第13話:パンツの履き方の講習。

健斗はヒヤヒヤもので女性用パンツを買ってアパートに帰って来た。

パンはちゃんと留守番をしていたのでホッとした。


家族って言っていいのか・・・家族がひとり増えると大変だなって健斗は思った。

でも、今更もしパンがいなくなったら、それはそれで寂しくなる気がした。


「おかえりなさい・・・ねえ」


「言うなって・・・それ以上言うな・・・」


可愛い子から、毎日のようにおかえりなさい、なんてこと言われるとまんざら

でもない健斗。

まるで新婚さんみたいで悪い気はしなかった。


「いろいろ買ってきたから・・・」


「ありがとうございます」


「服はとりあえずこれだけあったらいいだろ」


「一度にそんなにたくさん着れません・・・」


「誰が一度に着れって言ったんだよ、そうじゃなくて・・・毎日とっかえて

ひっかえ一着ずつ着るの・・・」

「服も着替えないでいたら臭くなるし汚れるからね」

「郷に入っては郷に従えって言うだろ」


「なんですかそれ?」


「なんて言ったらいいのかな・・・ここは君がいた世界とは違うんだから

ここで暮らすならここの環境に慣れた方がいいよって言ってるの」


「ほう・・・なるほろ・・・分かりました」


「素直な時は可愛いんだよな・・・」


悠生君はぼそっとそう言った。

パンは新しい服に着替えながら悠生君の言ったことに反応した。


「誰が可愛いですって?」


「君はパンはセックス・セックス言わなきゃ可愛いのになって言ったんだよ」


健斗は適当なことを言ってごまかした。


「さっきはそんなに長いセリフじゃなかったですけどぉ〜」


「いいから・・・」


「はい、パンツこれ・・・自分で履いて」


「なんですか、この布切れ」


「この時代の女性はそういうの履いて生活してるんだよ」


「?」


パンは分からないってふうに健斗のほうを見て首をかしげた・・・。


「あ〜もうしょうがないな・・・」


そう言って健斗は買ってきたパンツを自分のズボンの上から履いて見せた。


「こんな感じね」


「え?服の上から履くんですか?」


「違うよ、服の下に履くんだよ」


まさか自分が女性モノのパンツを履く時が来るとは健斗は思ってもみなかった。


パンツを顔にかぶった、なんとか仮面って映画は見たことあったけど・・・。


「履かなきゃいけないんですか?それ?」


「だから郷に入っては・・・・」

「あのね、とにかくここで生活するなら僕の言うこと聞いてくれないと・・・」

「百歩譲って家の中では、無理に履かなくてもいいけど、これから外にだって

出る機会が増えるかもしれないだろ?・・・パンツはちゃんと履いてもらわないと・・・」

「パンがうつむいた時、尻が丸見えだと目のやり場に困るだろ、って言うか他の人が、特に男が見たらどうすんだよ」


「それこそいいじゃないですか、私が裸でいるのにはちゃんと理由があるんですよ」

「男性が私の豊満な肉体を見て興奮するように、それが裸でいる立派な理由です

からね・・・」

「曽我部っちは私の、このナイスバディーをアピールさせたくないんですか?」


「あたりまえだろ、何言ってんの・・・それじゃまるで痴女じゃないかよ」


「そう思うなら私を抱いてみません?」


「ほんとに、しつこいよな」


「私って崖っぷちにいるんですよ」


「なに?その崖っぷちって?」


「好きになった人は女性アレルギーでセックスができないし・・・私はセックスしないと干からびちゃう・・・私はどうしたらいいんでしょう?」


「そりゃパンの希望をかなえてやりたいって思ってるよ」


「一度セックスやっちゃえば、当たり前になりますよ」


「もしできたとして一度でもパンとしたら俺は自分の理性を止められなくなりそう

だよ」


「あら、止められなくしてみません?」


そう言いながらパンは、ずりずり健斗に迫って行こうとした。


「来るな、来るな・・・近寄るなって・・・そこにいろってば・・・」


「服もパンツも履きますから、いいかげんセックスしましょうよ・・・」


「ちょっと待て、カップ麺作るから・・・」


健斗は女性アレルギーということもあって今まで一度も女性経験はないわけ

だけど、いつまでも、そんなことでいいのかって自分でも疑問には思っていた。

パンが現れて、とくにそういう思いが強くなった。


健斗は、ずっとパンと部屋に閉じこもっていたので大学とバイトが休みの時

くらいは外に出たいって思ったが、でもそのたびパンひとりアパートに置いて

おくのは可哀想だし心配だった。


だから、結局外には出ないで漫画を読んだりテレビを見たり、パンは音楽

に興味を持ったので近所迷惑にならないようヘッドフォンをさせてユーチューブ

で音楽を聴かせたりしていた。

あとカップ麺のおかげでパンのムラムラを、ある程度抑えることができていた。


今時の曲を聴いてノリノリになってるパンを見て、その感覚が健斗には理解

できなくてパンが異世界の女だとは思えなかった。


つづく。


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