第4詩 【天然の歓声】


  (ちゃつぼに おわれて ドッピン しゃん!)



いま この懐かしい 運命の響きと


わたしは 出会う


ハンモッグの上で 少年時にやさしく


母の手で ゆすぶり起こされた あの日のように



  (勝って うれしい はないちもんめ!)



ああ だが……


なんという目覚めであったろう


鯉のぼりの遊覧する 五月の風の中で


わたしは 幼年時代に さかのぼり


一人の少年と 出会う



  (おまえの かあちゃん でべそ!)



この少年は どうだろう


見れば


春のチューリップのように 愛らしい



近づいてゆくと


夏の入道雲の真下にひろがる


ひまわりのように 輝かしい



面と向かうと


秋の稲穂をつっぱる


野分のように 果敢(かかん)だろう



競え合えば


冬の軒先の氷柱(つらら)のように


まっしぐらになって 走るだろう



  〈もう ふたたび

   渦潮には 呑まれまい……〉



杉山の緑を吹き渡って来る


青嵐の中に


鯉のぼりは 豪放に波打って


とたんに 龍に変化し


鱗をまとった 緑の渦となる



いつの間にか 少年は龍の子太郎となって


龍にまたがり 空を飛翔(かけ)てゆく


手に持つ でんでん太鼓の音が


雲を越えて 空に響いてゆく



  (あした てんきに なあれ!)



こんな 私とも少年とも 龍の子太郎ともつかぬ


天然の歓声が


どこから響いてくるのだろう……

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