第55話暗黒マーケット
ほぉ、扉先がやいのやいの賑わう市場だったか。
行き交う連中はどれも、異形の魔の者じゃないか。
「裏事情の暗黒マーケットになります」
「私達、異形の魔の者にとっての憩いの場なんです」
衣食住を普通の連中と合わせ難いんだろうな。
同系統の連中が集い、住みやすい環境を自分達で作り上げたのなら問題ないな。
関心関心、右腕も見習うべきだ。
「表での主な役割は、異形らしい雰囲気で恐怖を演出し、精神攻撃で廃人化させるものになってます」
武力を使わずとも、無力可能な方法とはな。
まぁ、精霊王の加護持ちの私には、何も通用しなかったがな。
暗黒マーケットの案内が始まったが、代物自体が目新しくて非常に興味がそそられるぞ。
「この青い球体はなんだ? 妙に冷たいぞ」
「霊魂を内蔵した霊魂クーラーです。ゴーレムさん達との共同制作品です」
「灼熱期の寝苦しい夜に、快適な冷気をもたらしてくれます」
「ほぅ。灼熱期ってなんだ?」
人間界でいう春夏秋冬が、魔王城付近に存在するそうだな。
春の大繁殖期は、魔の者が沢山産まれるベビーラッシュが風物詩。
夏の灼熱期は、外気が灼熱に包まれ、地面からマグマが噴出したり、地獄の如く暑くなる。
秋の獰猛期は、灼熱期の鬱憤を晴らすべく、魔の者が欲のままに暴れまくる。
冬の氷河期は、外が凍てつく氷景色に変わり、屋内に引き籠りぬくぬくと大繁殖期の下準備に勤しむ。
中々クセのある四季だが、私には何ら影響はないな。
折角の機会だ、興味半分で霊魂クーラーを買うか。
「幾らだ、魔獣の幽霊よ」
「へっへっへ……5千エーンになりやす」
「随分と安いな」
「お客様に喜んで貰えれば本望ですんで……」
「そうか、繫盛を願ってるぞ」
「ありがとうごぜーやす。代金は丁度ですね、毎度ありー」
実際に持つと、ひんやりと既に冷たいな。
買って得したな。
「ワシも一つ下さいな♪」
「へい、丁度ですね。毎度ありー」
右腕の奴、いつの間に戻ってきやがた。
ホクホク顔で霊魂クーラーを抱えやがって。
無邪気にはしゃぐ子供みたいでムカつく。
「皆さーん、こちらへどうぞー」
「ほら勇者様! 行きましょう!」
「うっさいわ」
何やらいい香りが漂ってるな。
食いもんがあるとは意外だ。
「くんくん……腹の減る匂いだな」
「悲鳴饅頭の匂いですね。一口食べると数分間悲鳴が止まらなくなる、異形の魔の者達のソウルフードです」
「お二人の分を買ったのでどうぞ!」
骨女が気を利かせてくれたか。
見た目は青黒い変哲もない饅頭だな。
香りがとにかく素晴らしいな。
「おぅ、気が利くな」
「ありがと! いただきます! ふぁむ……まむまむ……ヒィェエエエエエエエエエ!」
「耳元で悲鳴を上げんな!」
「ヒギャっぷ?!」
クソ悲鳴で耳が腐る!
強制的に口を閉じて、金縛りにしたやったわ。
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