第14話 真実への扉

藤崎の心臓は鼓動を早め、理事長の言葉が頭の中をかき乱していた。彼の告白は不完全であったが、学園の背後に巨大な力が暗躍しているという示唆は、明らかに何か重要なことを示していた。理事長の顔に浮かんだ恐怖の色は、単なる学内の不正問題以上の、より危険で複雑な問題に関わっていることを物語っていた。


藤崎はその場で一瞬迷いがよぎったが、ここで引き下がるわけにはいかない。亮が追っていた真実、その裏に潜むものを掴むためには、さらに踏み込む必要があった。


「理事長、今ここで本当のことを話してもらえないと、この学園もあなたも破滅します!」藤崎は声を上げ、理事長を追及した。


理事長は重苦しい表情を浮かべ、しばらくの間沈黙していた。彼の目は深い悩みを映し出し、どこか遠くを見つめているようだった。そして、ゆっくりと息を吸い込んでから、ようやく口を開いた。


「……藤崎君、私はこの学園を守るために、ある選択を迫られたんだ。この学園を運営するためには、表に出せない資金がどうしても必要だった。だが、それを提供したのは外部の影の組織……彼らは学園を通して、さらに大きな目的を達成しようとしているんだ。」


藤崎の心臓は再び鼓動を早めた。影の組織――それが、亮が追っていた黒幕なのか?


「影の組織とは何ですか?彼らの目的は?」藤崎は一歩前に踏み出し、理事長を見据えた。


理事長は苦しそうに顔を歪め、さらに深い息を吐いた。「その組織の名前は言えない。だが、彼らは学園を表向きのビジネスとし、裏で資金洗浄や不正取引を行っていた。亮君はその事実を掴みかけた。だから、彼は……」


藤崎は理事長の言葉を飲み込むように聞きながら、全てが繋がっていくのを感じた。亮は学園を利用した不正取引の証拠を掴み、それを公にしようとした。しかし、その行動が彼の命を奪った。理事長はその事実を隠すため、組織に従わざるを得なかった。


「亮が殺されたのは、その組織の仕業だということですね?」藤崎は問い詰めた。


理事長は頷いた。「そうだ……私はそれを止められなかった。彼らに従わなければ、私もこの学園も全て失うことになるからだ。」


「その組織の手の者が、今この学園に潜んでいるのか?」藤崎はさらに問いを重ねた。


「彼らは常に監視している……。だが、今ここにいるかどうかは分からない。ただ、彼らが動けば、私も君たちも消されるかもしれない。」理事長は目を伏せ、声を潜めて言った。


その時、藤崎の頭の中である一つの仮説が浮かび上がった――この組織はただの資金洗浄だけを目的にしているわけではない。何かもっと大きな陰謀が進行中なのだ。彼らは学園という閉ざされた場所を利用し、さらなる影響力を拡大しようとしているのではないか。亮はその計画を知らずに踏み込んでしまったのだろう。


藤崎は橘の方を見た。彼女もまた、理事長の話に驚愕と不安を隠せない様子だった。二人はこの事態にどう対応するべきかをすぐに考えなければならなかった。


「理事長、あなたが影の組織に関与していることを公にしなければ、さらなる被害者が出ます。これ以上隠すのは無理です。」藤崎は言葉を強くして、理事長を促した。


しかし、その時――


突然、理事長室の扉が乱暴に開かれた。黒ずくめの男たちが数人、無言で部屋に入ってきた。藤崎と橘は一瞬立ち尽くしたが、すぐに事態が異常であることを悟った。男たちはまるで、全てを知っているかのような無表情で、藤崎たちをじっと見つめていた。


「ここまでだ。君たちはもうこれ以上、何も知る必要はない。」一人の男が冷酷に言った。


「待て、何をするつもりだ!」藤崎は叫んだが、男たちは一切反応せず、理事長に近づいていった。


「理事長、あなたも私たちの手から逃れることはできない。」男は低い声で囁いた。


理事長は怯えた表情で、口を閉ざしたまま後ずさりしていたが、やがて諦めたように立ち止まった。「……もう、終わりなのか。」


「藤崎君、君はもう引き下がるべきだ。」理事長は静かに言った。「君にはこれ以上関わってほしくない。この事件は……もっと大きなものだ。君の力ではどうにもならない。」


「それでも僕は亮のために、真相を追わなければならないんです!」藤崎は理事長に詰め寄った。


その瞬間、男たちは素早く動き、理事長を連れ去ろうとした。しかし、藤崎はすぐに橘と共に後を追った。


廊下を駆け抜け、男たちが理事長を連れ去ろうとする瞬間、藤崎は理事長に叫んだ。「真実を話してくれ!亮が望んでいたのは、この学園の未来なんだ!」


理事長は立ち止まり、一瞬だけ振り返った。その目には、かすかに迷いが浮かんでいた。しかし、男たちに押し込まれるようにして、理事長は車に乗せられて去っていった。


藤崎と橘はその場で立ち尽くした。全てが目の前で崩れ落ちていくような感覚だった。


「どうする……藤崎?」橘が震える声で尋ねた。


藤崎は強く拳を握りしめた。「まだ終わっていない。理事長が言ったように、これ以上は危険だ。でも、僕たちはまだ手がかりを持っている。理事長が隠していた真実……それを見つけ出す。」


「でも、どうやって……?」橘が不安げに問う。


藤崎は静かに答えた。「学園に潜む組織の痕跡を追うしかない。彼らは必ずどこかに証拠を残しているはずだ。」


---


読者様向けメッセージ


「藤崎は理事長との対話を通じて、学園を取り巻く巨大な陰謀と影の組織の存在に気づきます。しかし、その組織はすでに理事長を支配しており、藤崎たちに迫る危険はますます増していきます。理事長が連れ去られた今、藤崎は一体どこに手がかりを求め、どうして組織の正体に迫るのでしょうか?」


---


選択肢


1. 理事長が残した手がかりを学園内で探し、組織の正体を暴く。

2. 橘と共に学園を出て、外部の協力を求めて安全な場所で計画を練る。

3. 影の組織が学園内に潜んでいる人物を見つけ、内部から調査を続ける。


応援コメントに選択番号を記載して下さい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る