第4章 エリオット喪失

時の番人の話をエリオットに話、エリオットを禁書庫に連れて行く方法を模索しつつも解決の糸口がつかめないまま5年が過ぎた。

エリオットとは5歳で出会って2回の王国崩壊を共に経験した、そして3回目の今回もまた巡り合えた。

少しだが、エリオットのリアルの情報も聞けた、その情報から、彼は異世界に行ための研究をしていたお隣さんではないかと考える様になっていた。

まだ確信は持てないけど多分、エリオットはお隣の阿久津さんだ、プロジェクトのメンバーならユーザーとしてトライアルに参加することもあり得るし、でもオンラインゲームでリアルの情報を聞くのはチョットと言う思いがあり本人に確認することができないでいる。

オンラインゲームの中では、同一ギルド、同一パーティならオフ会で知り合うって方法もあるけど、このゲーム、ユーザー間のコミュニケーション手段がゲーム内でリアルに手紙を送るか、会って話すしかないのよね、許嫁というゲーム内設定が逆にそう言った確認を困難にしている。アバターがリアルの顔再現していたらすぐわかるハズだけど


そしてこのゲーム、こう言う、フレンド間でDMを送るみたいな機能や運営に連絡する機能がないところも、前世の記憶を持って異世界に転生してしまったと錯覚できるところなんだよね

もし、エリオットが阿久津さんならログアウトする手段を知っているのかなあ


でも、知っているなら最初に会ったときに教えてくれているはずよね、彼でもゲームから抜けることができないと考えるのが自然の様だ


そして、アリシアが自分の部屋でループの条件を整理しているとアリシアの専属侍女が部屋を訪れた。

コンコン「アリシア王女殿下、フェリシアです。」

「どうぞ」

ドアをあけフェリシアが入室してきてお辞儀をした。「失礼いたします。先ほど、エリオット様のお屋敷の方からお手紙が届きました。こちらです。」

フェリシアは手紙をアリシアに渡して横に控えた。

アリシアは、受け取とった封筒を開封して手紙を取り出した、読んでいくうちにみるみる顔が青ざめていった。

「アリシア王女殿下、如何なされました?、ご気分がすぐれないのですか?」

「えっ、なんで、こんなこと今まで無かったのに」

「殿下、エリオット様になにかあったのですか?」

「フェリシア、どうしたらいいのエリオットがエリオットが朝食のあと、倒れそのまま意識が戻らないだって」

こんな展開、今まで無かったのにどうして?

「殿下」

「フェリシア、エリオットのところに行くわすぐに支度を」

「はい、かしこまりました。すぐ手配いたします。」


アリシアはフェリシアと数名の護衛を伴い、エリオットの所に向かった。

5歳になってエリオットを許嫁として紹介されたのが5年ほど前の話だが、前回も前々回もこんな展開は一度もなかった。


エリオット邸に着くと彼の両親と執事、侍女たちが出迎えてくれた。

「アリシア王女殿下、お越しいただきありがとうございます。今朝、朝食の後、急に倒れてしまい、もう何が何だかわからないのです。」

「ルビクス侯爵様、医者はなんと言っているのですか?、エリオットに会わせていただけますか?」

「はい、もちろんです。エリオットも喜びます。医者の見立てでは何か毒物によって仮死状態に陥っているのではということなのですがその毒がなんなのかわからないと」


アリシアはフェリシアを伴い、ルビクス伯爵と共にエリオットの寝室へと向かった。

「医者が特定できない毒物ですか?」

「はい、特定できないと言っておりました。」


寝室の扉を開け、エリオットの寝ているベットの脇にひざまずいて手を握りアリシアはエリオットに語り掛ける。

「エリオット、エリオット、目を覚まして、お願い」

後ろからそばに立っていた医者が申し訳なさそうに説明を始めた。

「アリシア王女殿下、失礼いたします。エリオットさまの状態についてご説明させていただきます。伯爵さまには先ほど何らかの毒ではないかとご説明したのですが、実際には毒が原因なのかもわからないのです、申し訳ありません、王室の管理する図書館に行けばこの症状に該当する原因と対応方法が見つかるかもしれません、いまの私の知識ではこの症状に該当する原因を特定することができません」


そういえば、禁書庫になんでも治せる万能ポーションの作り方が書いてあった様な

「それで、エリオットはこの後、どうなってしまうの?」

「殿下、侯爵さま、申し訳ありません、私にもわかりません、この先、この状態がいつまで続くのか、回復なさることができるのか、わからないのです。」

「わかりました。治す方法があるかもしれないと言うのならば、私は出来うる方法を試します。」

「アリシア王女殿下、お気を落としませんように、必ず何か方法があります。」

「フェリシア、ありがとう」

「エリオット様は侯爵さまにお任せして、殿下、城に戻りましょう」

「エリオット、私が絶対助けるから待ってて」

阿久津さんどうしちゃったの、このゲーム、ゲーム内で死んだらどうなってしまうのかな、ループの巻き戻りではゲームスタート時点から全てやり直し見たいだけど

途中でプレイヤーのキャラクターが死んでしまったら、どうなるの?


そういえば、阿久津さんが話してたっけ、「ラノベの世界では異世界に転生するトリガーって、現実世界に未練を残して死ぬとか、創造神が誤って殺しちゃうとかなんだよね、実験で試せないのが辛いよね」

今のところ、現実に戻る方法が見つかってないけど、私は本当にこのゲームで異世界転生を味わっているんだよね


フルダイブ型のVRデバイス、実現したらこんな世界が広がるんだ、好きな小説のキャラクター達の人格を学習させれば自分で書いたファンタジーを実体験できるんだ、阿久津さん凄い

ゲームの設定上、エリオットがこのまま意識を取り戻さない又は、死んでしまっても、17歳で王国が崩壊するば、4回目のループが始まるはずなんだけど


この選択肢は、両方とも選択したくない

城に帰る馬車のなかで、アリシアは試案していた。

「お嬢様、どうなさいました、エリオットさまのこと心配ですよね」

「そうね、お城に着いたらお兄様にお会いするように手配して」

「承知いたしました。」


皇太子の執務室の前で、ドアをノックした。コンコン「アリシアです。お兄様いらっしゃいますか?」

「おう、アリシアか入ってくれ」

「ありがとうございます。失礼します。」

「今日は、どうしたのだい、急な用があると聞いているが、エリオットのことかい?」

「はい、お兄様のお耳にも入っていると思いますが、エリオットが意識がないまま眠り続けているのです。」

「その話は聞いている、それで私に話とは何だい?」

「はい、私にお兄様の持っている禁書庫へ入室できる権限、鍵をお貸しいただきたいのです。」

「それは、アリシアが一人で禁書庫に入りたいということで間違いないのかな?」

「はい、その通りです。」

「アリシア、それは申し訳ないが許可できない」

「どうしてです。」

「君もわかっていると思うが禁書の閲覧は王家の直系にのみ許されているんだ、5歳のとき許されたのは私が同行したからだよ、わかるよね」

「はい、それはわかっているのですが、禁書の閲覧にお兄様の大事な時間を割いてしまうのが申し訳ないのです。」

「そういう理由であれば、この条件でなら鍵の貸し出しを許可しよう」

1.私の信頼できる部下を禁書庫前に置く

2.読んだ禁書のリストを作成し報告

3.その禁書に書いてある内容を簡単に報告

「以上が守れるなら、鍵を貸してあげよう、この条件を破ったら3か月の自室での謹慎と禁書庫への入出を金輪際認めない、これでどうだろう」

「ありがとうございます。この条件お受けします。」

「では、これを、私の部下は一旦君付にしてくれ、その方が一々呼びに来なくて良いだろう」

「ありがとうございます。お兄様」

「紹介しよう、私の部下のジャスティンだ。」

「ジャスティン、この子は私の専属侍女のフェリシアです。これからよろしくお願いいたします。」

「殿下、お供いたしますのでいつでもお申し付けください。」

「ジャスティン、早速で申し訳ないのだけど今からよいかしら」

「はい、お供します。」

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