第30話 リリアの犠牲
「お父さん、私は……」
言葉が喉まで出かかったその時、突然強烈な光が辺りを包み込んだ。
「うっ……!」
まぶしさに目を細めながら、私は必死にリリアの姿を探した。
そして、その光の中心で起こっていることを目にして、息を呑んだ。
リリアの体が、まるで星屑のように輝きながら、ゆっくりと形を変えていく。
彼女の輪郭が溶け、光の渦となって広がっていく。その姿は、美しくも恐ろしかった。
「リリア!」
私は叫んだ。
しかし、もはや私の声は彼女には届かないようだった。
リリアの意識は、この世界を超えた何処かへ向かっているかのようだ。
その時、不意にリリアの声が聞こえた。
それは、まるで風に乗って運ばれてくるかのような、かすかな声だった。
「アヤカ……ごめんね。でも、これしか方法がないの」
「何言ってるの!まだ他の方法があるはず!」
私は必死に叫んだ。
しかし、リリアの声は続く。
「世界を救うには、誰かが犠牲にならなければいけない。それが私であることを、私は受け入れたわ」
「そんな……」
私の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
リリアの決意が、痛いほど伝わってくる。
彼女は、世界を救うために自分を犠牲にする覚悟を決めたのだ。
「でも、リリア。あなたがいなくなったら、私は……」
言葉が詰まる。
リリアがいない世界なんて、想像もしたくなかった。
「大丈夫よ、アヤカ。あなたは強い子だもの。きっと乗り越えられる」
リリアの声には、優しさと決意が混ざっていた。
その言葉に、私の胸が締め付けられる。
周囲を見回すと、時空の亀裂が急速に閉じていくのが見えた。
街の風景も、少しずつ元の姿を取り戻しつつある。
リリアの犠牲が、確実に世界を救っているのだ。
「でも、こんな代償を払ってまで……」
私の言葉を遮るように、リリアの声が響いた。
「アヤカ、覚えてる? 私たちが最初に出会った日のこと」
「え?」
突然の問いかけに、私は戸惑った。
「あの日、私は自分の力をコントロールできずに、別の世界に飛ばされてしまった。そして、あなたに出会った」
リリアの言葉に、私は当時のことを思い出した。
突然現れた不思議な少女。
戸惑いながらも、彼女を受け入れた日々。
「あの時、私は自分の存在が世界の危機を招いたんじゃないかって、すごく怖かったの」
リリアの声が続く。
「でも、あなたが私を受け入れてくれた。一緒に研究を重ね、テクノマジックを生み出した」
その言葉に、私は思わず微笑んだ。
確かに、あの日々は驚きと発見の連続だった。
「そして今、私にはその力で世界を救う機会が与えられた。これは、私の使命なの」
リリアの声には、強い決意が感じられた。
「でも、リリア……」
私は何か言葉を探したが、適切な言葉が見つからない。
「アヤカ、私は後悔していないわ。あなたと過ごした日々は、私の人生で最高の時間だった」
その言葉に、私の目から再び涙があふれ出た。
「リリア……」
「だから、これが最後の別れだとしても、私は幸せよ。あなたと出会えて、本当に良かった」
リリアの声が、次第に遠くなっていく。彼女の姿も、ほとんど光の粒子と化していた。
「待って、リリア!まだ言いたいことが……」
しかし、もはや私の声は届かないようだった。
リリアの体から放たれる光が、さらに強くなる。
その光は、まるで生命の輝きそのもののようだった。
時空の亀裂が、次々と閉じていく。
街の風景が、完全に元の姿を取り戻しつつある。
リリアの犠牲が、確実に世界を救っているのだ。
「リリア……お願い、戻って……」
私の声は、かすれた悲鳴のようだった。
しかし、リリアの姿はどんどん薄れていく。
その時、最後のリリアの声が聞こえた。
「アヤカ、さようなら。そして、ありがとう」
そして、まばゆい光が辺りを包み込んだ。
「リリアーーー!」
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