クジラと共に私は彼と永遠に沈む

 私は満を持して彼の体内で意識だけを覚醒させて脳内へと直接語りかける。

「ねぇ……私の声が聞こえるでしょ……」

 彼は私の問いかけを無視した。

「どうしてそんなに可愛いの……顔の全部を剥いであげる……」

 彼は自分の身体に何が起きたか分からず理解に苦しんでいる。

「本当に身体が綺麗だね……ぐちゃぐちゃに裂いて傷痕を刻まなきゃ……」

 彼の鈍い思考は私の声に気が付いた。

「上手じゃん……苦しみに歪む表情をもっと見せて……」

 彼は過呼吸におちいっている。

「締まりが凄い……内臓を全部取り出したからね……」

 彼は頭を乱雑に掻きむしって意味不明な言葉をわめき散らし、発狂寸前まで追い詰められているようだ。

「大好きだよ……目障りな女はもう存在しないよ……」

 彼の思考が停止し呼吸が止まった。

「ねぇ……私と永遠に沈んで……」

 彼はを愕然がくぜんとなり絶望した表情を更に歪め、顔面から崩壊して永遠に沈んだ。

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クジラと共に私は彼と永遠に沈む 川詩 夕 @kawashiyu

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