第9話 陰謀の爪痕
選択2です。
藤崎は橘の方を見た。倉庫の奥に潜む気配の正体を確かめることもできたが、今の状況ではあまりにも危険だ。警察が何者かに襲撃されている以上、ここで行動するのは賢明ではない。藤崎は冷静な判断を優先し、橘に向かって頷いた。
「ここを離れよう、橘。警察署に戻って、助けを求めるんだ。」
橘も同じように冷静にうなずき、二人は倉庫から静かに後退した。嵐は一層激しさを増し、雨と風が容赦なく彼らを打ちつける。藤崎は雨の中、必死に足を進めながら、何が起こっているのかを考え続けていた。警察が襲撃され、遠山刑事たちが意識を失ったまま放置されている。そして、倉庫の奥に潜む何者かの存在。すべてが不気味な陰謀の匂いを漂わせていた。
道中、橘が息を切らしながら藤崎に話しかけた。「翔、あれは……ただの事故じゃない。何者かが私たちを……」
「わかってる。でも、今は警察に連絡を取って、正規の捜査を依頼するしかない。」藤崎は言葉に力を込めた。彼の中では、警察の力を借りてこの事件を解決するしかないという信念があった。
ようやく警察署の前にたどり着いた。だが、その光景に藤崎と橘は息を呑んだ。警察署の建物は真っ暗で、すべての照明が消えていた。まるで、命の灯火が消されたかのような静けさがそこに広がっていた。
「なんてこと……」橘が震える声で呟く。
藤崎は警察署の入口に駆け寄り、ドアを叩いた。「誰か、いませんか!遠山刑事!」何度も叫んだが、返答はない。ドアは固く閉ざされている。
「まさか、ここも……」藤崎は冷や汗が背中を伝うのを感じた。警察署そのものが何者かの手によって封鎖されているのか。それとも、遠山刑事たちに何かが起きたというのか。
藤崎は意を決してドアノブに手をかけた。固く閉ざされているように見えたが、意外にも鍵はかかっておらず、ドアはゆっくりと開いた。暗闇の中に一歩踏み出すと、警察署の廊下は静まり返っており、人の気配はまったくなかった。
「橘、行くぞ。」藤崎は橘に合図を送り、彼女も後に続いた。二人は暗い廊下を進み、遠山刑事のオフィスへ向かった。廊下の壁に手を伸ばして電気のスイッチを探るが、スイッチを押しても灯りが点くことはなかった。
「何かがあったんだ……」橘は声を潜めて言った。藤崎も頷きながら、慎重に進んだ。ようやく遠山刑事のオフィスにたどり着くと、ドアはわずかに開いていた。
「遠山さん……」藤崎は静かにドアを開け、部屋の中を覗き込んだ。しかし、そこに遠山刑事の姿はなかった。部屋は荒らされた形跡もなく、ただ机の上に一枚のメモが残されているだけだった。
藤崎はメモに目を通した。そのメモには、手書きの文字でこう記されていた。
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**「全ては『23時』に始まり、『闇』の中で終わる。」**
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藤崎の心は凍りついた。何者かが、警察署にメッセージを残している。これは一体何を意味しているのか。藤崎は冷静さを保ちつつ、メモを手に取り、橘に見せた。
「『23時』……。今夜のことを示しているんだわ。」橘の声には、恐怖と不安がにじんでいた。
「いや、これは今夜のことだけを指しているわけじゃない。何者かが、23時に何かを企てている。警察署がこうなっているのは、その計画の一部だ。」藤崎は自分の考えを整理しながら答えた。
藤崎は再び部屋の中を見渡したが、他に手がかりは見当たらなかった。遠山刑事が消え、警察署が暗闇に包まれた今、藤崎たちには次の一手を考えるしかなかった。メモの内容が示す『闇』とは何なのか。このままでは亮の事件も、すべてが闇の中に消え去ってしまう。
「他に手がかりがないか、もう一度警察署内を調べるしかない。」藤崎は橘に向かって言った。
しかし、その時――警察署の入口から何者かの足音が聞こえた。藤崎と橘は息を潜め、暗闇の中で気配を探った。足音は静かに近づいてくる。誰かが彼らを追っているのか。それとも、この警察署の闇に潜む何者かが動き出したのか。
「藤崎……!」橘がかすかに囁いた。
足音は廊下の向こうから迫り、二人のいる部屋の前で止まった。息を殺し、藤崎はドアの隙間から外の様子をうかがった。しかし、廊下には誰の姿もない。ただ、闇の中で何かがうごめく気配だけがそこにあった。
突然、遠くで爆発音のような轟音が響いた。警察署の奥で何かが起こったのだ。藤崎と橘は驚き、音のした方に視線を向けた。闇の中で何かが始まっている――事件の全貌を覆い隠す、さらなる陰謀が動き出したのだ。
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読者様向けメッセージ
「藤崎と橘は警察署に戻り、異様な静けさに包まれた署内を調べました。遠山刑事の姿はなく、机の上には謎のメモが残されていました。すべては『23時』に始まり、『闇』の中で終わる――。警察署内で何が起こっているのか、そして、闇の中でうごめく何者かの正体は何なのか。藤崎たちは今、さらなる陰謀に巻き込まれようとしています。」
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選択肢
1. 爆発音のした方向に向かい、何が起こったのか確認する。
2. 警察署から一旦脱出し、外部に助けを求める。
3. 警察署内を隠密に調査し、闇の中でうごめく者の正体を探る。
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