第16話:目から鱗のニンフちゃん。
次の日、健斗はパンを連れて外に出てみようと思った。
いつまでも部屋に閉じ込めて置くわけにもいかないと思ったからだ。
相変わらずパンは朝、昼、晩、三食カップ麺を食べていた。
他のモノは、まったくと言っていいほど食べなくなった。
健斗にしてみればパンがカップ麺を食べてくれていたら余計な献立を
考えなくてよかったので非常に楽だった。
パンもカップ麺を食べてる限りでは干からびるってこともないようだった。
「君さ・・・パンって、そのセックス以外に特技とかないの?」
「料理が作れるとか・・・掃除とか洗濯ができるとか・・・」
「できません、セックスしかしてこなかったですからね」
「あ〜そうなんだ・・・飯くらい作ってもらえたら助かったのにな」
「作ってもいですけど、たぶん一口食べたら吐いちゃうと思いますよ」
「覚える気もないよね」
「ないです」
「はっきり言うね・・・努力しますって言えない?」
「セックスしか・・・」
「あ〜いい・・・聞いた俺がバカだった」
「なんかもうセックスって言葉が頭にこびりついてるよ・・・ああ悶々する」
「ダメだ、このままいたらパンの誘惑に負けてしまう」
「まあ、負けたところで、たぶんパンを触るとアレルギーの発作がでるだろう
けど・・・」
「予定通り今日はパンを連れて、街に出てみるかな・・・」
そう思った健斗、彼女を連れて街へ出かけた。
まず電車。
乗ったことなんかない電車、パンにとっては目から鱗。
見るもの聞くもの全部初体験。
子供の頃には初体験はワクワクしたもんだけど、パンもそんなもの
どちらにしてもパンには高くそび立つビルや人々の多さは驚きの連続だった。
だから健斗はパンから質問攻めにあって大変だったわけで連れてきたことを
ちょっと後悔したりした。
家にいたら誘惑されるし外に出てもウザいし・・・。
「ほら、ちゃんと前向いて歩かないとつまずくよ、危ないから」
アレルギーがあるからワインと手を繋ぐこともできない。
パンは逆に健斗に手をつないでほしかったので彼のウデにすがった。
健斗は、つま先から脳天までぞわっとした。
「わ、悪いけど、ウデ離してくれる・・・」
「あ、そうでした・・・ごめんなさい」
「いいよ、謝らなくても、僕が悪いんだから・・・」
「パンと一緒に生活してたら少しは慣れたっていいって思うんだけどな・・・」
「大丈夫ですよ・・・そのうちできるようになりますよ、触れることだって」
「そうなるといいけど・・・」
「あ〜あ、俺がいっぱい金持ってたらディズニーランドにでも連れて行って
やったんだけどな・・・」
パンに高いものは買ってやれなかったが、それでもウインドショッピングやら
ふたりで仲良くハンバーガーなんか食べたり、たこ焼き食べたりソフトクリームを
食べたり・・・そう言うのでも一番喜んだのは当然パンだった。
食べたことないものばかりだったから。
たぶんアフリカの現地の方たちが日本に来て目を丸くするのと同じで
パンにとっては、この世界の文明はおとぎの国にでも来てる感覚だっただろう。
でも、女性とまともにデートしたことがなかった健斗はこの外出はとても新鮮で
まんざらじゃなかったみたいだ。
パンさえ、質問攻めしてこなければ・・・。
健斗よりも、だらにパンにとっては有意義な時間と言えただろう。
しかもパンはキャンキャンのモデルみたいに可愛くて神秘的で抜群の容姿
を持っていたので街ですれ違う男どもの注目の的だった。
そのことは健斗にとって、この上ない優越感だった。
「この子は俺の彼女だぞ」
って吹聴して回りたいくらいだった。
そんな嬉しいこともあったが、やはり家にいたらいたでパンに迫られていた。
「なんか、もう慣れたよな・・・」
まあパンとセックスはできないけど、それでも今もしもパンがいなくなったら
きっと寂しくなるだろうなって健斗思った。
「なんだよ、俺・・・パンを好きになってるのか?」
そんな自分の心の動きに、ふと気づき始めた健斗だった。
だから、もうパンは健斗の心の中に入り込んでるのだ。
パンが健斗の顔にフェロモンを吹きかけた時から健斗はパンの魅力からは逃れら
れなくなっていた。
パンの誘惑のフェロモンはちゃんと健斗に効いていたのだった。
つづく。
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