第11話 昔の本はどこへ行った?

 再びテラトキアの図書館へ。


 まだ、カタカナの本ばかりだ。


 カタカナ支配の時代よりも前に書かれた本は、どこにあるのか。


 いっさい保存してないのか?


 破棄した?


 焚書?


 地球世界を知っている転移者・転生者たちがいて、頭の中にカナモジ以外の文字の記憶があるのなら、カイベシアの昔の文献だって、読めるかもしれないはずだろう。


 ひらがなの含まれた本も置いてほしいのだが、ひらがなだけを特別あつかいにするための正当な理由・根拠は? (おなじことは、カタカナにも言える。)


 有志・篤志の方々に期待することになる。


 これからは、カタカナだけでなく、ひらがなも使うようになる。それはつまり、こっち(異世界カイベシア)の日本語の文字表記が複雑になることを意味する。カタカナだけでは読みづらいと考えるのは日本語勢力の転移者・転生者だけなのであって、ほかの人たちにとっては、書き言葉のハードルが上がるだろう。


 だが、日本語の書き言葉を学びたいと思っているがそんなにたくさんいるとは思えない。日本語は、拡大よりも防衛が優先されてもいいのだ。


 異世界での書き言葉が複数存在するのであれば、その中から、だれもが共通に学んで使うようなものが1つでも2つでもあったほうが都合がいい。いくつもやるのは骨が折れる。異世界での共通の書き言葉。それは、おそらく日本語ではないだろう。こっちの世界(異世界)におけるカタカナ支配は、もう終わるのだ。


 日本語は、ひらがなによって、カタカナだけの支配から解放される。


 その他の諸言語は、それぞれの文字によって、カタカナを駆逐することだろう。カタカナは、日本語だけで使われる文字に戻る。


 幅を利かせるようになるのは、潜在需要の多そうなアルファベット、だろうか。


 図書館には、古い文献も、ひそかに保存されていたようだ。たとえ読む人が少なくなっていたとしても、それだけで書物を破棄してはならないのだから。


 歴代の職員たちの良心に感謝する。


 あらたなが図書館を利用するようなことも、これから先ふえるだろう。アルファベットの復活に拍車がかかることになる。

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