第15話 理事長室の秘密
藤崎と橘は、理事長が連れ去られた後も、立ち止まることはできなかった。二人は理事長室に戻り、手がかりを探すべく再びその静まり返った空間に足を踏み入れた。部屋にはさっきまでの会話の余韻がまだ残っているようで、空気は緊張感に包まれていた。
「ここに何か隠されているはず……。」藤崎は机の上や引き出しを手際よく調べ始めた。
橘も慎重に周囲を見渡し、棚の中や本の間を調べていた。しかし、外見上は何も異常がなく、どこにも目立った手がかりは見つからなかった。だが、橘はふと机の脇に目をやり、微かにずれた絨毯の端に気づいた。
「藤崎、ちょっと来て。」橘は指で絨毯を指差し、その下に何かが隠されているのではないかと推測した。
藤崎が絨毯をめくると、そこには小さな隠し扉があった。隠し部屋への入り口のようだった。「これだ……理事長が隠していたものはここにあるに違いない。」
二人は慎重にその扉を開け、暗い階段を下っていった。階段の先には狭い部屋が広がっており、その中には簡素なデスクといくつかの古びたファイルが並んでいた。部屋には薄暗い電球が一つだけ点灯しており、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。
藤崎がファイルに手を伸ばし、中を確認しようとしたその時――橘の目が一つの異常に気づいた。部屋の隅に倒れている人影。それは、学園の財務担当であった松田という男だった。
「藤崎、あれ……」橘は震えた声でその死体を指差した。
藤崎もすぐに気づき、二人はその死体に近づいていった。松田は明らかに最近殺されたばかりで、まだ血の匂いが漂っていた。彼の喉元には鋭利な刃物で切られた痕があり、凄惨な死に様だった。
「松田さん……彼もこの事件に巻き込まれていたのか。」藤崎は声を低くしてつぶやいた。
「おそらく、松田さんは理事長の不正取引に深く関与していた……そして、彼が何かを知りすぎたから、殺されたのかもしれない。」橘は冷静に推理を始めた。
「そうか……彼は学園の財務担当だった。もし学園が影の組織の資金洗浄に使われていたとしたら、松田はその不正の全貌を知っていた可能性がある。」藤崎は橘の推理に同意しながら、再び部屋を見渡した。
橘はさらに冷静に部屋の中を観察し始めた。彼女は机の上に置かれているファイルに目を向け、そのファイルの中身に注目した。「藤崎、このファイルを見て。これは……学園の裏帳簿ね。」
橘が見つけたのは、学園が長年にわたって影の組織と密接な関係にあったことを示す書類だった。表向きの帳簿には載せられない不正な資金の流れが記録されており、資金洗浄の仕組みが詳細に書かれていた。
「ここには、亮が探していた真実が詰まっている……。」藤崎はファイルを手に取り、深刻な顔つきでそれを確認した。「この裏帳簿が証拠だ。理事長も関与していたが、松田もまた、この計画の一部を知っていた。彼は口封じされたんだ。」
橘はさらに深く考え込んだ。「でも、亮がこれを掴んでいたなら、彼が命を狙われたのも当然ね。彼は正義感が強い人だった。きっと、この不正を暴こうとした……でも、それが命取りになった。」
「そうだ、亮は学園のために動いた。そして、影の組織はそれを許さなかった。」藤崎は言葉に力を込めた。「だけど、今この証拠を掴んだ以上、僕たちには亮が果たせなかった使命を果たす責任がある。」
橘は静かに頷いた。「でも、藤崎……もしこの証拠を公開すれば、私たちも同じ目に遭うかもしれない。影の組織は黙っていないわ。」
藤崎は橘の言葉にしばらく黙り込んだ。橘の言う通り、この証拠を手にしたことで、二人はさらに危険な立場に立たされた。しかし、藤崎の心には、亮が追い求めた正義を果たす決意が強く宿っていた。
「僕たちはこの真実を世間に知らせるべきだ。」藤崎は決断した。「亮が命を懸けて守ろうとしたこの学園のために、影の組織の不正を暴露する。」
橘は再び頷いた。「私も手伝うわ。亮のために……そして、この学園を守るために。」
二人は理事長室を後にしようとしたが、その瞬間、再び階段の上から物音が聞こえた。誰かが彼らを追ってきたのだ。
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読者様メッセージ
「藤崎と橘は理事長室の隠し部屋で学園の財務担当、松田の死体を発見し、影の組織が学園を資金洗浄の拠点にしていた証拠を掴みます。しかし、この証拠を手にしたことで二人はさらなる危険に直面します。階段の上から近づく足音――果たして、彼らはこの証拠を守り抜くことができるのでしょうか?」
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選択肢
1. 橘と協力して、階段の上から迫る敵に備える。
2. 証拠を持ち、隠し通路から外に脱出して警察に連絡する。
3. 証拠を隠して、その場で相手を待ち伏せする。
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