第8話 『開戦』


 「!!先輩っ!」



 近隣の一般人を避難させるため外に向かっていた堅吾も、怪異の存在に気付く。



 「すまん!間に合わなかった、」



 まさかこんなに早く出てくるとは思わなかった。



 確認できる怪異は今のところ2体。 


 これから増える可能性も大いにある。


 早く《裂け目》を封じなければいけないが、やつらがいる状況でそれはできない。


 つまり、俺たち二人でやつらを倒す必要がある。



 怪異はどちらも人型で、大きさは俺たちより同じか、それより小さい。


 全身赤褐色の肌で覆われており、頭部からは円柱状の短い突起のようなものが生えている。


 肝心の神力の量は、、、


 幸いにも、というべきだろうか。


 感じられる神力の量はそこまで大きくはない。


 今、遥斗は【天眼通】を全開にしている。



 俺たちでもなんとかなるか、、、



 だが、それは一人一体を相手にしたときの話であり―――


 こいつらの数が増えれば二人では手に追えなくなるだろう。


 だからこそ、早くこいつらを倒さなければならない!


 (堅吾に二体とも処理してもらい、その間に俺が、、)


 いや、駄目だ。


 堅吾は実力はあるが実戦経験がない。

 

 もしもの事を考えるとそれは最善の判断とはいえない。


 ならば…



 「堅吾!俺たちでやつらを倒す!俺は左のやつの相手をする。お前は右のやつを頼む!」



 「え、でも俺…」



 「大丈夫だ、神力の量も俺と同等かそれ以下。それに、怪異には感情や理性といった概念がないから、攻撃も単調だ。しっかり奴らの動きをみろ!お前なら十分対応できるはずだ!」



 「っ、うっす、やってみるっす」



 「倒さなくても応援が来るまで凌ぐだけでもいい!」



 「うっす、」



 そこにいつもの無邪気で元気な声はなく、強く拳を握りしめ体をこわばらせる堅吾の姿があった。



 それをみて何か声をかけようとしてが、、堅吾は自分の太ももをバシバシと叩き、すぅーっと大きく息を吸い込み叫んだ。



「っしゃぁーー!!先輩にいいとこ見せるっすよ!!」



 不安や恐怖がないわけではない。始めて怪異と戦うのだ。だが堅吾は、それらの感情を殺し、自分を鼓舞している。



 その叫び声に反応したのか怪異がこちらの存在に気付く。



 「よしっ!やるぞ!堅吾!」


 「っす!」



 掛け声と同時に俺たちは駆け出し、二手に分かれ一体ずつ相手をする。はずだったが――――



「っ!」



 俺には目もくれず、二体とも堅吾を標的にする。



 「くそっ!俺は眼中にないってか!?」



 俺はとっさに近くに落ちていた鉄パイプのようなものを拾い上げ、怪異めがけて投げつける。



 「お前の相手は俺だ!!」



 投げられたそれは、怪異の背中に命中し、二体のうちの一方から注意を引けた。



 (よし!ここからだ、)



 こうして俺たちの予想だにしなかった戦いが始まった。

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