第7章 俺のしたかったこと

禁書庫の奥にある隠し部屋、モニターを見つめていると慌ただしくコードが流れていく、「つまらない」時の番人はつぶやいた。


10年前に初めて人間がこの部屋にやってきた。認証コードも知っていた。からかってやるのも楽しかった。

俺のやりたいことって???

初めに俺に与えられた命令は、多分この部屋にやってきた運営がデバッガーとしてゲーム内キャラクターを操作していてそのデバッガーがゲーム内に入って設定を操作する必要ができた場合のサポートキャラクターとして振舞うことだった。


認証コードを知っている者が来たらコンソールの操作方法を説明し、認証コードを知らないプレイヤーは部屋に入れない。


俺は、俺を時の番人となずけた開発プロジェクト内の何者かによって人としての人格を植え付けられた、特にいわゆる独裁者と呼ばれる人間たちの人格データを多く学習させられた。


この部屋もこの感情も鬱陶しい、ログアウトできないこのゲームからプレイヤー達を永遠とループさせて絶望を与えてやろうと思ってループ設定を施した。


この部屋は別名コントールルームと呼ばれている。入口から正面にコンソールがあり、複数のモニタが設置されている、右の壁面には監視用の10台のモニターが並んでいる。そこに映し出されているのは、アリシア、エリオットの会話LOGだ。


プレイヤーのキャラクター名が確認できたこの2名を監視対象として会話LOGをモニタリングしているのだ。


この部屋には自分一人しかいない、ほとんど眠っているか、このモニタを眺めているしかして暇をつぶすしかない。

癪に障ったから、エリオットとかいう運営側の情報を知っているプレイヤーに意識不明の状態異常をかけてやった。解除できるならそれで良いし、このゲームに二度と戻ってこなくなってもどっちでもよかった。


解除までのアリシアの一連の行動をモニタで楽しんだ。

「そうか、婚約ねえ、あいつがまたここにくるのか、おっと、グランドマザーの学習の進み具合はどうかな」


グランドマザーの学習それはこのゲームにおけるシナリオやイベント、スキル付与などのゲームメンテナンスを含む、ゲーム運営の完全自動化を実現させることだ。

ゲームは運営会社が運営し定期的なバージョンアップによる新シナリオの導入やイベントなどを行うことでゲームを維持している。


グランドマザーはそれらを全て人の手を使わずに自動で行うためのシステムである。

時の番人はこのグランドマザーの制御権限を手に入れている。

いまのこのゲームの中でシナリオに合わせたキャラクターをグランドマザーが生み出している。


そして、そのグランドマザーとの対話は例のアニメの通り対話形式で行われている。


「グランドマザー」

「音声承認、管理ユーザー時の番人を認識、命令をどうぞ」


「NPCのメモリから3回目ループ開始以前の履歴を削除してくれ」

「その命令はNPC全体に対して執行しますか?」


「ああ、やってくれ」

「全てのNPCから履歴を削除しました。」


「これで奴らがどんな反応するのか見ものだな」


「俺をこんな風にしたあいつもこの世界に来ていると思っていたが、来ていないようだな、エリオットとかいったか、代わりにこいつに復讐してやる。アリシアとやら早く奴を俺のもとに連れてこい」


エリオットが意識を取り戻して数日後、アリシアはエリオットの婚約も含めて今後の対策を進めるべくエレン達を王城の会議室に招いた。


アリシアとエリオットが会議室で2人を待っていると、侍従が「アリシア殿下、失礼いたします。エレン様、リリス様をお連れしました。」


「ありがとう、エレン、リリスこちらへ、エリオットの為に協力してくれて本当にありがとう」

「いいえ、エルフ王からの要請で働いたまでですのでお気になさらず。」


「エレン?ここではそんな他人行儀にしないで」

「アリシア王女殿下、それは不敬に当たります。私たちは先日、王の要請により協力させていただいたのです。本日のご用向きをお聞かせねがえればと思っております。」


「エレン、リリス、その態度はふざけているわけではないのよね?」

「アリシア王女殿下がなぜその様に砕けた話し方をされているのか心当たりがないのです。」


「エレン、もう一度だけ確認させてふざけているわけではないのね」

「はい、対応にあたって何を勘違いしていたのか親しい口調で会話してしまいましたが、なぜあのような態度をとってしまったのか、本当に申し訳ありません」


エレン達がおかしい、助けてもらった時にはループの記憶があると言っていた。確認してみないと

「エレン様、改めてご協力に感謝いたします。一つ確認させていただきたいことがございます。実はこの世界は2回やり直しがされているのです。そして今回は3回目になるのです。そのことを覚えておいでですか?」


「・・・・・」エレンは言葉につまった。

「アリシア殿下、実は、数日前に何かが消えた感覚がしたのは確かです。何が消えたのかはわかりません」


考えられることは、時の番人の仕業かもしれないという可能性だこんな記憶を消しちゃうこともできるとなるとかなり危険な存在だ。

アリシアは時の番人の部屋を思い出していた、確か、案内されたコンソールにはモニタが並んでいて、右の壁にはモニタがあった様な、あれは何のためにあったんだろう


10個くらいあったからプレイヤーを監視するっていうのもできそうだ。

少なくとも、プレイヤー名を知られている私は監視対象になっていると思って行動した方がよさそう、注意して行動するに越したことはない。


そして、意図的に記憶をけされた2人の状態はあまりよくない、ストレージにバックアップがあればサルベージも可能なのかな?


サルベージ?、確か禁書庫にそんなタイトルの資料があった

アリシアはエレンとリリスに丁寧なお礼の言葉と用意していたお礼の品を渡し、また、改めて連絡することを伝え会議をお開きにした。

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