第6話 箱の中の秘密
藤崎は橘美咲の腕を振りほどき、古びた箱の前に立ち尽くした。彼女の反応は明らかに異常だった。この箱の中に何かがある。それは、事件の核心に触れるものに違いない。藤崎の心臓は激しく鼓動していたが、彼は迷わず箱に手をかけた。橘の制止の声が聞こえるが、今はそれに耳を傾けることはできなかった。
「翔、やめて!」橘が叫んだが、藤崎は箱の蓋を一気に持ち上げた。
蓋が開くと同時に、室内の空気が重く変わった。箱の中から漂ってきたのは、ほこりと何か錆びついたような鉄の匂いだった。藤崎はその中をじっと見つめた。そこに詰まっていたのは、何枚かの古い書類と、一つの奇妙な黒い袋だった。
「これは……なんだ?」
藤崎は、まず書類に手を伸ばした。ページを捲ると、それは学園内の各部活動の経費や物品のリストのようだった。しかし、違和感を覚えたのはその記載内容だ。日付や金額が不自然に隠され、何かを偽装しているような痕跡があった。
「学園の内部文書……それも、不正を隠している証拠か?」藤崎の頭の中で、これらの書類が持つ意味を組み立てようとした。田中亮はこの情報に関わっていたのか?
藤崎は続けて黒い袋に目を移した。袋はずっしりと重く、何か金属のような物が入っている感触があった。橘は、それを見て青ざめた表情を浮かべていた。
「何かを知っているのか?」藤崎は橘に尋ねたが、彼女は答えずに視線をそらした。
藤崎は袋を慎重に開け、中を確認した。袋の中には、小型の録音機が入っていた。古びているが、まだ機能するようだ。藤崎はそれを取り出し、再生ボタンを押した。カチッという音と共に、録音された音声が流れ始めた。
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「……これが最後だ。23時に倉庫裏で。取引が成功すれば、これ以上は追わない。だが、失敗すれば……」
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そこには、低く冷徹な男の声が録音されていた。藤崎はその声に聞き覚えがなかったが、録音の内容がこの事件に深く関わっていることは明らかだった。田中亮は何らかの取引を強要されていた。だが、取引の内容が何なのかは、まだ明らかになっていない。
「亮は……脅されていたの?」橘が震えた声で言った。
藤崎は黙ったまま録音機を握りしめた。事件は単なる学園内のトラブルではない。何者かが亮に圧力をかけ、何かを強制しようとしていた。それが失敗し、亮の命が奪われた。
彼の視線は、再び箱の中に向けられた。まだ他にも何かが隠されているかもしれない。書類の束を慎重にめくり、底の方に一枚の写真を見つけた。その写真には、亮と思われる人物と、もう一人、見覚えのない大人の男が写っていた。背景は暗く、場所を特定するのは難しいが、その男の表情は冷酷そのもので、亮の肩に手をかけている様子は、どこか支配的に見えた。
「この男……」藤崎は写真を橘に見せた。「知ってるか?」
橘は写真を見て、さらに顔を青ざめた。「……私は知らない。でも、亮がこんな人と関わっていたなんて……」
その時、倉庫の外から何か物音が聞こえた。藤崎は瞬時に反応し、橘とともに振り向いた。扉の外に何者かの気配がある。誰かがこちらの様子をうかがっているのだろうか?
「誰だ?」藤崎は問いかけたが、返答はない。外の気配はすぐに消え、足音すら聞こえなくなった。
藤崎の脳裏に、録音された男の声が蘇る。亮が追い詰められ、命を奪われた原因。それは、今なお学園に潜む何者かが関与しているのではないかという疑念を強めた。事件は終わっていない。まだ見えていない真実が、この学園のどこかに潜んでいる。
彼は再び橘に目を向けた。彼女の表情には不安と恐怖が浮かんでいた。だが、今は彼女を責める時ではない。まずは、次の行動を考えるべきだ。
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読者様向けメッセージ
「藤崎は箱の中から、学園の不正を示す書類、録音機、そして亮と謎の男が写った写真を発見しました。事件の背後には、亮が関わっていた取引と、それを強要した何者かがいる可能性が浮上します。さらに、倉庫の外から聞こえた物音――この事件はまだ終わっておらず、学園には謎が渦巻いています。次にどのように行動すべきか、藤崎の選択が事態を動かします。」
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選択肢
1. 録音機と写真を手に、橘と共に警察に報告する。
2. 学園内の関係者に尋ね、この謎の男について調査を続ける。
3. 橘を安全な場所に送り、自分一人で調査を続ける。
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藤崎翔の次の行動は、事件の真相を左右する鍵となります。録音機の内容や写真に映る男の正体、そして学園内に潜む謎に迫るための選択をしてください。決断は20時までにお願いします。
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