第1章 エタノールワールドへようこそ

トライアルリリース開始当日、開始時間にゲームを始めた、このゲームは時間間隔もバグる様だ、目を開けると視界はぼやけ自分は「オギャー、オギャー」と泣いている。

そう、声にならないのだ、すると若い女の声で「お妃さま、おめでとうございます。元気な女の子でございます陛下とお妃さま似ておられて大変凛々しく有らせられますよ」

「ああ、フェリシア、我が子の顔をよく見せて頂戴」ああこのメイド服の人フェリシアって言うんだ


ゲーム開始した直後、私は王家の長女として生まれた。らしい

なんじゃこのゲーム最初、赤ちゃんから始まるなんて、自分に魔力の気配もなく、しゃべろうとしても泣き声になるだけ、やることがない

両親も王様とお妃さまなんだけど、NPCらしくない物言いとしぐさ、王族の威厳さえ感じる。


名前も性別も勝手に決められた、私はアリシアというらしい正しくは「アリシア・リヴァニア」性別は女でリヴァニア王国の王女、プレイヤーの私も女なので特に問題はない・・・のだが

ちょっと待ってメニューってどうやれば開けれるのよ?ログアウトできないのだけど?腕を自由に操作できないし、声も発生できないからメニューを開くことができない。

そう言えば、マニュアル見てなかったけど、このゲームから抜ける方法ってどうするのよ。アリシアは仕方なく流れに任せることにした。


アリシアには王位継承権を持つ兄がいる。このゲームの性質上、リリース開始当初から始めたプレイヤーは例外なく生まれた直後から始まる、それを考えると自分より年上のキャラクターはNPCの可能性が高い、ゆえに兄はNPCと考えて間違いないだろう。


とりあえずゲームから抜けることができない、はあ、運営にも連絡取れないしどうすればよいの?


赤ちゃんの体に18才の女性の記憶?自我?を持っているって正直にいってクソゲーだ、言葉を吐いても相手が認識できる言葉を発することがではない。

これでは意思疎通もままならない、改めて赤ん坊って大変なんだそう実感した。


そしてゲーム内の時間で4年が過ぎ、自分の意思で自由な行動ができない赤ん坊時代を何とか無事過ごすことができた。

言語習得レベルがあるらしく徐々に鳴き声が言葉に変化してまともなコミュニケーションができるようになったのは4歳を過ぎたころだった。

言葉が喋れる様になった時に知りえる限りの呪文を唱えてみた。時には空に向かって指で操作したりもしてみた。

「メニュー!」反応なし

「ステータスオープン!」反応なし

「ステータス!」反応なし

「メニュー、メニュー、メニュー」泣きながら叫んだ!

「ステータスオープン!、ステータスオープン!、ステータスオープン! なんで開かないのよ」

きつかった、このゲーム経験値とかヒットポイントとか確認できないの?この時アリシアは自分がゲームの中にとらわれてしまったとこを改めて理解した。


乳母、侍女に面倒を掛けながら順調に育ててもらっていた、アリシアは5歳の誕生日を迎えた。

そして、将来の伴侶、許嫁として同い年の男の子、エリオットを紹介された。

エリオットもプレイヤーの様だ、試しにNPCのいない場所で聞いてみた、「エリオットさん? ログオフってどうすればできるんですか?」


「アリシアさんもログオフできない? それとこのゲームのNPCってリアルすぎて怖くないですか?」

「それ思います。ゲームではなくてリアルにこの世界にいて、自分が本当にこの国の王女様って感覚になるの」


アリシアとエリオットはこの世界で幼馴染の許嫁どうしとして交流を深めていった。

エリオットのこの世界での身分は侯爵家の長男で、父親はリヴァ二ア王国の宰相を務める名家だった。

アリシアもエリオットもプレイヤーが操作しているゲーム上のキャラクターのはずだったが、ゲームへの深い没入感から、自分たちのことをラノベで良くある前世の記憶を持ったままこの世界に転生を遂げた主人公の様に感じる様になっていた。


王女として教育を受け、育てられたアリシアは王女として振る舞うことが日常となりプレイヤーだった記憶は前世の記憶と考える様になっていた。


エリオットも許嫁として行動を共にすることが多くなり、16歳になった年に2人は国立の教育機関で共に学ぶこととなった。


入学の式典では新入生代表として挨拶した。

「尊敬する学園長先生、教師の皆様、そして新入生の皆さん、本日はこのような素晴らしい機会をいただき、心から感謝申し上げます。私はリヴァニア王国の王女、アリシア・リヴァニアと申します。この学園に入学できることを大変光栄に思います。私たちはこれから、多くのことを学び、成長していくことになります。この学園は、私たちに知識と技術を授け、未来への道を切り開く力を与えてくれる場所です。教師の皆様のご指導のもと、私たちは自らの可能性を最大限に引き出し、社会に貢献できる人間へと成長していくことを誓います。

また、共に学ぶ仲間たちとの出会いも、この学園生活の大きな財産となるでしょう。互いに助け合い、切磋琢磨しながら、素晴らしい友情を築いていきたいと思います。最後に、この学園で学べることへの感謝の気持ちを忘れず、日々努力を重ねてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。」


学園の入学式も無事終わり各クラスに移りホームルームの後の休み時間に話かけられた。

「アリシア王女殿下 私はエルフ族のエレンと申します。素晴らしい挨拶で感動しました。」

彼女は耳のとがったエルフ族だ、「エレン様、初めまして、お褒めいただき光栄です、これから仲良くしていただけると嬉しいですわ、こちらは私の許嫁のエリオットです。」エリオットを許嫁として紹介してみた。

「エレン様、お初にお目にかかりますエリオットと申します。以後お見知りおきを」

「まあ、素敵な許嫁がいらっしゃるのですね、羨ましいですわ」

「エレン様、今後、私のことはアリシアと呼んでいただきたいです。」

「わかりました、アリシア、では私のこともエレンと呼んでください。」

「では、エレン、これから先、あなたといつまでも友達でいられますようによろしくお願いいたしますね。」


2人とも貴族の振る舞いが板についてきた。

それにプレイヤーが操作しているのは人間族だけと認識しているので(トライアルダウンロード画面の注釈にはプレイヤーは人間族にしかならないと書いてあった気が)、このエルフ族のエレンはNPCだ、しかし振る舞いはNPCには見えない自然なコミュニケーションができている。


「エレン、王位は兄が継承するので、私は他家に嫁ぐ立場です。政略結婚ではありますがエリオットとは長く一緒に過ごしてきたので、結婚が当たり前の様に感じています。」

「私から見てもお二人は、お似合い思いますわ」

「ありがとうございます。その様に言っていただけると嬉しいですわ」


この会話がきっかけとなり3人はで昼食を食べるような仲間になった。

「アリシア、今日は私の友人を紹介したいのです。」昼休みに入り、いつも3人で昼食をとっている場所に移動しようとして時にエレンが話を始めた。

「エレンのお友達なら大歓迎ですわ、ぜひ紹介してくださらない」


エレンは入り口付近で待っていた友人に声をかけた「アリシアありがとうございます。リリア、こちらに来てくださらない?」


「アリシア、エリオット様、紹介しますわ、私の幼馴染のリリアです。彼女は魔術教課程のSクラスなのでクラスが違うのですが今後仲良くさせていただけたらと声をかけたのです。リリア、自己紹介なさって」


「お初にお目にかかります。アリシア様、リリアと申します。エレン紹介してくれてありがとう。」

リリスはエルフ族の中でも特に優れた魔法使いで、長い銀髪と深い緑色の瞳を持ち、冷静で知的な雰囲気を漂わせています。

彼女はエルフ族の中でも特に高貴な家系の出身で、そのために高い魔法の才能を持っています。

リリスは幼い頃から魔法の訓練を受けており、特に治癒魔法と自然魔法に長けています。彼女の性格は穏やかで優しく、困っている人を見過ごせないタイプです。しかし、戦闘時には冷静かつ的確な判断を下し、仲間を守るために全力を尽くします。


「まあ、リリス様、ご挨拶ありがとうございます。私はアリシアと申します。ぜひ、仲良くしてください、こちらはエリオットです。」

「リリス様、初めましてエリオットと申します。よろしくお願いいたします。」


「では、挨拶も済んだことですしお昼を食べに行きましょう」エレンは微笑みながら歩き始めた。


普通教養課程では、座学の他に剣術の実習があった、エレンとエリオットは剣術の実習コースを選択していた。アリシアは政治経済コースを選択していた。

そしてエレン、リリア以外にも友人ができた、人間族のボルトはエリオットと共に剣術実習コースで技を競い合う仲間だった。

ボルトは人懐こい性格でいろんなことをなんでも良く聞いてきた。

アリシアは剣術の稽古をしているエリオットとボルトに声をかけた、「2人とも剣術の稽古ですか?どちらがお強いのかしら」

「アリシア、それは僕の方が強いに決まっているだろう、僕は君を守るための努力は怠っていないつもりだよ」

「まあ、エリオットったら」

「アリシア様、エリオットの言う通りです。私ではエリオットにかないません」

「うれしいわエリオットいつも私の為にありがとう」

「私の大事なお姫様、あなたの騎士として一生を捧げる覚悟はできているつもりです。」

アリシアは頬赤くして照れ笑いした。


そして5人で過ごす楽しい時間は流れ、2年生に進級した。

「私の誕生パーティをお城で行うので皆さんにも来ていただきたいのです。」

5人がそろっている昼食の席でアリシアが言った。

「ご招待感謝します。」4人はそろって返事をした。

ある日、アリシアはリリスに声を掛けられたそれは、リリスの使役する精霊が未来に不穏を感じているというものだった、ただ、精霊は何がいつ起こるという詳しい内容はつかむことが難しくとにかくリリスに危険が迫っているとのことだった。


その悲劇は誕生パーティ当日に起こった。

国王、王妃、皇太子、アリシア、エリオット、エレン、リリア、ボルトは大きなテーブルを囲みアリシアの誕生日をお祝いしていた。

「今日、この特別な日に、アリシアの健康と幸福、そして成功を心から祈っています。アリシア、あなたがこれからも多くの人々に愛され、尊敬される存在であり続けることを願っています。お誕生日おめでとう、アリシア。」

国王がアリシアに祝辞を述べ終わったその時、ボルトの体が急に光に包まれ激しい爆音と共にパーティ会場が跡形もなく吹き飛んだ。この日、リヴァニア王国は崩壊した。

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