第23話:マイ・プレシャス。

心配していたパンが大家にバレるとやっかいかもな件は大家がパンを気に入った

ことであっけなく片付いた。


健斗がパンを抱けないからか、パンは暇を持て余すと大家の部屋に遊びに行って

いた。

パンが部屋にしないとそれはそれで、何かが足りないと思う健斗だった。


最近、健斗はパンの思いにも応えてやりたいと言う思いが強くなっていた。

ただ女性と、はじめて生行為をするってことに対しては尻込みしていた。

初めての上に女性アレルギーと来ている。

その上に初体験と言うのは戸惑いや緊張があるものだ。


でもせっかく買ったコンドームをゴミ箱に捨てない済めばいいって思った。


いくら女性アレルギーと言ってもパンを見てその魅力を感じない、また

セックスがしたいって思わない男は正常とは言えない。

動物の社会なら致命的だ。


健斗はパンの魅力は充分すぎるくらい感じていた。

だから、いつしか健斗は本気でパンを好きになっていた。


パンはパンで、ずっと男なしの生活で性欲が爆発しそうだった。

でもカップ麺が、それをかろうじて抑えていた。

思い切り自分を解放したかったので、もう誰でもいいとさえ思ったが、

過去にあることがあってパンは自分に誓いを立てた以上それを破ることは

いけないと思っていた。


そして健斗とパンの関係はなかなか進展しないままパンは少しづつ元気を失く

して行くようだった。

そんなパンを見て健斗はパンのことが心配だった。


(これじゃだめだ・・・このままならパンは死んじゃうかもしれない)

(パンを救えるのはたぶん、俺だけだろうな・・・)

(パンがちゃんと動けるうちになんとかしてやらないと・・・)


健斗は、自分が女性アレルギーだってことなんかよりパンを救うことを優先した

かった。

大家のところに行ってない時のパンはよく横になることが増えた。


「パン・・・大丈夫?」


「曽我部っち・・・まだ大丈夫ですよ、私」


「心配だな・・・俺はパンが衰弱していくのなんて見たくないよ」

「目の前で愛しい人が弱っていく姿なんか見たくない・・・」

「もし、そんなことになったら俺は自分を許せなくなるよ」


「今、なんて言いました?」


「だから、そんなことになったら・・・」


「その前です」


「パンが衰弱してくのなんて・・・」


「もう、なんでよ・・・・そのあとぉ」


「ああ・・・あの目の前で愛しい人が弱っていく姿なんて・・・」


「愛しい人って?・・・私のこと愛しいって思ってくれるんですか?」


「それやそうだよ、俺、パンを愛してるもん、今はそうだってはっきり分かるよ」


「ほんとに?・・・ほんと? 嬉しいです、私」


「だからさ、なんとか頑張ってあげたいんだ」

「パンを思いっ切り抱きしめしたい」


「うん、来て来て・・・ほら来て、思いっきり抱いて」


「で、でもな〜・・・」


つづく。

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