第15話:曽我部っちだけですよ、私を抱ける権利があるのは。

「健斗、この子大丈夫か?」


「あはは、人間じゃないから日本語の使い方間違ってるんだよ」

「だから、意味も分からず言ってるんだって・・・相手にするな」


「ね、健斗のカノジョ〜、なんて名前?」


「パンです」


「パンちゃんか・・・」


「ねえ、お兄さん、早くセックスしようよ・・・」


「まだあんなこと言ってるけど・・・真に受けていいのかな?」

「やっちゃうよ俺、友達の彼女でも」


「おまえみたいな鬼畜がいるから性犯罪が減らないんだよ」


「だってセックスしたがってるし・・・」


「やめろ・・・俺の彼女に手を出すな・・・」


「なんかどこかで聞いたことあるようなセリフ」


「ノーマン・パナマ、ラリー・ゲルバート、ピーター・バーンズの、3人の

共同脚本を、 ノーマン・パナマが製作・監督したセックス・コメディ映画

の題名だよ」


「そうなんだ・・・そんなどうでもいいことよく知ってるな健斗」


「とにかく、この子はちよっと頭がこんがらがってるんだ」

「だからさ、なにを言い出すか分かんないんだよ」

「冗談だと思って聞き流してといてくれ」


健斗は適当な言い訳をした。


「そんなのはどうでもよくて、こんな可愛い子を前にしてやりたくない 男なんて

いないだろう? 」

「あ〜想像しただけで発射しそうだわ」


「女の子の前でそう言う低レベルな発言するな」


「健斗、一晩でいいから、この子貸してくれない?」


「貸すとか貸さないとかパンをモノみたいに言うなって・・・」

「AVじゃないんだぞ、それになんで自分の彼女をおまえなんかに貸さなきゃ

いけないんだよ 」


「私、セックスできるなら貸し出されてあげてもいいですけどぉ〜」


「ほら彼女ちゃんも、ああ言ってるし・・・」


「パンは余計なこと言わなくていいんだよ」

「だから、おまえも彼女の言ってることを真に受けるなって」

「ああいうのは日常茶飯事で俺にもよく言うんだから」

「ほら、漫画返したら、もう用事ないだろ・・・帰った帰った」


「でもさ〜健斗おまえにはもったいないよな、この子」


「いいから帰れ・・・なにも言わず帰れ」


「ってか、おまえこの子とまだやってないんだろ?」


「やったとか、やってないとかそんなこと、おまえに関係ないだろ」


「あ〜そうかまだやってないんだ?」

「そうだよな健斗、女ダメだもんな、あるわけないか?」


「そんなことないし・・・もう、とっくにやってるよ」


「お兄さん・・・曽我部っち、嫌がってセックスしてくれないんです・・・」


「は〜なるほどね、おまえ見栄はって・・・」

「彼女が言ってることのほうが正しいんだ」


「もういいから、帰ってくれ」

「おまえに言われなくても、ちゃんとやるよ、そのためにコンドームだって

買ってきてるんだからさ」


そう言って健斗は誇らしげに薬局のナイロン袋からコンドームを出して

吉岡君に見せた。


「そんなもん、使うのか?おまえ・・・楽しみが半減するだろ」


「だって妊娠させちゃマズいだろ」


「真面目だね、健斗は・・・」

「ま、ぜいぜい楽しめば・・・ってか、おまえ、まず先に女性アレルギー

克服しろよ・・・それが先だな」


「・・・・・」


「そんなトラウマ早く治して彼女ちゃん抱いてやらないと可哀相だぞ」

「ほったらかしにしてるから俺とセックスしようなんて言うんだよ」


「おまえに言われなくても分かってるよ、もう帰れ」


「分かった、帰るわ・・・おまえと押し問答しててもしょうがないからな」

「どうも、お邪魔しました」

「パンちゃん、また遊びに来るからね、ばいばい」


「お兄さん帰っちゃうの?」


「うん、漫画返しに来ただけだからさ・・・じゃ〜ね」


そう言って吉岡君は帰って行った。


「ふう、よりによって吉岡かよ」

「一番見られたくないヤツに見られて、一番知られたくないヤツに知られたな」

「あのさ、もう誰にでもセックスしようなんて言っちゃだめだからな」


「分かってます、全部冗談です・・・」

「曽我部っちだけですよ、私を抱ける権利があるのは」


「権利?って、なんだよそれ」


「だから曽我部っちがいつか女性アレルギーをめでたく克服したら、お祝いに

私とセックスできる権利をあげますって言ってるんです」


「なに、勝手にそんなこと決めてんの・・・」


「うん、まあいろいろありまして・・・今の私は好きになる人は一人って決めて

るんです・・・その人しか愛さないですから」


「へ〜、まあとにかく他の男に色目使わなきゃいいだけだよ」

「あ〜あ、俺の女性アレルギーなんとかならないかな・・・」


手に持ったコンドームを虚しく見つめる健斗だった。


つづく。



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