第20話:せ、せいねんがっぴ?。
商店街の派出所に着いた健斗は、おそるおそる派出所の中を覗くと、
50そこそこの、おまわりさんひとりと椅子に座ってるパンがいた。
(よかった、ちゃんと服は着てるな・・・)
「あの、すいません・・・」
そう言って悠生君は派出所の中に入った。
「はい?・・・」
「君は?」
「あ、曽我部っち、迎えに来てくれたんですか?・・・嬉しい」
「嬉しい、じゃないよ」
「家にいろって言っただろ・・・うろうろしちゃだめだって」
おまわりさんは、訝しげに健斗を見た。
「あ、すいません、俺、曽我部 健斗って言います・・・この子の」
「あ、保護者の方?」
「はい、そうです」
「あ、この子は俺とは腹違いの妹でして・・・」
「父親が外国に出張で行ってるときに現地の女性と・・・」
人は焦ってるときに限って大ウソを口走るもんだ。
「助かった・・・この子に話を聞いてもね」
「ゴミ箱から出てきたとかセックスしないと死ぬとか、もう支離滅裂でね」
「助かったわ・・・」
「お嬢ちゃん、もう無銭飲食なんかしちゃだめだよ」
「君〜無銭飲食だよ、無銭飲食」
「今どきホームレスじゃあるまいし、こんな若い子がありえんでしょ」
「すいません、お手数おかけしました」
「 お金は払いますから」
「お金なら満腹食堂だよ、あとで満腹に払っといて」
「まあ、今回は初犯だし・・・本人もよくわかってないみたいだから」
「調書だけ取らせてもらったら連れて帰ってもらっていいよ」
「この子が書けないって言うからね・・・君、代筆で頼むよ」
「この書類に書いてくれる、当人の住所、生年月日に名前」
そう言われた健斗は、まじでか?と焦った。
「ちょっと聞くけど・・・この子の耳、尖ってるよね」
「あ〜それですか・・・整形したんで、ああなってるんです」
「そうなの?、耳をわざわざ整形?変わった子だね」
みんなパンの耳に食いつく・・・まあ普通はそこだわな。
さて調書書けって言われた健斗だったがパンの情報がなさすぎた。
(・・・書けないでしょ)
(住所・・・まあそれは俺の住んでるアパートでいいとして)
(生年月日・・・・せ、せいねん・・・がっぴ?)
(名前だって、ワインが苗字なのか名前なのか聞いてないし)
「あの、生年月日とか分かんないんですけど・・・」
「え?君、保護者なんだろ?この子の」
「知らないのか?・・・」
「だって私、ゴミ箱から出てきましたから・・・ね、曽我部っち」
「ほら、まだ言ってるよ」
「余計なこと言うと話がややこしくなるからパンは黙って、ね」
「は〜い・・・」
「あ〜この子の言うことは気にしないでください・・・」
「それよりすいません、この間まで、この子外国にいたもんで・・・」
「国籍だって日本じゃないし・・・だから生年月日とかよく分からないんです」
「困ったね・・・君」
「まさか不法入国なんてんじゃないよね」
(みたいなもんだけど・・・)
「違いますよ」
「思い出しました・・・書きます、生年月日」
悠生君はパンの生年月日をパンの歳くらいから計算して適当に書いた。
と言ってもパンが何歳なのかも、まだ聞いてなかった。
パンが今、17歳だとして計算した・・・。
アパートの住所を書いて生年月日は2005年 1月28日・名前は曽我部 パン
連絡先・・・健斗は自分のスマホの番号を書いた。
1月28日は実は母親の誕生日の日付だった。
多分、これを照合しても該当する人物は見当たらないわけでもし、ウソだと
バレたら、また警察から呼び出しを食らうのかなって健斗は思ったがウソでも
いいから、とりあえずこの場をなんとか乗り切らなきゃと思った。
調書に記入して、それでパンはなんとか釈放された。
健斗は帰りに満腹食堂に寄った、
満腹食堂のおやじは健斗とパンを見て言った。
「あんたね、この子の兄弟?彼氏?・・・ちゃんと面倒見てないと・・・」
「すいませんでした、ご迷惑おかけしました」
「たかがコロッケ定食だけど・・・食い逃げはよくないね」
おまわりさんに謝って食堂のおやじにも謝ってコロッケ定食代を弁償して、
散々な健斗だった。
少しは反省してるのかと健斗はパンを見たが・・・パンのつぶらな瞳に
見つめられて何も言えず、ただため息をつくばかりだった。
つづく。
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