第12話 扉の向こう側

藤崎は背後に迫る何者かの影を感じながらも、鉄扉の鍵を解除することを最優先に決めた。犯人はまだ完全には逃げていない。藤崎はここで道を開かなければ、真相にたどり着く手段を失ってしまう。彼は冷静に操作パネルに集中し、複雑な構造を理解しながら解除を進めた。


「橘、ここを守ってくれ。もう少しで扉が開く。」藤崎は焦る心を押し殺し、手元に集中した。


橘は不安そうな表情で背後を見やりながらも、藤崎を信じてその場に踏みとどまった。迫り来る足音が徐々に大きくなっていく。時間がない――それでも、藤崎は一瞬一瞬の手ごたえを感じながら、操作パネルを慎重に扱っていた。


パネルに小さなカチッという音が響いた瞬間、藤崎の目は輝いた。「開く……!」藤崎は素早く手を動かし、最後の解除手順を完了させた。鉄扉が重々しい音を立てながらゆっくりと開き始める。


「橘、早く!」藤崎は扉の隙間に身を押し込み、橘を促した。


橘はすぐにその指示に従い、扉の向こう側へと滑り込んだ。二人は暗く狭い通路から一気に開けた場所へと出た。その瞬間、冷たい夜風が二人を包み込んだ。外だ。脱出に成功した――だが、安堵する暇もなかった。背後で鉄扉が大きな音を立てて閉まると同時に、何者かがその向こうでドアを叩く音が聞こえてきた。


「くそっ、誰かが追ってきている……」藤崎は扉の前で立ち止まり、深い息を吐いた。外に出られたとはいえ、すぐに追いつかれる可能性があった。


二人が出てきた場所は、夜の静けさが支配する廃工場のような広い敷地だった。廃墟のように見える建物が並び、どこかに犯人が潜んでいるのではないかという不安が頭をよぎる。工場の影が暗闇の中で不気味に揺れているように見えた。


「ここはどこだ?」橘が息を切らしながら問いかけた。


「おそらく、学園の裏手にある廃工場だ。ここは地図にも載っていない隠された場所だろう。」藤崎は即座に答えた。


廃工場――その場所に意味があるのか。藤崎は工場の歴史や関係者について思いを巡らせた。亮の事件、学園、そしてこの廃工場の間に何か関係があるのか?彼の推理が徐々に動き始めた。


「この工場、亮が関係していたのかもしれない。もしかすると、この場所で何かを取引しようとしていたのかもしれない。」藤崎はあらゆる可能性を考え、頭の中でピースをつなぎ合わせていく。


「ここで何か取引をしていたのなら、犯人はここに証拠を残しているはずだ。」藤崎は工場の内部を見つめながら、次の行動を考え始めた。


工場の奥から、何かが動く音がした。二人は警戒しながら近づいていった。廃工場の中には、古びた機械や壊れた道具が散乱していた。その間を慎重に進んでいくと、遠くの方にかすかに光が見えた。誰かがいる――藤崎はそう確信した。


「橘、静かに……犯人が近くにいるかもしれない。」藤崎は小声で警告し、慎重に工場内を進んだ。


二人は光の方へと足を進めていった。次第に光は明るくなり、そしてついにその光源にたどり着いた。そこには、一つのテーブルと椅子が置かれ、その上にはいくつかの書類が広げられていた。


「これは……」藤崎はテーブルの上の書類に目を向けた。そこには、学園の財務報告書や契約書、さらには不正取引を示すような怪しい書類が並んでいた。


「亮が追っていたものはこれか……」藤崎は書類をめくりながら、亮が学園の裏で何か大きな不正を暴こうとしていたことに気づいた。


「これが事件の全貌……?」橘が戸惑いながら言った。


「まだわからないが、確実に亮はこの取引に関わっていた。そして、それを知った何者かが彼を消そうとしたんだ。」藤崎はそう言いながら、さらに書類を調べた。


その時――藤崎は書類の間に挟まれていた一枚の写真に目を奪われた。そこには亮と、学園の理事長と思われる人物が一緒に写っていた。理事長がこの取引に関わっていた……?


「これで全てがつながった。理事長はこの不正取引に深く関わっていて、亮はその事実を掴みかけていたんだ。それで彼は消された……」藤崎の推理は徐々に形を成しつつあった。


「じゃあ、理事長が犯人ってこと……?」橘が困惑した声で尋ねた。


「いや、理事長一人でこんなことを仕組むとは思えない。もっと大きな力が関わっているはずだ。」藤崎は再び考え込んだ。「学園全体に広がる汚職か、それとも外部の勢力が絡んでいるのか……」


その時、背後から再び足音が聞こえた。藤崎と橘は即座に振り向いた。そこには、一人の男が立っていた。男はスーツ姿で、冷たい目をして二人を見つめている。


「君たち、ここまで来たのか……だが、もうこれ以上進むことは許されない。」その男の声には冷たく、威圧的な響きがあった。


「あなたは誰だ?」藤崎は鋭く問いかけたが、男は答えずに一歩近づいてきた。


「この先は、君たちの命を保障できない。」男はそう言うと、懐から何かを取り出した。それは銃だった。


「逃げろ、橘!」藤崎は叫びながら、素早く身を低くして隠れた。橘も即座に反応して近くの機械の裏に隠れた。銃声が響き、工場内の静けさを引き裂いた。


二人は何とか身を守ることに成功したが、男がまだ近くにいることは間違いなかった。この状況からどう脱出するか、藤崎は必死に考えを巡らせた。


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読者様向けメッセージ


「藤崎と橘は鉄扉を開けて廃工場へと脱出しました。工場内で亮の追っていた不正取引の証拠を発見し、事件の全貌が徐々に明らかになりつつあります。しかし、背後から現れた謎の男が彼らを襲い、藤崎たちは再び危険な状況に直面します。果たして、藤崎はこの危機をどう乗り越えるのでしょうか?」


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選択肢


1. 工場内の隠れ場所を利用し、反撃の準備をする。

2. 橘と共に工場から脱出し、警察に証拠を届けることを優先する。

3. 男の意図を探り、交渉して安全に逃れる道を探る。


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