第18話:俺の彼女だよ。
「おはよう〜健ちゃん・・・いる?」
母親が来るって言うので落ち着かない健斗だったから、なんとなくウソを
つくって言う後ろめたい気持ちでいたため、その声を聞いてドキッとした。
「あ、おはよう母ちゃん」
挨拶した健斗を見て母親は言った。
「うん、元気そうね・・・変わったことない?」
どこの母親も同じことを言う。
ぐるっと部屋の中を見渡した母親はベッドの横にちょこっと座ってる女を発見した。
ご多聞にもれず、しばらく固まっていた母親が言った。
「健ちゃん・・・女の人がいるけど?」
「あ、紹介しとくよ俺の彼女」
「か、彼女?」
「いつの間に・・・っていうか健ちゃん、女性アレルギーでしょ」
「彼女はね、不思議と大丈夫なんだよ」
「そうなの?」
「彼女パンって言うんだ・・・」
「パンです、はじめまして曽我部っちのお母様」
パンは健斗の母親にちょこんとお辞儀をした。
「お、お母様?」
「あ、はじめまして・・・あのパンさん?」
「外人さんなのね」
「健ちゃん、この子・・・あの、気づいたんだけど言っちゃってもいのかしら」
「え?なに?なにに気づいたって?」
「この子の耳、尖ってない?」
「またそこか・・・あれは特殊メイク、コスプレ好きだからああ言うキャラの
真似事をしてるんだよ・・・ああ言う形してるイヤホンだよ」
「変わった趣味の子ね・・・」
「それにしても電話でも何も言ってなかったじゃない、彼女がいるなんて」
「あはは、言いそびれただけだよ」
「なんか、こんなことになってるなんて知らなかったからお母さんちょっと
ショック・・・」
「なんでだよ・・・俺にだって彼女くらいできるよ」
「健ちゃんの女性アレルギーが出ないってことは喜ばしいことだって思うわよ」
「でも、いきなり彼女って・・・複雑・・・」
母親も乙女なのだ。
健斗を自分の可愛い息子を、どこの誰だか知らない女に取られたと思って
かすかなヤキモチを焼いたりしている。
母親にとってパンは、ある意味においてライバルなのだ。
結婚もしてないのに姑と嫁の醜い争いが目に見えていたかもしれない。
万が一健斗とパンが本格的に暮らしはじめたらの話だが・・・。
「あの、お母様・・・曽我部っち、私が彼女なのにセックスしてくれないんですよ」
「は?・せ・せっくす?」
「パンは余計なこと言わなくていいんだよ」
「今のは冗談だからな・・・この子は時々ああ言うこと言うんだ」
「だって、今、はっきりセックスって言ったわよね」
「汚れのない瞳でセックスって・・・」
「私、曽我部っちがセックスしてくれないと干からびて死んじゃうんです」
「おい、セックスって言うなって言っただろ」
「黙ってろって・・・」
「死んじゃうって言ってるけど・・・」
「母ちゃんも真に受けない・・・本気で言ってるわけじゃないんだから」
母親はパンに聞こえないよう声をひそめて言った。
「この子大丈夫なの?」
「帰国子女だからさ、よく分かってないんだよ」
「外国にいらっしゃったの?」
「そうだよ」
「そう、まあ・・・変わった子ね」
「曽我部っち、セックスしようよ」
「黙れ!!」
「もし、できたとしてもなんで母ちゃんの前でしなきゃいけないんだよ」
「あ、私、めまいがしてきたわ・・・あの・・・健ちゃんお母さん今日は
これで帰るわね・・・」
「え?今きたばかりなのに?」
「なんかね、最近更年期障害みたいて疲れやすいの・・・」
「そうか・・・じゃ〜早く帰ったほうがいいよ・・・早く帰ってゆっくりしなよ」
「なんで、そんなに急いで追い返そうとするのよ、怪しいわね」
「被害妄想だよ」
「母ちゃんが自分から帰るって言ったからだろ!!」
「そうだったわね・・・パンさん?、ちょっと不本意だけど健ちゃんのこと
よろしくね」
「お母様・・・もう帰っちゃうんですか?」
「まだいいじゃないですか・・・ね、それより三人でしましょうよ・・・セックス」
「あ、まためまいが・・・」
「早く田舎に帰ったほうがいいぞ、母ちゃん」
つづく。
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