第5章 手がかりを探して
最後に入室したのは5年も前か懐かしい
この部屋の鍵は、国王と皇太子である兄しか持っていない、そのうちの一つを兄から借りている。
禁書と言っても、ここにある本はこのゲームの進行上のヒントをまとめたものが資料として保管されているだけだ。
なんだろ、毒?呪いの類なの、兎に角まずはヒントになる資料を探さないと
「ジャスティン、フェリシアあなた達はここで待っていて、これ以上先にあなた達を入れるわけにはいかないの」
フェリシアはうなずき、ジャスティンは「心得ています。王女殿下、私どものことは気にせずゆっくり見てきてください」と答えた。
「ありがとう助かるわ」
図書館の奥、隠し階段を下りた先の扉の前で2人には待ってもらう
ここまで来る途中で、フェリシアにはメモの取れる便箋の様なものと、ペンを用意してもらった。
「回復、治癒」というタイトルの資料を探してみた。
ついでに「基本操作」と言うタイトルの資料も見てみることにした。
資料が大量にあるので、凄く大変な思いをしたが、例の隠しスイッチの近くで「回復、治療」
「これだわ!」
アリシアは本を開き、現代のマニュアル風に書かれたその本を読み始めた。
そして、エリオットの症状に似た特徴に対する対応方法について、改善するためのヒント、状態異常解除ポーションの材料や作り方が詳細に記されていた。
症状として意識がないだけしか書いてないけどこの症状であっているのかな?
症状:状態異常
意識がない
※意識がない状態が1か月続いてしまうとゲームオーバーとなりそのキャラクターは使用不可となる。
状態異常解除ポーションの作り方
材料:
エルフの涙(希少なエルフの涙という植物の樹液)
魔法のハーブ(禁断の森で採取)
竜の鱗(ドラゴンの巣で入手)
聖水(神殿で祝福を受けた水)
作り方:
エルフの涙を聖水に混ぜる。
魔法のハーブを細かく刻み、混合液に加える。
竜の鱗を粉末状にし、最後に加える。
全ての材料を混ぜ合わせ、魔法の言葉を唱える。
「これでエリオットを救えるかもしれない!」
このクエストみたいのクリアできるの?
この世界魔法使えるっけ?
とりあえず、必要な素材と場所の情報はメモしてと、前回、前々回ではエルフの仲間がいたけどこの世界ではまだ出会ってもいないじゃない
エレンとリリスに会って協力を求めたいわね、協力してくれるかな
少し年齢的に問題あるかもだけどそうも言ってられない。
すぐにでもエレンに会わないと
竜の鱗って簡単に手に入るのかしら?
竜の鱗
西の森にある竜の洞窟に住んでいるドラゴンの巣から入手可能
西の森の近くの町の道具屋でまれに購入することができる。
道具屋でも売っていることがあるのね、助かる
アリシアは、禁書庫を後にした、そして皇太子の執務室に向かい約束通り、閲覧した資料の一覧を渡しその内容を簡単に説明した。
「私はあまり禁書には興味がないが、その様なことが書いてあるのだな、それで役に立ちそうか?」
「はい、お蔭さまで助けることができるかもしれないという希望が生まれました。」
「それは良かった、エルフ族に助けを求めるのであろう?では、私からも協力をお願いする書簡を書こう、それを持ってエルフの国に行きなさい」
「ありがとうございます。お兄様」
「気を付けて行け、ジャスティンは武芸に長けた部下なのでそのまま同行することを許す。」
「何から何までありがとうございます。お兄様」
「気を付けていけ、ジャスティン、妹を頼んだぞ」
「かしこまりました、王女殿下をお守りします。」
アリシアは、今世ではまだ出会っていないエレンとリリスに協力を求めるべく、エルフの国に向かうことにした。
一応、私も王族だからエルフの国では国王にご挨拶しないとね
エレンとリリスは学園で一年間仲良く過ごした仲だけど実家のことはよくわかっていない。
そもそも10歳のこの時点でNPCである2人が存在するのかも疑問ではある。
一般的な知見を語るなら、ゲームのリリース時にNPCは存在しているはず、プレイヤーも赤ん坊から生まれるくらいで
自我を獲得している彼らはこのゲームの中で自分の意思で自由に生きていると考えた方がよい。
兄や両親の様に王族らしく振舞っているし、ジャスティンやフェリシア、ルビクス伯爵もそうだ自分の考えで行動していることが手に取る様にわかる。
だから、エレンやリリスに会うのも慎重に進めなければならない
まずは、兄からもらった国王への協力のお願いをするのと、エレンとリリスの所在を突き止めるのが先決ね
エルフの国に到着すると、アリシアたちは国王に謁見するための手続きを進めた。エルフの国の宮殿は美しく、自然と調和した建築が印象的だった。
「アリシア王女殿下、国王がお待ちです。」案内役が丁寧に言った。
アリシアは深呼吸をしてから、国王の前に進み出た。「国王陛下、リヴァニア王国のアリシア・リヴァニアと申します。お初にお目にかかります。」
アリシアは兄から預かった親書を侍従に渡しながら口を開いた「今日はお願いがあって参りました。」
国王は優しい笑顔でアリシアを迎えた。「アリシア王女殿下、ようこそ。我が国へようこそ。お願いとは何でしょうか?」
兄からの書簡を読み始めた国王に対して、エリオットの状況とポーションの材料について説明した。「エリオットを救うためには、エルフの涙が必要です。どうか私にお力をお貸しください。」
国王はしばらく考えた後、頷いた。「いいでしょう、分かりました。エルフの涙を提供しましょう。また、あなたの国の学園で学ばせることになっているエレンとリリスを紹介します。この子たちは我が国の有力貴族のご令嬢達です。アリシア様のお役に立つかもしれません、歳はあなたと同じ10歳になるので話しやすいでしょう」
国王の指示で、エレンとリリスが呼ばれた。二人は驚いた表情でアリシアを見つめた。
「アリシア、どうしてここに?」エレンが尋ねた。
「えっつ あなた私のこと知っているの?」アリシアは驚いて尋ね返した。
「アリシア、驚かないで聞いて、実は私たちエルフ族は全員、過去二回のリヴァニア王国崩壊に起因する世界のやり直しの記憶を持っているの、2回目の時は初めてのふりをさせてもらったけどあの時は再会がとても嬉しかった。今世では、このタイミングでエルフの国に訪れて、エリオットがいないけどまさか、エリオットに何かあったの?」
アリシアは目に涙を浮かべながら訴えた
「その積もる話は、時間がある時にお願い、エレン聞いて、エリオットが意識を失ってしまったの。このまま放っておくと、1か月持たないかもしれない、彼を救うために、あなたたちの協力が必要なの。」
リリスは真剣な表情で頷いた。「もちろん協力するわ。私たちで材料を集めましょう。」
エレンも同意した。「私も手伝うわ。エリオットを救うために全力を尽くす。」
アリシアは感謝の気持ちでいっぱいになった。「ありがとう、二人とも。本当に助かるわ。」
エレンとリリスはそれぞれの得意分野を活かして材料を集めることにした。エレンはエルフの涙を手に入れ、リリスは魔法のハーブを探すために禁断の森へ向かってくれた。
アリシアはリヴァニア王国の城に戻り、竜の鱗を手に入れるための情報を集めることにした。彼女は西の森の近くの町にある道具屋に手紙を書き、竜の鱗が手に入るかどうかを確認した。
数日後、エレンとリリスがそれぞれの素材を持ってアリシアを訪ねてくれた。
「エルフの涙を手に入れたわ。」エレンが誇らしげに言った。
「エルフの涙って植物の樹液なんだけどなかなかエルフの涙が見つからなくて苦労したわ」
「魔法のハーブも見つけたわ。」リリスが微笑んだ。
アリシアは感謝の気持ちでいっぱいになった。「本当にありがとう。これでエリオットを救うためのポーションが作れるわ。」
最後に、道具屋からの返事が届いた。幸運にも、竜の鱗が手に入ることが確認できた。
「これで全ての材料が揃ったわ。さあ、ポーションを作りましょう。」
アリシアは資料に書いてあった方法でポーションを作り始めた。魔法はリリスにかけてもらった。
「ありがとう、みんなの協力のおかげでポーションが完成したわ」
アリシア達は完成したポーションをエリオットに飲ませるために彼の屋敷に向かった。
そして自室で寝ているエリオットに飲ませた。
「エリオット、このポーションを飲んでみて」
しばらくすると、エリオットの目がゆっくりと開かれ意識が徐々に戻り始めた。
起き上がろうとするエリオットを寝かしつけて、「20日間も眠り続けていたのだから無理に起きてはだめよ、まだ寝ていて」
「アリシア…ありがとう…」エリオットは弱々しく微笑んだ。
「エリオット、よかった…本当に…」アリシアは涙を流しながらエリオットの手を握りしめた。
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