第6話 地元のおばあさん
廃工場から数百メートル離れた空き地に車を止めた俺たちは、廃工場の倉庫に向かう途中で、一人のおばあさんに会った。
すぐ近くの家に住んでいるのだろう、軍手と長靴を履いて麦わら帽子姿で畑仕事をしていた。
目が合ったので一応挨拶だけしておく。
「あ、こんにちはー。」
「こんちはっす!」
軽く会釈して挨拶をする。
するとおばあさんは少し驚いたように「あらっ!」と小さく溢すと、すぐににっこりと挨拶を返してくれた。
「こんにちは。こんな時間に珍しいわねぇ~おばちゃんちょっと驚いちゃたわよ~」
そう言われても無理はない。なぜなら今は平日の昼前。学生なら学校に行っている時間だ。
俺たち二人は高校生か、せいぜい大学生にくらい見えるだろうし、
「こんな昼間に何をやっているのか」
と疑問に思われてもしょうがない。
普通の人から見たら、学校をサボって遊び歩いてる不真面目な学生二人、といふうに映るだろう。
さてどうやって弁解しようかと考えていたが、杞憂だったようだ。
おばあさんは何かを察したのか、それとも興味がなかったのか、そのことについてはそれ以上言及しなかった。
「いやぁ~、若い子をみると元気出るわぁ~ここら辺、年々若い子減っててね、今ではおばちゃんみたいな年老りばかりよ~」
「そうなんですね。でも僕ここら辺好きですよ。長閑でのんびりとした雰囲気で、なりより景色がいいです。」
俺も年取ったらここみたいな所でのんびり暮らしたいなぁ、なんて思ったりもした。
「俺もっす!」
堅吾もそう感じていたらしい。お世辞を言うタイプでもないし。
「あらやだ!嬉しいこといってくれるじゃない~」
と、嬉しそうに手をパタパタと仰ぐ。
「そろそろ僕たちはこれで」
一応任務で来ているからあんまり長話をするのも気が引けたので、ここらで話を切り上げる。
「あら!もう行っちゃうのね。」
と、おばあさんは少し残念そうに言う。
「まぁまた気が向いたらいらっしゃい。今度会ったらもうすぐ収穫の自慢の野菜お裾分けしてあげるわよ~」
「まじすか!あざっす!」
と、堅吾は元気に返事をするが、もうここにくることはたぶんなないのだが。
そうしておばあさんに別れを告げて歩き始める。
綺麗な景色をぼけっと眺めながら歩いていると、前方から小学生高学年くらいの少年二人が手をぶんぶん振り回しながらこちら側に走って来る。
追いかけっこでもしているのだろうか。
そういえばここに来る途中でお祭りをやっていたから、もしかしたら学校は休みなのかもしれない。
そして後を追う形で息を切らしながら走っている少年が、もう一人の少年に声をかける。
「はぁはぁ、けんちゃーん!待ってよ!玲くん誘わないのー!?」
「んぁ?いいんだよ!どうせ誘ってもこねぇーし!ほらいくぞ!」
けんちゃん、とよばれていた男の子が俺の横を駆け抜けていく。
「元気っすねぇ~」
感心するように堅吾が呟く。
俺的には会話の内容がすこし気になったが、まぁまだ子供だ。これから上手くやっていくだろう。
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