第7話 高校3年生前夜 side:ケン①

 ふと視線を上げると、おっぱいが目に入った。


 自分の部屋なのに、立体なおっぱいが見える。


 恋愛経験がないケンにとって、これはかなり異常なことだった。

 部屋で見られるおっぱいと言えば、平面なものばかり。

 ポル〇ハブとか、エロ本とか、そういうものを見てマスを掻いていた。


 だけど今、目の前に本物だ。

 立体的だし匂いがあるし、揺れて揉むことだってできる。


 しかし問題は『そのおっぱいが元男の悪友についている』ということだ。


 おっぱいから視線をあげて、顔を見る。


 艶やかな黒髪に、陶器のように白い肌。

 少しキツめな顔だちをしているけど、とても整っている。



(正直、かなりの美人だよなぁ)



 黙っていれば『深窓の令嬢』に見えることだろう。

 だけど、中身は『ダウナーなくせに思い切りがよすぎるヤバイヤツ』である。 



「なあ、もっとかわいくなろう、とか思わないのか?」

「ナニソレ」



 そっけなさすぎる返事だった。



「だって、せっかく女になったんだぞ?」

「かわいくなっても仕方がないでしょ。1年で戻るんだし」

「だからこそ、だろ。満喫しようとは思わないのか?」

「満喫するしないの問題じゃないだろ。生き方が少し変わるだけだ」



 悪友のあんまりな物言いに、思わず顔をしかめてしまう。



「ロマンがないなぁ」

「性別の違いにロマンなんてないでしょ」

「あるだろ。決して味わえなかった色々を味わえるようになるんだぞ」

「まあ、ロマンって言うより知的好奇心でしょ」



 ふと、ケンは考えに耽り始めた。



(オレが女になっていたら、どうなっていたかなぁ)



 おそらく、葵生とは全く違う行動に出ていただろう。

 エロいことを積極的にするだろうし、


 葵生との関係も大きく変わっていたかもしれない。



(なんでオレは女体化されなかったんだよ)



 確かそっちの方が面白そうだから、みたいなことを言っていたはずだ、と思い出した。

 何が面白いのかはわからないが、ケンとしては不服である。



「なあ、そんな宿題は終わりにして、遊びに行こうぜ」



 色々考えることに飽きてきて、子供っぽく唇を尖らせた。



「まだノルマが終わっていないから」

「そんなの、明日の自分が何とかしてくれるだろ?」

「ダメ」

「なんでそんな変なところで真面目なんだよ」

「一度決めたことだから」

「えー。もっと柔軟に生きようぜ」



 突然、葵生がスクッと立ち上がった。



「お? 遊ぶ気になったか?」



 ケンの前まで来た葵生は、何も言わずにケンの上に座った。

 あまりにも突然すぎる行動に、思わず「うわっ!」と



「じゃあ、僕のおっぱいでも揉んでて」



(なんなんだ、コイツは)



 神社に2回目の突撃をしたときは、あまりにも無防備すぎたから、注意を促すつもり「揉ませて」と言った。

 本当に揉みたかった気持ちはケン自身否定できないが、本気で揉むつもりはなかった。


 今は「宿題を邪魔されたくない」という理由だけで、おっぱいを差し出している。



(まあ、揉むけどさぁ)



 ケンはジャージの上からおっぱいを揉み始めた。

 当たり前のように葵生はブラジャーをつけていない。

 最初は恐る恐る触れて、少しずつ大胆な動きになっていく。


 両手でも収まり切れないサイズ感。

 ほどよい弾力があるのに、しっとりと柔らかい。



(うおー。すっげ)



 無意識に生暖かい息がため息が漏れた。

 しばらく揉むことに夢中になっていると、気づく。


 自然と勃起している。

 お尻から伝わる感触で、葵生にも伝わっているはず。


 それなのに葵生が何も言ってこないことが、ケンにとってはムズ痒かった。



「なあ、気づいてるんだろ?勃起してること」

「まあ、仕方ないでしょ。生理現象だし」

「イヤじゃないのか?」

「生理現象にイヤとかないでしょ」

「いや、あるだろ、普通」



 葵生は「そうかな?」ととぼけた声を出した。



「まあ、ケンには襲う度胸はないでしょ」

「……わからないぞ」

「僕の知っているケンなら絶対に襲わない」



 葵生の言葉に面食らった。



(うーん、喜んでいいのか?)



 ケンは微妙な気分になりながら、悪友のおっぱいを揉み続けるのだった。

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