第7話 報告と隠された意図
選択肢は、1です。
藤崎は橘美咲に目をやり、彼女の表情を読み取った。橘の顔には恐怖と不安が混じり合っていたが、何よりも彼女の目は、事件の真相を知りたいという強い意志を宿していた。このまま一人で調査を続けるのは危険だと判断し、藤崎は決意を固めた。
「橘、警察に報告しよう。これは僕たちだけで解決できる問題じゃない。」
橘は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに真剣な眼差しでうなずいた。「わかった。亮のためにも、真実を明らかにしましょう。」
二人は学園を後にし、最寄りの警察署へ向かった。道中、橘は黙り込んだままで、藤崎も何も言わずに前を見据えて歩いた。頭の中では、倉庫で見つけた証拠――録音機と写真、そして学園の内部文書が事件の全貌を明らかにする手がかりになると確信していた。
警察署に到着すると、藤崎は受付で事情を説明し、担当の刑事を呼んでもらうように頼んだ。しばらくして現れたのは、顔に深いシワが刻まれた中年の刑事、遠山だった。彼は藤崎と橘の顔を一瞥し、事務的な口調で言った。
「何があったか、詳しく話してくれ。」
藤崎は淡々と、星陽学園で起きた事件と倉庫で見つけた証拠について話し始めた。橘も時折言葉を補足し、亮が何者かに脅されていた可能性があること、そして彼が事件の夜に取引を強要されていたことを伝えた。遠山刑事は真剣な表情で話を聞いていたが、その眼にはどこか冷静すぎる光があった。
「それで、これがその証拠か?」遠山刑事は、藤崎が差し出した録音機と写真に目を向けた。
「そうです。この録音機には亮が取引をしていた相手の声が記録されています。そして、この写真に写っている男が、その相手かもしれません。」藤崎は確信に満ちた声で答えた。
遠山刑事は録音機を手に取り、再生ボタンを押した。録音された冷たい声が警察署の一室に響く。藤崎と橘は、その声に聞き覚えがないか耳を澄ませたが、遠山刑事の表情は変わらない。録音が終わると、彼は無言のまま写真を見つめ、そしてため息をついた。
「この男に見覚えはないが、学園内でこれほどの事件が起きていたとはな……」遠山は慎重な口調でそう言った。しかし、藤崎は彼の言葉に違和感を覚えた。その表情はあまりにも冷静で、感情が感じられなかったからだ。
「録音の内容からして、亮は何者かに脅されていたはずです。この写真に写る男がその相手かどうかは分かりませんが、彼を探す必要があります。」藤崎は続けた。
遠山刑事は一度目を閉じ、ゆっくりと藤崎に向き直った。「君の言う通りだ。しかし、ここで一つ確認したいことがある。」
藤崎はその言葉に耳を傾けた。遠山刑事の目が鋭く藤崎を見据えた。
「この事件について、他に誰かに話したか?」遠山の問いに、藤崎は一瞬戸惑った。
「いえ、まだ他には……」藤崎は橘の方をちらりと見たが、彼女も同様に首を横に振った。
遠山刑事は再び写真を見つめ、そしてゆっくりと口を開いた。「実はな、この写真に写っている男……彼は、以前から何度かこの町で目撃されている。だが、素性が一切分からないんだ。いわば、町の闇に潜む影のような存在だ。」
「影の存在?」藤崎の心にざわめきが広がった。その男がこの町に関与しているとなれば、亮の事件も単なる学園内のトラブルではなく、町全体に絡む何かが潜んでいるということだろうか。
遠山刑事はゆっくりと立ち上がり、二人に向き直った。「君たちが持ってきた情報は貴重だ。しかし、この男に触れるのは危険だ。学園内だけでなく、この町そのものに影響が及ぶかもしれない。」
その時、警察署のドアが急に開き、若い刑事が慌てた様子で駆け込んできた。「遠山さん、例の件で動きがありました!」
遠山刑事は険しい表情で若い刑事に目を向けた。「例の件……まさか、彼らが?」
「はい、町の裏手で再び活動しているとの情報が。しかも、23時に取引を行うという情報が……」
藤崎はその言葉に動揺した。23時――亮のメモに書かれていた時間だ。
「今夜、また何かが起こるというのか……」藤崎の心臓は高鳴った。
遠山刑事は藤崎と橘を見つめ、真剣な口調で言った。「君たちはここから一歩も動くな。今夜は危険だ。私たちが対応する。」
藤崎は、今の状況が急速に動き始めていることを感じた。だが、このまま遠山刑事たちに任せるべきなのか?事件の真相が見え始めた今、藤崎は自分自身でこの闇に踏み込むべきだという強い衝動を抑えられなかった。
遠山刑事の背後で、若い刑事が電話で何かを話している。その内容が、今夜の23時の行動計画を示しているようだった。橘も何かを感じ取っているのか、不安そうに藤崎を見つめた。
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読者様向けメッセージ
「藤崎と橘は警察に事件の証拠を持ち込みましたが、遠山刑事の言葉から、事件は学園だけでなく町全体に関わる闇の一部である可能性が示唆されました。そして、今夜23時――亮のメモに記された時間に再び動きがあるとの情報が入ります。果たして藤崎は警察の指示に従うべきなのか、それとも自ら行動を起こすべきなのか。この選択が事件の真相に迫るための重要な分岐点となります。」
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【選択肢】
1. 警察の指示に従い、今夜の動きを遠山刑事に任せる。
2. 自ら23時の取引現場に向かい、真相を確かめる。
3. 橘と共に23時の現場に向かい、遠山刑事に連絡せず独自に調査を続ける。
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藤崎翔の次の行動が、物語の運命を大きく左右します。今夜の23時に起こる出来事にどう対応するか、あなたの選択が事件の行方を決めます。決断は20時までにお願いします。
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