の季節は春。この島はわたくしが暮らしていたギリス王国の春よりも暖かいから、最悪浜辺で横になるだけでも寝れなくはないと思う。
「でも雨とか降ってきたら大変ですし、簡素でも良いから屋根のある所で寝たいですわ」
ギリス王国からこの島までの長い船旅では板のような堅いベッドで寝ていたので、砂浜の上に葉っぱでも敷けば普通に寝られる自信はある。
家のふかふかベッドの感触は思い出さないようにしよう。悲しくて寝れなくなってしまう。
ちなみにリス子とは野ブドウがなっていた木の所で別れた。
天敵に見つからないよう、暗くなる前に巣に帰ったのだろう。
「あ、この長~い葉っぱは屋根に使えますわね……」
森の中で大きな葉っぱを何枚か集めて、砂浜に戻る。
「うーん、とはいえ、木を組んで屋根を作る方法なんてわたくし知りませんわ……時間もかかりそうだし」
なにか、大きな岩でもあれば良いんだけど……
「あっそうですわ! 岸壁!」
わたくしが今いる砂浜の両サイドは高さのある岸壁になっている。
この岩壁のせいで海沿いを歩いて島を探索することが出来ないのだけれど、寝床の壁にはできるかも。
「よいしょ、よいしょ……」
ある程度海岸から離れた所の岩壁に拾った枝を何本か立てかけて、その上に大きな葉っぱを括り付けていく。
その下にクッション代わりの小さなはっぱをたくさん置いて、更にその上に大きな葉っぱを敷けば……
「出来ましたわ! ここがわたくしの拠点ですの!」
直角の岩壁に斜め置きした枝、そこに葉っぱの屋根をかけただけの寝床だけど、なんだか妙に達成感があった。
そういえば、子供の頃はよくお父様やお母様と一緒に秘密基地づくりをして遊びましたわね……
「うう、お父様、お母様……」
いけないいけない、気を強く持たなければ。
わたくしはギリス王国の英雄、フォレガンドロス家の一人娘、アーシア・フォレガンドロスなのよ。
無人島に追いやられたって、強く生きてみせますの。
「はあ。今日はなんだか、疲れてしまいましたわ」
船旅の疲れも溜まっているのだろう。今日はもう休んで、明日また食料を探しに出かけよう。
「おやすみなさい、お父様、お母様……」
こうしてわたくしの無人島生活一日目の夜は、波の音と共にゆっくりと過ぎていったのだった。
…………。
「……Zzz ん……んん~……おしっこですわ……」
ゴンッ! ドサドサドサっ!!
「あいったああ!! 痛いですわ!! はっ! こ、ここはどこですの!?」
砂浜、波の音……そうでしたわ、わたくし、島流しにされて……
「って、ああーっ! わたくしの寝床が倒壊してますわーっ!!」
やっぱり、素人の建築はダメですわね。
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