4話 一週間経って
俺がリア=ハウンゼンとして転生して、一週間が経った。
目が見えないから定かではないが。
一週間の間、何回も気絶しているのを見るに、リアの体は、最強だったゲームの印象とは裏腹にはるかに弱いのだろう。
あれから、ショックでもなんでもなく、いきなり気絶することがあったのだ。
ゲームではそんな描写はなかったので、体の弱さは克服していったのと思う。
だから修行さえ始めれば、体も自ずと強くなるだろう。そう思いたい。
ああそう、口に出す際の一人称を私に定着でき、自然と私と言えるようになったのは大きな功績だ。
あと、この一週間の間に、リアについてのことを、クラリッサに聞いてみた。
クラリッサは快く答えてくれて、聞いてないことまでしゃべっていた。
曰く―――
「———髪は透き通るほどの白、顔の造形も幼さをのこしつつ、将来は傾国の美女になること確実の美貌をお持ちです!ただ体の大きさは……まぁなんとかなるでしょう」
「———お嬢様は、ハウンゼン侯爵家の次女であらせられます。ハウンゼン家の皆様は大変仲が良かったのですよ。ただ皆様全員がご多忙を極めていらっしゃるのでなかなか会うことは難しいのです」
「———お嬢様は現在、別邸にて暮らされています。視力が無くても暮らしやすいように、とあなたの父君であるマリウス侯爵様特注のお屋敷でございます。別邸にはメイドが四人と騎士が三人常駐しています」
などなどだ。
正直、ゲームの知識に毛が生えただけの情報しかなかった。
ただ一つ、興味深いことがあった。
「———魔法について知りたい?……そうですね、まず魔法は大きく四つの属性に分類されていて、一人一つの属性を持っています。火、水、風、土の四つです。それ以外の属性も、珍しいですがあるようです。ただ一流の魔法使いになると、属性の概念から解放されて、その人だけの魔法を得られる……らしいですね。私はそう言った分野にあまり詳しくないので、詳しくはわからないのですが」
これはゲームになかったものだ。
魔法の概念は確かにあったが、属性についてはゲームにはなかった。
ゲームそのままではないということか?
大元は同じで、細部が異なるのかもしれない。
「———属性を知る方法は、魔道具を使って鑑定をします。平民は十歳になる子供たちに、あるタイミングで一斉に教会で行うと聞いています。貴族は八歳の誕生日後に国王様の前で行うのですが……お嬢様は少し特殊でして……まだ魔道具で鑑定されていないので、属性はわからないのです」
これは完全に新情報。
まぁ、ゲームの主要キャラクターの中の最年少が十六歳なのでそんなイベントがないのは当然か。
ちなみにリアの属性は不明である。
魔法使いでもあることは明言されているが、ゲームでは剣で物理攻撃のみ使用していたからだ。
ふと思う、リアはなぜまだ鑑定されていないのだろう。
なにか事情があったとはいえ、それが解消されれば、鑑定などできるだろうに。
その旨をクラリッサに聞くと―――
「———魔道具は本来、魔法使いが魔力を充填して、効果を発動するものなのですが、鑑定の魔道具は自然的に集まる魔力のみでないと結果がぶれてしまうのです。それが溜まるまでの年月が二年なのです」
ということは、だ。
今十歳の俺はちょうど鑑定ができるということではないか。
好奇心と実益を兼ねて、クラリッサに相談した。
それを受けて、クラリッサが、リアの父親であるマリウス侯に伺いを立てた。
一応、もともとの予定では、王城に赴き、魔法属性の鑑定をしてもらうそうだったが、記憶喪失の一件で、どうなるか、と迷っていたらしい。
ただ、俺が魔法に興味を示したことで、それならば、と魔法属性の鑑定をすることが決まったのだ。
明日、マリウス侯爵が俺の住んでいる別邸に尋ねに来て、鑑定しても問題ないか確認しに来るらしい。
それが終わったら、一週間後に、鑑定ができるとのことで、非常に楽しみだ。
「どうしたのですか?お嬢さま」
ニマニマと笑みがこぼれていたら、クラリッサに不思議がられた。
今はクラリッサが持ってきてくれた食べ物を食べている最中だ。
以前は手ずから食べられていたそうだが、今の俺では難しく、クラリッサに食べさせてもらっている。
自分でできていたリア=ハウンゼン、すごい。
「魔法が鑑定できるのが待ちきれないんです」
「そうですね。私も楽しみです」
そう言って微笑みを浮かべるクラリッサ。
見えないけど、たぶん笑ってる。
「そういえば父上ってどんな人なんですか?」
「優しい方ですよ。ただ……いえ、詳しくは実際に会って感じたほうがよいでしょう」
その言葉に俺は、なんとなく嫌な予感を覚えた。
リアの父、マリウス=ハウンゼン。一体どんな人物なのだろうか。
「……ん?これはなんですか?」
「それは桃です」
前世含めて初めて食べたけど、美味しいなこれ。
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