第11話 隠された出口
藤崎は一瞬の恐怖に襲われたが、すぐに冷静さを取り戻した。今は焦っても無駄だ。冷静に、この地下駐車場から脱出するための手がかりを探す必要がある。藤崎は橘に小さく頷き、「僕たちでここから出る手段を見つけよう」と声をかけた。
橘は不安そうな表情を浮かべていたが、藤崎の落ち着いた声に少し安堵した様子で頷き返した。「翔、何か手がかりがあるの?」
「何かしらの出口はあるはずだ。この場所が完全に密閉された構造であるとは考えにくい。まずは、周りを詳しく調べてみよう。」
藤崎は周囲を注意深く見渡しながら、駐車場内を歩き始めた。車の破片や壁の崩れた場所などを見逃さないように、慎重に進んでいく。車のドアがひしゃげ、何かに押しつぶされたような形跡がある車に目を留めた。藤崎はしゃがみこみ、その車の下に何か手がかりがないかを探り始めた。
「藤崎、これを見て。」橘が少し離れた場所で声を上げた。
藤崎が駆け寄ると、橘は駐車場の片隅にある古びた壁の一部を指差していた。そこには、埃にまみれた鉄扉が半ば埋もれるようにして存在していた。まるで長年、誰もその扉に触れていないかのような状態だった。
「これが……隠された出口か?」藤崎はその扉をしげしげと見つめた。
鉄扉は、明らかに老朽化していたが、使用できないわけではなさそうだった。藤崎は慎重にドアノブを掴み、力を込めて回した。扉は重く、錆びついていて、開けるのに苦労したが、なんとか少しずつ開いていった。
扉の向こうには、細くて暗い廊下が続いていた。まるで地下に隠された秘密の通路のようだった。藤崎はその廊下を慎重に見つめ、何か手がかりがないかと考えを巡らせた。
「この通路、どこに繋がっているんだろう……?」橘が不安げに尋ねた。
「わからない。でも、今はこれしか道はない。進むしかないな。」藤崎は静かに答えた。
二人は廊下に足を踏み入れ、ゆっくりと進んでいった。廊下は湿っぽく、壁にはカビが生えているような臭いが漂っていた。時折、足音が響き、狭い空間にその音が反響していた。二人の心の中には不安が広がりながらも、前進するしかないという覚悟があった。
藤崎は進む中で、廊下に何か異質なものが散らばっていることに気づいた。彼は足元に落ちていたものを拾い上げ、橘に見せた。それは何かの部品のようなもので、小さな機械の破片のようだった。
「これ……爆弾の一部かもしれない。」藤崎はその部品を見つめながら考え込んだ。
「爆弾?でも、どうしてこんなところに?」橘が困惑した表情を浮かべた。
「誰かがこの通路を使っていたんだ。この部品は、もしかすると爆発を起こした犯人のものかもしれない。そうだとしたら、犯人はこの廊下を通って逃げた可能性がある。」藤崎の頭の中で、点と点がつながり始めた。
「もしそうなら、この通路の先に犯人の隠れ家があるかもしれない……」藤崎は心の中で推理を進めていった。
藤崎の推理が進む中、廊下の奥からかすかな音が聞こえた。まるで誰かが何かを引きずるような音だ。二人は足を止め、耳を澄ませた。
「……何かが近づいてくる?」橘が恐る恐る囁いた。
「いや、違う。誰かが通路の奥で作業しているかもしれない。」藤崎はそう言いながら、さらに奥へと進もうとした。
だが、その時だった――突然、通路の奥で何かが爆発し、振動が二人の足元に伝わってきた。藤崎と橘は咄嗟に身を伏せた。
「何だ!?」藤崎は叫んだが、爆発音はすぐに止まり、廊下は再び静寂に包まれた。
「また爆弾か……」藤崎は顔を上げ、通路の奥を見つめた。「犯人は自分の痕跡を消そうとしている……」
藤崎は急いで立ち上がり、通路の奥へと走り出した。橘も後を追う。通路はだんだん狭くなり、出口が近いことを示していた。そして、ついに通路の終わりにたどり着くと、そこには大きな鉄扉があった。
「ここが出口か……」藤崎は鉄扉をじっと見つめた。
だが、その扉には大きな鍵がかけられており、簡単には開けられそうになかった。藤崎は手で扉を押してみたが、びくともしない。
「鍵がかかっている……でも、この先に何かがあるはずだ。」藤崎は再び冷静に考え始めた。
扉の横には小さな操作パネルがあり、それを操作すれば鍵を解除できる可能性があった。しかし、パネルは複雑な仕組みになっており、解除するには時間がかかりそうだ。
「橘、時間がない。この鍵を解除しないと、犯人を逃してしまうかもしれない。」藤崎は決意を込めて言った。
橘は藤崎の言葉に力強く頷き、二人で協力して扉を開けようとするが、その時、背後から再びかすかな音が聞こえた。二人は息を呑んで振り向いた――そこには、真っ暗な通路の中で何者かの影が迫ってきていた。
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読者様向けメッセージ
「藤崎と橘は隠された地下通路を見つけ、脱出の手がかりを探して進んでいきました。通路の先には犯人が痕跡を消そうとしている様子があり、二人はついに出口にたどり着きますが、大きな鉄扉に阻まれています。扉の鍵を解除するために時間が必要な状況の中、背後には何者かの影が迫ってきています。果たして、藤崎は無事に脱出し、真相にたどり着けるのか?」
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選択肢
1. 鉄扉の鍵を解除し、外へ脱出することを最優先する。
2. 背後の影に対抗し、橘を守りながら戦う準備をする。
3. 鉄扉の解除を諦め、別の逃げ道を探すために引き返す。
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