第28話:ニンフちゃんは大量に睡眠を取る。

ディズニーランドの独特の雰囲気はパンがいた時代とシンクロしたのかどうか

パンは少しだけナーバスになった。

急にパンがおとなしくなったので、もしかしたらホームシックにかかったん

じゃないかと健斗は心配した。


さすがにパンも疲れたのか帰りの電車の中で健斗にもたれて寝てしまった。


「彼女ちゃん、帰りがけなんか元気なかったんじゃないか?」


吉岡くんが言った。


「そうだな、きっと遊び疲れたんだよ・・・」


「それはそうと、おまえもうやっちゃったんだろ?彼女ちゃんと」


「まあな・・・今度は嘘偽りなくな・・・なんてったって不思議とアレルギー

出なかったし・・・」


「でも、なぜか触れることができるのは彼女ちゃんだけってのも、おかしな

話だな?」


「パン以外、他の女子だと相変わらずアレルギーがでるんだ・・・」


「そうか・・・まあ、いいじゃん、他の女なんてもう必要ないだろ?」

「いいな、おまえは、こんなナイスバディーで綺麗な彼女がいて・・・それに耳が

尖ってる女なんてレアだぞ・・・貴重価値100%以上だよ」


「そうだな、みんなから耳が尖ってることを指摘されるけど、それがパンの個性

でもあるんだよな」


「あ〜あ、おれも、どこかにいい子いないかな〜セックスしない〜?って迫って

来るような女」


「それってパンのこと言ってるのか?」


「違うよ・・・俺もゴミ箱から俺のこと好き〜って言う女出てこないかな・・・

それとも街でナンパでもしようかな」


吉岡君は星空を見ながら言った。


「まあ、せいぜいがんばれよ」

「下手な鉄砲も数打ち当たるって言うし・・・」


電車がホームについてもパンは起きなかった。

しかたなく健斗は吉岡君に手伝ってもらってパンをおんぶした。


「おい、パンツ見えてるぞ・・・」


「あ〜短いの履いて来てるからだよ・・・おんぶさせられると思わなかったし」


「おまえが気をつけてジーンズにするとかアドバイスしてやれよ」


「いいよ、起きないんだからしかたない」


「あ、俺、こっち・・・じゃ〜な健斗・・・方向違うから・・・またな」


「ああ、今日は付き合ってくれてありがとう、またな」


吉岡君と駅のホームで別れた健斗はパンをおぶったままホームを出た。


途中自販機で飲み物を買って、ベンチにパンを下ろして休憩したがそれでもパンは

起きなかった。

まるで死んだみたいに寝ていた。

どうやら精霊は一度寝ると眠りが深いみたいだ。


パンが爆睡してるのには理由があった。

ニンフちゃんは大量に睡眠を取ることによってエネルギーを充填してるのだ。

まるで猫ちゃんみたいに・・・。


健斗はちょっと心配になってパンの顔に自分の顔を近づけた。

かすかな息を感じた。


「爆睡だな・・・」

「でもパンのおかげだな・・・君の言葉に救われたよ」

「僕に生きる意味と勇気を教えてくれたもんな、ありがとう」


健斗はパンが寝てるのをいいことに、自分の顔を目一杯下から持って行ってパンの

クチビルにキスした。


「こんな時じゃないとゆっくりキスさせてくれないだろ?・・・」

「いつだって激しいから、パンは・・・」


キスした後もアレルギーはやっぱり出なかった。

そして健斗はまたパンをおぶって、とぼとぼ、ふたりのアパートへ帰って行った。


つづく。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る