クールなツンデレ幼女と、病み病みお兄さん登場

暗くてジメジメした道を、一歩ずつ足で踏み潰してゆく。一歩踏み出すごとに汚い液体が靴についた。


「私達にはね、ちょっとしたアジトみたいなものがあるの。ちょっと暗いけど雰囲気がとってもいいところなんだ!ぜーったい気に入るよ!」


フラッペちゃんは移動中も熱心に話しかけてくれた。

しかし悪者のアジトに連れていかれるという恐怖で、僕はそれどころじゃなかった。

だって、あの『ピエール・ティンクラ』だよ!?マフィア的な組織だよ!?薬とか人攫いとか平気やってる、ブラック企業も真っ青な集団だよ!?!?

たぶん五体満足では返してくれないだろう……

ていうか最悪、「部外者は必要ない。排除してしまおう。」とか言って、海に沈められたりするんでは………


最悪な想像により、僕の脚はガクガクと震えだす。

さっきまで告白してた男とは思えない情けなさだった。


「さ、着いたよ!ここが私たちのアジト。ゆっくりしてってね~。」

「え、ここ………?」


フラッペちゃんが指差したのは………ビルの間に挟まれた、小さなカフェだった。扉のガラスにはヒビが入っている。もう何年も手入れされていないようだ。

一見ただの閉店したカフェにしか見えない。こんなとこがアジト……?


彼女は扉を押し開ける。

カフェの店内は真っ暗だった。カウンターにも店員らしき姿はない。やはりだいぶ前に潰れたカフェのようだ。

しかし…そんな寂れた店内の席に、座る者が二人いる。


一人は、小さなバッグを背負ってワンピースを着ている、小学生くらいの女の子。ショートボブの髪型が可愛いらしい。

しかし、その顔はなぜかムスッとした表情になっていた。まぁそれですら可愛く見えちゃうけど………


もう一人は、コートを着たロングヘアの男の人だった。

スプレーでも使ってるのか、少しだけ髪が緑っぽい。緑というか、深緑って感じの不思議な色だ。彼はニコニコと柔和な笑みを浮かべている。

なんか優しいお兄さんって雰囲気だ。


「フラッペ、話ってなんだ?このあたしをわざわざ呼ぶほどの事なんだろうな?」

「フラッペちゃん、こんにちはッス~!隣にいるのは彼氏ッスか?ハハ、なんちゃって……」


二人はそれぞれ話しかけてくる。

意外にも、女の子の方が硬派な口調だった。逆にロングヘアの男の方はおかしな口調で話している。

この人たちは誰だ…?


そう思っていると、フラッペちゃんが口を開いた。


「みんな、紹介するね!この人はエルメス!私の………新しい彼ピッピで~す!じゃ~ん!」

「…………………………はぁ?何言ってんだお前…………」

「え、またッスか………あ、いや、おめでとうっス~!すご~い!」


女の子は呆れた表情を浮かべて。ロン毛男はどう見ても今作りましたって感じ笑顔で祝ってくれた。


………いや、明らかに祝ってくれてるってムードじゃない………

それどころか二人とも憐れみの目を向けてくるんだけど………


「エルメスくん、とりあえず席に座ろっか。私のお友だちを紹介しなくっちゃね。」

「あ、うん…分かったよ。」


僕は彼女が促すままに、カフェの一席に腰を下ろす。フラッペちゃんはわざわざ僕の隣に座ってくれた。

そして僕に向けてニコリと微笑む。

うっ…今、不覚にもドキっとしてしまった……やっぱりこの子のこと好きだなぁ………

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