プロローグ 最悪の未来
それから時は流れ現在。
残暑も去り、初秋を感じさせる冷たい風が木の葉を揺らしている。
そんな心地のよい、よく晴れた日の昼頃。
ある廃工場にある、薄暗く陰湿な雰囲気が漂う倉庫に二人の青年の姿があった。
だが、二人の様子はおかしく、まるで蛇に睨まれた蛙のようにその場に立ちすくんでいる。
二人が見つめる先に目を移すと―――
人ならざる存在が一つ。
「――――吾!」
左側に立っていた、もう一人に比べれば細身の青年が、絞り出すように声を発した刹那。
青年のすぐ横を風が通りすぎた。
気がつくと隣に立っていたはずの分厚い体をした青年が消えている。
「っえぁ?」
声とも呼べないような情けない音が、口から漏れる。
何が起こったのかわからない、といった様子の青年が、けたたましい衝突音のした方に口を半開きにしたまま振り返る。
と、そこには―――
倉庫のコンクリート造りの壁に打ちつけられ、力なく体を横たわらせる青年の姿があった。
どれほどの威力だったのか、はたまた壁がもともと脆くなっていたのか、衝突したと思われる壁は砕け散っていた。
その青年は無事なわけがかなく、頭部からは出血し、とっさに体を守るために出したのであろう右腕が、おかしな方向に曲がってしまっている。
一人残された青年は、その悲惨な光景に目の当たりにし息を飲む。
そして、その化け物は背中を向けたまま顔を半分だけ立ちすくむ青年の方に向けると――――
果てしなく邪悪で、背筋が凍るような顔で、
嗤った。
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