4-19 この世界に未来があるのなら(第四会場三位投票)

【対象作】

 4-19 この世界に未来があるのなら

 https://ncode.syosetu.com/n6958jk/20/


【推し語り】

 本作についてはほぼ、一つの台詞に撃ち抜かれました。

 保有するスキルだけで何もかもが決まる世界は間違っていると思わないか――と問われた主人公の一言。


「別に思わないが?」


 いやー、フィクションではなかなか聞けない台詞のように思います!

 作中世界を支配する社会的な歪みを、「知ったことじゃない」と割り切る主人公が新鮮でした。フィクションのお約束として、こういう場面で主人公は動揺したり問題意識を露呈したりするのが常なので。予期したものをひっくり返されると、ちょっと気持ちがいいです。

 お約束をひっくり返す主人公に、個人的な小気味よさを感じつつ読み進めると、現れてくるいくつかの謎。「飲まされた薬の正体」「ヤジマとの夢」「若者と仲間の正体」……このうちの「薬の正体」の部分についても、小さなひっくり返しがありました。「スキル消去の薬と思っていたらそうではなかった」という形で。


 そうした、散在する小さなひっくり返しが面白くて好きな作品でした。

 欲を言えば、特殊な背景世界についての解像度がもう少し高ければ……とも思ったのですが(主舞台となる路地裏の様子とか詳しく見たかった)、それは書き出しを終えて以降に描かれるのかもしれません。

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