第9話 音楽で文化の続きをしよう

ターマ:「テンプルスクールの《寺中テラナカ拓弥タクヤ と かなもじユニオンの平賀ヒラガ七香ナナカ。この二人ふたりに共通するのは、音楽と電撃魔法。争いごとは好まず、平和を望んでいた二人は、音楽活動を通じて、面識を持つようになった」


トモキ:「いいながれですね」


ターマ:「は、機会を見つけてコラボするようになった。エレキギターは、。キーボードは、。ドラムやベースは、サポートメンバーが担当していた」


 ボーカルをまねきいれることさえあった。


ターマ:「そうこうするうちに、テンプルスクール と かなもじユニオン は、提携することとなった」


トモキ:「お互いの組織についても情報交換したかもしれないですね」


ターマ:「テンプルスクールは、カタカナだけでなく、ひらがなも扱うようになった。ひらがなについては日本語専用の文字である。だが、英語カタカナ正書法の普及は継続」


トモキ:「そこは、そのままなんですね」


ターマ:「かなもじユニオンは、ひらがなとカタカナにくわえて、英語の正書法で使うはずのアルファベット(ラテン文字)も扱うようになった。そのことによって、英語からカタカナをひきはがすのが ねらい」


トモキ:「カタカナを日本語のためだけの専用文字にしたいのですね」


ターマ:「ただし、カタカナと比較して、英語本来のアルファベット正書法は文字と発音の対応が複雑だったこともあり、発音を精緻にあらわしきれない英語カタカナ正書法と、不規則だらけの英語アルファベット正書法は、異世界では共存することになる」


トモキ:「英語カタカナ正書法を切り捨てることはできなかったんですね。よみにくそうだとおもうのですが。テラトキアの人にとっては、ちがうのかな」


ターマ:「は、音楽でのコラボを続けているうちに、いつからか、かれらの音楽の中に、少しだけ英語が混入するようになっていたのよ」


 異世界の話し言葉は脳内変換によって頭の中で共通化されるはずなのでは?


 だが、なぜか音楽では言語が言語ではなく単なる音として認識された場合、そのままになってしまうことが生じるようであった。あるいは、電子楽器の中になにか仕掛けがあったのだろうか。


 ♪SON, SUN, SON OF THE SUN

 ♪MISSED, MISSED, DUE TO THE MIST


 英語の綴りの複雑さを反映したようなリリックが混ざることもあった。


 は音楽を利用してを懐柔するつもりだったのか。


 ほとんど議論も説得もなしに、うまいことやってのけたのか?


 あるいは、目と目で通じ合う、とか?



 かれらの音楽は、好評だった。そして、歌詞カードには、カタカナだけでなく、ひらがな や アルファベット(ラテン文字)も混ざるようになった。


 かつてカタカナによって駆逐されたはずのアルファベット(ラテン文字)が、人々の前に姿を現し始めつつあった。おおやけの出版物で、おおやけの場所で。


 まあ、もっとも、転移者の多いギルドでは、みんな前世の記憶にまかせて、ひらがな も カタカナも アルファベット(ラテン文字ふくむ)も、かなり自由に使っていた。ただし、おおやけの場では使わなかったのだが。

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