第3話 堅吾特製!!トロピカルプロテイン!


 あれから二人はトレーニング室を離れ、もろもろの情報を整理するため、空き部屋に来ていた。

 

 堅吾から話を聞くと、どうやら明日から任務が始まると思うと全く寝付けず、結局ほぼ一睡もせずにここまで来たらしい。


 いや、遠足前日の小学生か。


 そして、なぜあんな時間からあそこにいたのかというと、集合時間を忘れたため


「とりあえずめっちゃ早く行って待ってればいいだろう!!」


 と思い一汗流しながら俺のことを待っていたのだとか。


 元々の集合場所は、渡り廊下を渡った先の反対方向の部屋だったので、俺がたまたまトレーニング室に来なかったらどうしたのだろうか、、

 一汗で済んでよかったよ。

 夜までスクワットをし続ける堅吾を想像してしまい、少しひやっとした。


 そんな心配をしていた遥斗をよそに、向かい側ではシャワーを浴び終えた堅吾が、プロテインシェイカー(中に何が入ってるかは不明。だって色がプロテインじゃないんだもの。)を片手に、どうやら自分で握ってきたらしいおむすびを頬張っている。


「やっはふぉれーにんぐぉはとはふろへいん○!※□◇#△!……」



 前半は何となく聞き取れたが、後は何を言っているのか分からなかった。


「頼むから食べるか話すかどっちかにしてくれ」


 俺がそう言うと堅吾は少し申し訳なさそうにして、もぐもぐもぐ、、、


 ゴクン!と音が聞こえそうなほど豪快に口の中のものを飲み込んだ堅吾は残りの飲み物を飲み干し勢いよく喋り始めた。


「いやぁ~、やっぱトレーニングのあとはプロテインに限るっね!!」


 あ、やっぱあれ、プロテインだったんだ。


「先輩、」


 あれ、俺いつの間に先輩になったんだ?年は同じなはずだが、


「これ、なんだか分かりますか?!」


 そう言って堅吾は空になったシェイカーを俺の方に突き出して聞いてきた。


 俺はあの飲み物が禍々しいオーラを放ってたことは一旦忘れて、


「え、普通にプロテイン…じゃないの?」


 堅吾の勢いに少し仰け反りながらも俺が答えると、


「っっ!惜しいッす!プロテインはプロテインでも、これは、俺が長年の研究の末作り出した…」


「名付けて!堅吾特製!トロピカルプロテイン!!」


 ババーン!という効果音が聞こえてきそうな勢いで堅吾は自信満々に紹介する。


 俺がどこから突っ込めばいいか頭を悩ませていると、


「どうしたんすか?信じてないんすか?!」


「あ、いやそうじゃなくてーー」


 ネーミングセンスとか、中身のこととか、色々突っ込みたいことがあったのだか、堅吾は俺にその隙も与えずに続けた。


「大丈夫ですよ!天路先輩も飲んでみればきっとわかるっすよ!あ、今日はさっきので最後でした!すみません!また明日作ってきます!」


 と勝手に自己解決。なんと騒がしいことか。まぁ、感情が豊かなのはいいことだろう。

 俺のように死んだ目をして生きているよりよっぽどいい。


 というか、さっきの俺に飲ませようとしてんの?あれ絶対ヤバイ物入ってるよね?


 残ってなくてまじでよかった。堅吾なら、少しでも残ってたら無理矢理でも飲ませようとしかねない。


 俺は、堅吾が全部飲んでくれたことに感謝?し、ほっと息をついた。


 その傍ら、堅吾はなにやら自分のリュックサックにがさごそと手を突っ込んでいて、俺はなんだか嫌な予感がしたのでトイレにでも避難しようと立ち上がった瞬間、


「あった!!」


 そうして堅吾が取り出したのは、先ほどの飲み物(俺はあれがプロテインだとは認めていない)とはまた別の存在感を放つ飲み物だ。


「任務のあとに飲もうと思ってた俺の新作です!持ってきてたの忘れてましたよ!」


 と言いながら堅吾は、今の俺にとっては恐怖でしかない満面の笑みでこちらに近づいてくる。

 今から俺が何を言っても無駄だろう。


 いや、きっと大丈夫。実際、別のものだか、さっき堅吾が飲んでたじゃないか。人間が飲めることは保証済みだ。


「俺の分はいいので、いい筋肉はいいタンパク質からっす!どうぞ!」



 俺は覚悟を決め、シェイカーに口を近づけて……










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