第10話 守る覚悟

⸺⸺訓練場⸺⸺


 翌日から、騎士団宿舎での訓練が始まった。

 担当教官はラスさん。私的に話しやすくて助かる。


「オーウェンから君たちは優秀なステータスだって聞いてるけど、どんなに優秀でも最初の騎士の称号は“見習い”から始まる。ここだけは他の騎士団との共通事項だから、ごめんね」


「大丈夫です!」

 3人揃ってそう答える。


 その後、それぞれの戦闘スタイルを皆で把握する。これは、後々この同期3人でパーティを組んで任務をこなすことが増えるためだ。


 ブラッドは剣士。王都で活動している民間の魔物討伐ギルドで鍛え上げた、実戦経験豊富な前衛だ。

 私は魔双剣士。双剣に魔力を込めて戦う、どのポジションでもいける中衛。

 テオは魔道士。魔法杖を持ち、攻撃の黒魔法、回復の白魔法のどちらもこなす後衛である。


 それぞれバランスのいい組み合わせなことから、オーウェン団長がそこまで考えて同期を選出していたことが伺えた。


 この日はそれぞれの動きの確認と連携の練習を行い、翌日に実際に先輩パーティとの模擬戦を行った。

 それぞれ強豪揃いだったが、私たちは10戦中7戦勝利という好成績を収めてしまった。

 これにはラスさんから先輩方へ逆に指導が入ってしまい、私たちに負けた先輩方はリベンジに燃えていた。


 そしてラスさんから私たちの講評。

「みんな昨日の訓練だけで自分の役割をハッキリと認識し、まだ出会って数日とは思えない連携だった」


「ありがとうございます!」

 と、3人。私自身もそう感じている。

 ブラッドは私とテオの守りに専念しているため、私たちも安心して攻撃することができた。私は今回の勝敗を分けたのはそこじゃないかと思う。

 だって、負けた3戦は全部ブラッドを突破されたからだ。


 ラスさんが続ける。

「特にブラッド。君の2人を守ろうというすごい気迫を感じたよ。何か理由があるのかい?」

 その問いに、ブラッドは真剣な表情でこう返した。


「ガキの頃に俺の目の前で両親と妹が魔物に殺されました。もう目の前で大切な人を失いたくないです。だから、守ります」


「ブラッド……」

 私は自然と彼の名を呼んでいた。普段はあんなに陽気でおちゃらけているのに、彼にはそんな過去があったんだ。


「ブラッド、そうでしたか……」

 と、テオ。


「オーウェンからチラッとは聞いていたんだけどね。その想いが戦いにしっかりと活かせているようだね」


「団長には、去年一昨年と、面接で同じように伝えました。でも、去年までの実力では俺が犠牲になって終わると言われ、落とされました。今回も3戦は突破されました。次は、全部防ぎたいです」


「うんうん、良い目だ。なら、君はアタッカーじゃなくて思い切ってディフェンダーになるといい。具体的にはその剣に加えて盾を持つか、大剣に変えるか、だね」


「なるほど、考えてみます! ありがとうございます!」


 大切な人を失ったのは私だけじゃない。私はその時、初めてそんな当たり前のことを知ったのかもしれない。

 しかも私と違い、彼は前を向いている。魔物に対する憎悪や執着じゃなく、私たちに対する守る覚悟、それが伝わってくる。

 それに対し私は……。


 自分が情けなくなっているところへ、次は私への講評が始まった。


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