[激推し!] 4-14 弾丸なんか、イヌも喰わない。(第四会場一位投票)
【対象作】
4-14 弾丸なんか、イヌも喰わない。
https://ncode.syosetu.com/n6958jk/15/
【推し語り】
タイあら……といいますか、あらすじ込みの推しです。
あらすじの時点で、ダークでスタイリッシュな雰囲気がびしばし伝わってきてました。
どこか講談をも思わせる調子の高い文章と、「市民」に「ノライヌ」とルビを振る言語センスが、本文で繰り広げられるであろう暗黒退廃世界への期待を大いに高めてくれました。
そして本文も、期待通りの世界が展開されていました。
気だるげでスレた雰囲気を漂わせる主人公の語り。端的ながらも空気感が伝わってくる、近未来台湾の街のありさま。陰鬱な閉塞感が強く伝わってきてたまりません。
途中の血なまぐさい場面も、極端にグロテスクにはなりすぎず、それでいてエグさは伝わってくるいい塩梅の解像度で(血しぶき系がダメな方はたぶんダメな気がしますが……)、良い程度に嫌な気分になりつつ読み進められました。
そして、その「いい塩梅の解像度」に、実のところ事件の痕跡が内包されていた。
この手際の良さ、いいですねー。描写と思っていた要素に複合的な意味があった、という展開はやはり滾ります。
案件の事件性が露呈した後に話は急転回しますが、ここから先、主人公の心情変化が語り口の変化に表れているところも好きです。
銃撃の段階では仕事中とあまり変化していませんが、支配人の死亡時点から、ほんのわずかばかり動揺の気配が混じっているように見えまして。
しかし根本的な部分に焦りは見えず、この語りの揺れ方が絶妙でいいなあ、と思った次第です。
一人称の語りは、うまくやらないと「第三者への解説」感が出てしまうことが多々あるように思いますが、本作ではそんなことはなく、いい感じに主人公の独白らしい語りだったと思います。
死と犯罪の臭いが強く漂う舞台設定と、その中で壮絶な人生を生きてきたことを窺わせる主人公。ちらちら垣間見える、本編へ向けた「謎」の設定。
どれも不可分に混じり合っていて生き別れ感がなく、ひとつの要素が他の要素を伴ってすんなり入ってきました。情報提示の手際が良いなあと感じました。
と、盛りだくさんだった展開の後。
書き出しの最後では、強い雨と濁った空が閉塞感と不穏感をダメ押ししてきて、いい感じに嫌な気分で(全面的に褒め言葉です)読み終えることができました。
……あと、これはどうでもいい話ですが。
個人的に、ダークな雰囲気と謎の神格(?)の存在から、勝手にクトゥルフ神話みを感じ取ってしまい「クトゥルフにそんな神話生物いたっけなあ……」と検索してしまったことは内緒です(※筆者、クトゥルフ神話は少々かじった程度です)。
なにはともあれ、閉塞的な暗黒都市のありように魅了されました。ありがとうございました。
第四会場一位票を投じさせていただきました。
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激推し作の語りは以上です!
次回からは各会場の投票作を語っていきます。
(ここまでより若干、文字数は控えめになると思います)
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