第31話:ヘタレなベンジャミン。
「誰?大家さん?・・・宅配?」
そう言って健斗がドアを開けると死人みたいな顔をして山高帽をかぶった全身黒づくめの男が立っていた。
右手に杖を持って左手にパイプを持って・・・。
健斗は男の頭からつま先までナメるように見た。
(わ〜死神か貧乏神みたいだな・・・実物は見たことないけど)
「あなた、この家の主人?曽我部 健斗しゃんれふね」
「そうですけど・・・」
「パンさんは?・・・パンさんはいらっさいまふか?」
「あの・・・あんた、誰?」
「なんでパンに用があるの?・・・パンを知ってんの?」
「へ〜パンさんとは向こうの世界で馴染みれひて・・・」
「幼馴染?・・・じゃ〜パンと同じ世界から?・・・ふ〜ん、そうなんだ
・・・で?パンに、なんの用?」
「あたなと話してもラチがあかないことれす」
「いやいや、いきなり訪ねてきてパンを出せって言われてもな・・・」
「いきなりでは、ありましぇん」
「昨日もお邪魔させていたらきまひたが・・・」
「申す送れまひたが・・・ワテ、パンさんと同じ世界から来たベンジャミンと
申しまふだ・・・ 」
「ベンジャ・・・ミン?」
「ベンジャミンさん、あんた日本語、おかしくない?」
「そうれふ か?普通れすけろも・・・」
「パンさんにお話しせねば、ならないことがあるのれふ」
「なんだかな〜・・・パンが現れてから俺の人生変わってきてるな〜」
「どうみたって、あんた言っちゃなんだけど死神か疫病神にしか見えないん
だんだけど・・・」
「そういう類のものではありましぇんけろも・・・」
「これでもパンさんと同じ精霊のはしくれれふからして」
精霊と言われても・・・健斗は男の精霊なんかいるのかって思った。
すると健斗の横からパンが顔を出した。
「あっ、ベンジャミン・・・また来たんですか?」
「パンさん・・・はい、お邪魔しまふ・・・」
「何度、訪ねてきても同じですからね・・・」
「いやいや・・・」
「あのれすね・・・ゼヌス様が、どうしてもパンさんにお伝えせねばいけないことがあると言うのれ私が代わりに伝えに来まひたのれふよ」
「何の話し?」
何も知らされてない健斗。
「なんでも、ありませんよ」
「何度来ても同じです・・・私は帰りませんから」
「だから、何の話って?」
「曽我部っちは知らなくていいことです」
「そういう訳にはいかないだろ?俺の彼女のことなら知っとかないと・・・」
そこでパンはベンジャミンが来た訳を健斗に話して聞かせた。
「なんだと・・・そのゼヌスって野郎、ここにまで手を伸ばして来たのか?」
「そうでしょ、だからね、もう来なくていいって言ってるんです」
「いやいや、あなたたち、なにか勘違いしてまふよ」
「ゼヌス様も最初はパンさんを連れ戻したいと思ってたみたいれふけろ・・・
今はパンさんを連れ戻すつもりはないようれす」
「勝手なこと言いやがってパンは絶対返さないからな」
「つうか、なんで、あんたが代理みたいに来てゼヌス本人が来ないんだよ・・・」
「ゼヌス様は、なにかとお忙しいんれふ」
「ひとりのニンフに、いちいちカマっていられないんれふよ・・・」
「なんて自己中なんでしょ」
「じゃ〜なおさらだよ・・・」
「パンは今、幸せにやってるんだ、放っておいてくれってゼヌスに伝えとけ」
「分かったら、とっとと帰れ!!」
健斗はけんもほろろににベンジャミンに突っかかって右腕を振り上げた。
ベンジャミンはすごい情けない格好で後ろに下がった。
「暴力反対」
「冷静に・・・話せば分かりまふって・・・」
「だから、パンさんを連れ戻せって言われてないって言ってるれひょ」
「ゼヌスの使いってわりにヘタレなんだな、おまえ」
「あなたをこの世から消し去ることくらいのことは普通にできまふけろ・・・」
「なんなら消してさしあげまひょうか?」
「そんなことできるのか?・・・いやいやいや・・・そ、そう言うことは先に
言えよ」
つづく。
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