第14話:吉岡君。

その日も1日なにも起きないで終わるのかなって思っていた。

でも、いきなり部屋のドアを叩く音がした。


「健斗いる?」


「ん、吉岡?・・・まじでか?」

「ちょ、ちょっと待て・・・って言ってもな・・・」

「パンは隠せないし・・・とりあえず、ここは彼女ってことで通そう」


ってアタフタしてるうちに悠生君のダチの吉岡君が自分の部屋みたいにずけずけ

入ってきた。

ま、それは普段から吉岡君の普通の行動だったから・・・。


「健斗、借りてた漫画返しにきたんだけど・・・」


吉岡君が六畳の部屋に入ってくると、立ってうろうろしてる健斗とヘッドホンして

ノリノリになってる女が目に入った。


「誰?」

「健斗・・・誰?この人・・・てかなにやってんだ?・・・」


吉岡君は背中を向けて曲を聴いてるパンを指差してもう一度言った。


「だから、だれ?」

「・・・女?だよな」

「おまえ、ここ女ダメなんだろ?」

「なのに、なんか連れ込んじゃってるし・・・」

「どこから見ても男には見えないわな・・・もしかしてニューハーフとか?」


「違うわ・・・れっきとした女だよ」

「この子・・・俺の彼女・・・」


「彼女?」


「あれ?おまえアレルギー克服したのか?」


「ま、そういうところだな、あはは」


「・・・嘘つけ」


「お〜い健斗の彼女?」


吉岡君は自分の声が聞こえるようにパンの近くに行ってもう一度同じことを言った。


「お〜い、ゆうせいのか〜の〜じょ〜」


吉岡君に呼ばれたパンはヘッドホンをはずして振り向いた。


「はい?」


「へ〜超美人じゃん・・・しかも外人だし」

「おまえ、こんな綺麗な子どこで拾って来たんだよ」


「拾ったって・・・捨て犬みたいに言うな」

「街でナンパしたんだよ」


「へ?、おまえがナンパ?ありえん話・・・おまえが?」

「ナンパ?・・・ないない」

「ってか、この子耳、尖ってないか?」


「突然変異だろ・・・」


「へ〜ミスタースポックみたいでめちゃカッコイイじゃん」


「ミスタースポックは古いって・・・それを言うならエルフだろ」


「ねえ、お兄さん、誰?」


「健斗のお友達・・・俺、吉岡って人・・・よろしくね」


「おともだち?」


「そうだよ健斗の彼女ちゃん」


「お兄さんでもいいわ・・・セックスしません? 私と」


「お〜っといきなりそれ?」


「あはは、この子の口癖みたいなもんだから気にしなくていいから」


「あのさ、おまえ街でナンパなんて言ったけど・・・ほんとは違うだろ?」

「おまえはそう言うタイプの男じゃないし女性アレルギーが女に声かけるわけ

ないもんな・・・」


「だってよ・・・本当にナンパしたんだし・・・」


「本当のこと言え・・・」


「・・・たぶん言っても信じないと思うぜ」


健斗は、しかたなくパンと知り合った経緯を吉岡君に話して聞かせた。


「ほう〜なるほど・・・でもまだナンパのほうが信ぴょう性ありそう」


「信じてないだろ、おまえ」

「そうだよな、信じないよなそんな馬鹿げた話・・・」


「まあな健斗、そんな話をすぐに信じろってほうが難しいだろ?」

「なんかさ、証拠でもあったら信じてやってもいいけど」

「俺もさ、面白い話とか変わった話、嫌いじゃないからさ・・・」


「証拠なんてないさ、唯一はこの子の尖った耳くらいだよ」

「あとは人間と同じ・・・あの耳・・・あれだけは本物だからな」


「あ〜耳ね・・・たしかにな、つけ耳じゃなきゃな」


「なんでそんな手間のかかること俺が自分の彼女にさせるんだよ」

「そんなことしたって意味ないだろ」


「確かにな・・・分かった・・・信じてやるよ・・・半分だけな」


「まあいいわ・・・おまえが信じようが信じまいがこれが現実なんだからさ」


「ねえ、ねえ、お兄さん私とセックスしましょうよ」


「まだ言ってるぞ・・・この子」

「おまえの彼氏なのに男なら誰でもいいのか?あ、おまえがアレルギーだからか

お前ができないから彼女ちゃんは俺と浮気しようとしてんだ・・・今時だよな」


つづく。



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