第2話 標的の男
登録用紙に必要事項を記入する。
⸺⸺騎士団入団届⸺⸺
名前『ルカ・エマーソン』
年齢『18歳』
性別『男』
出身『メドナ王国』
希望騎士団(5つの内、3つまで選択可能)
『白狼騎士団』
⸺⸺⸺⸺⸺⸺⸺⸺
私は正直にメドナ王国出身と書いた。これは女王陛下のご命令で、あえて書くことでスパイであるという可能性を薄れさせるためだ。
そして受付を通ると、“筆記試験”に“身体能力試験”を受ける。
この2つの1次試験を通過した人の中で、希望する騎士団の団長の目に止まった人のみが団長との面接を受ける権利を得られる。
第1希望の騎士団が拒否した場合は、書類が第2希望の騎士団へ回る、という具合だ。
つまり私は、試験に通過をしても、白狼騎士団の団長から声が掛からなければそれでおしまいというわけである。
任務もあったし、第2希望と第3希望も書いておけばよかったな……と、今になって不安になる。
1次試験通過者のリストが張り出され、私の試験番号は問題なく見つかった。
そりゃそうだ。こんなところで落ちる訳にはいかない。
この時点でロビーに溢れかえっていた殆どの人がロビーから姿を消した。
残ったのは500人程度。この中から、1つの団につき5人程が面接を合格して晴れて騎士団の仲間入りをするという訳だ。
⸺⸺
遂に面接試験に呼ばれた番号が貼り出される。
ドキドキしながらその紙を覗き込むと、白狼騎士団のリストに私の番号が見つかった。
「よしっ……」
思わずそう口に出る。すると、私の隣に居た人は番号がなかったようで、軽く舌打ちをしながら去っていった。
⸺⸺
私の面接の順番はなんと白狼騎士団の志願者の中で1番最後で、どういう基準で順番を決めているのかは分からなかったが、呼ばれるまで終始緊張しっぱなしでしんどかった。
「次、ルカ・エマーソン。入れ」
うわ、ヴァレンタイン将軍の声だ。あれ、ちょっと、イケボ……。
って、何言ってるのよルカ。相手は故郷の
私はキモおじがイケボを発している想像をしてしまい、軽く吹き出しそうになる。
「はい」
なるべく低めの声でそう返事をして、部屋へと入った。
「失礼します!」
深く礼をして、中へと進む。
「そう固くならなくていい。そこに座ってくれ」
「ありがとうございます」
私は一礼して、ヴァレンタイン将軍の向かいのソファへと腰掛けた。
「俺は白狼騎士団、団長のオーウェン・ヴァレンタイン。騎士の階級は大将だ」
「はい、わ……僕は、ルカ・エマーソンです。本日はよろしくお願いします」
私はその時初めて彼をまじまじと見つめた。
え?
すごいイケメンなんですけど……。
っていうか若くない!?
12年前って一体何歳!?
本当にあの時団長やってた!?
っていうかキモおじは!?
黒の短髪で爽やかそうに見えるから、若く見えるだけかな?
実はこれで45歳なんだよ~、とか言ってくれたら安心するんだけど……。
「よろしく……俺に何かついているか……?」
ヴァレンタイン将軍は戸惑っている。
はっ! 私ったら何のためらいもなくガン見し過ぎてしまった!
「い、いえ……すみません。その、大将で騎士団長様なのに……お若くてすごいなと……」
私がそう言うと彼は静かに笑った。
「若造ですまないな。だが、褒め言葉として受け取っておこう。ありがとう」
うわ……その困ったように笑う感じ……萌える……。
予想外の故郷の敵の人物像に、すっかりテンパってしまった私の、はちゃめちゃな面接が始まるのであった……。
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