第4話 フラグ立てちゃった?

 

「申~し訳ないっす!!」


 俺の錆びれた軽自動車の助手席に座り、申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせている堅吾の姿があった。


 何があったのかというと、なんとか堅吾の新作プロテインを飲み切った俺は、その後小一時間トイレに籠る羽目になった。


 なんなら途中で体が羽のように軽くなって、「あ、これもうだめだ」と悟ったくらいだ。


 結局、俺たちは予定より一時間遅れて神野支部を後にしている。


「うーん…体質に合わなかったんですかねぇ、?いやでも、、」


 そう真剣な顔をして、ぶつぶつ分析を行っているが、


 違う。そういう問題じゃない。

 たぶんあれを飲めるのはお前だけだ。

 たのむから気づいてくれ。


「堅吾、あれ、なに入ってたんだ?」


 赤信号で停止している間に、恐る恐るそう聞くと、、


「?そんな大したものはいれてないっすよ?あ、でも隠し味的な感じでピーーーとかピーーー(自主規制)とかそれから…」


「いや、もう大丈夫だ。」


 うん。聞かなきゃよかった。

 危うくアクセルとブレーキを踏み間違えるとこだったじゃないか。

 俺が信号無視で捕まったら責任取ってくれよ?


 とりあえずこの話から離れるため別の話題を探していると、堅吾が口を開いた。


「そういえば、出るの遅れちゃって大丈夫なんですか?」


 堅吾は少し心配そうに俺に聞く。

 初任務で出発が遅れたのだ。心配するのも無理はない。が、


「ああ、問題ない。さっきも説明したが、今日はあくまで調査だけだ。緊急任務でもないし、報告が夜になったとしても上からはなにも言われないよ。」


 そういうもんなんすか?とあまり納得の言っていない様子で堅吾は口を尖らせる。


「まぁそんな顔すんなって。お前ならすぐにもっと重要な任務も任されるようになるさ。」


 と、言うと堅吾は「まじすか!?」と無邪気な子供のように顔をほころばせる。


「その時はまたよろしくお願いしますね!」


「………ああ、そうだな」


 堅吾はもっと強くなる。俺なんかすぐに追い越して。なんならすでに俺より強いかもしれん。


 これは、お世辞でもなんでもなく俺の本心だ。

 朝、俺がトイレに籠る前、相方の力量把握という名目で堅吾の実力を見せてもらったのだが、なかなかセンスがいい。


 堅吾は見た目どおり、神力で身体を強化して肉弾戦を行うタイプ(実践は未経験)で、まだまだ技術や神力の扱い方にムラはあるものの、かなりの量の神力と鍛え上げられた体躯から生まれる高い防御力を持っている。


 堅吾が防御のみに神力を集中させれば、並みの攻撃ではダメージを与えるとこは難しいだろう。

 


「で、今日は何するんでしたっけ?」


 と、俺に、まるで初めて質問するかのように聞くが、もう二回は説明している。


 仕方がないので堅吾にもわかるように説明する。


「はぁ、これもう三回目だぞ。これで最後な。」


 と、前置きをして、


「郊外の廃工場ですんごい神力が探知されたから、現地にいって確認してこいって話。たぶん探知石の誤作動だけど、一応安全を確認しないといけないから、俺たちみたいな下っぱが派遣されたわけ。」


 なるほど!とうなずく堅吾だっが、


「ん?てことは戦闘はなしっすか?!なんだぁ~」


 残念そうに肩を落とす。


「あのなぁ。ただの調査任務で戦闘が起こるってことはよっぽどの緊急事態なんだよ。そうなったら俺ら二人もれなくお陀仏だ。」


「それはヤバイっすね。じゃあ戦闘はなしで、、」



 まぁ、そんなことめったに起こらないから心配する必要はないが。


「ところで、今日の任務が無事終わったら、焼き肉とかどうですか!?初任務の打ち上げみたいなので!」


 焼き肉か、最後に食べたのいつだっけか?師匠に奢ってもらったのがいつだったっけ、、

 そんなことを少し考えてから、まぁいいだろうと思い、


「ありだな。今日は特別に俺の奢りだ」


「さすが天路先輩!太っ腹ぁ!」



 この一瞬でフラクが二つくらい立った気がするが…まぁ気のせいだろう。





















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