第9話:さらに奥へ、未知の領域
激闘の余韻がまだ体に残っている。筋肉は限界を超えて悲鳴を上げ、痛みが全身に広がっているが、それでも俺は歩みを止めなかった。心の中には、決して折れない意志が灯っている。
「まだだ……まだ進める……」
俺は自分の拳を見つめ、震える手を抑え込もうとした。加速スキルを酷使しすぎた体に負担がかかっているのは明らかだ。それでも、そのことを認めるわけにはいかない。俺はさらなる強さを追い求めてここまで来たんだ。
「限界なんて……俺には関係ない」
この言葉は、誰かに向けたものではなく、自分への挑戦だ。体は限界に近づいているかもしれない。それでも、俺の心はまだ折れていない。限界を感じるたびに、それを超えてきた。それが俺の生き方だ。
今、目の前に広がるのはこれまでのダンジョンとはまったく異なる「領域」。黒い霧に包まれた通路、冷たい空気が俺の背筋を這い上がる。誰も足を踏み入れたことのない未知の空間だ。
「これまで以上に危険だということか……」
俺は冷静に受け入れながらも、胸の中で高まる興奮を感じていた。恐怖ではない。むしろ、この先に待っている強敵との対峙に対する期待だ。孤独な戦いを続け、限界という壁を幾度も打ち破ってきた。その度に、俺は強くなってきたんだ。
「誰も、俺を止められない」
そう信じている。体が悲鳴を上げようが、心が折れない限り、俺は進む。未知の領域に足を踏み入れた瞬間、周囲の空気が一層重く冷たくなり、前方に広がる暗闇の奥で何かが潜んでいる気配を感じた。だが、それが何であろうと、引き返すことはあり得ない。
「これまでと同じだ……ただ進めばいい」
自らに言い聞かせる。限界を超えるたびに虚無感が募っているのは知っていた。俺は強さを追い求めてきた。それが俺の目的だ。だが、その強さが本当に何を意味するのか……最近、その問いが重くなりつつある。
「俺は……何を追い求めているんだ?」
心の奥に芽生えた問い。それを無理やり打ち消し、俺はさらに奥へと進む。限界を越えた戦いの先に答えがあると信じて。だが、次第に、疲れ切った体がその問いに対する答えを出せずにいることが分かってきた。
足元に伝わる不気味な感覚。まるで地面が脈打っているかのようだ。前方からは低く唸る音が聞こえ、その音が緊張感をさらに高める。
「これが、次のステージか」
拳を強く握りしめる。俺はこれまで無数の敵を倒してきた。そして、そのすべての戦いを超えてここまで来た。次に待ち受けるものが、過去の戦いを超えるものであることは確実だ。
「限界などない。俺は……さらに強くなる」
その言葉を心の中で何度も繰り返す。体はすでに限界に近いが、それでも俺は進むことを選ぶ。
ついに未知の領域の最深部に到達した。目の前には巨大な門がそびえ立ち、脈動しているように見えた。その門は何か恐ろしいものを封じ込めているかのようだった。
「ここか……」
俺は一瞬足を止め、門を見据えた。体中が痛み、疲労が蓄積している。だが、その先に何かが待っている。それだけは確信している。
「この先には……俺が求めるものがある」
拳を握りしめ、門の前に立った。体は悲鳴を上げているが、俺はそれを無視する。限界を超えた先に何があるのか、それを確かめるために、俺は一歩、また一歩と前へ進む。
そして、ついにその巨大な門に手をかけ、静かに押し開けた。
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